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SIMロック解除までの期間を短縮、週末限定割引や「下取りでの実質0円」廃止――総務省が新たなガイドラインを策定

 総務省は、「モバイルサービスの提供条件・端末に関するガイドライン」を発表した。SIMロック解除に関するものと、スマートフォンの端末代金割引に関するものと2つの柱で構成される。内容によって適用時期は異なるが、早いものでは、端末割引に関する新たなガイドラインがこの2月から反映されることになりそうだ。

これまでの流れ

 昨秋、総務省で開催された有識者会合では、最終的にスマートフォンの料金値下げを目指すことをうたっていた。そのためには、大手キャリアと、格安スマホなどと呼ばれるMVNOとの間で競争を促進するよう政策を整備する方針となった。

 その目標のため、具体的な取り組みとなるのが「SIMロック解除をよりスムーズにする」ことや、過剰なキャッシュバックはもちろん、実質0円での販売を廃止するなど「端末販売価格を適正にする」ことだ。10日に発表された新たなガイドラインは、まさにこの部分についてのもの。

SIMロック解除、半年→100日程度に

 SIMロックがあることで、キャリアを乗り換える際のコストが上がる、あるいは新規契約を獲得するためのキャッシュバック競争の原因のひとつになる――ガイドラインではSIMロックのデメリットを指摘し、これまでよりスムーズにロックを解除できる環境を整備する方向を打ち出した。

 これまでもSIMロック解除自体は可能になっていたが、購入から半年程度経たなければその手続きができない、といったケースが一般的。しかし2017年8月からは、割賦払いで購入する端末については、半年→100日程度と、2カ月ほど短縮する。そして一括払いについては、2017年12月以降、その支払いが確認できた段階ですぐSIMロック解除できるようになる。

 またauのみ、「auネットワークを使うMVNOでもSIMロック解除が必要」となっていたが、これは2017年8月1日以降に発売される端末では、そうしたSIMロックを排除することになった。

 対象となるのは、折りたたみ型の携帯電話(フィーチャーフォン)、スマートフォン、タブレット、モバイルルーター、USBモデムといった端末。一方で、一部事業者の通信方式や周波数だけに対応する機種は対象外。

SIMロック解除、大手キャリアは……

 端末代を一括で支払う場合へのSIMロック解除には、システム開発の規模が非常に大きくなり、提供時期がずれ込む可能性がある、とKDDIは声を上げている。これに総務省は、やむを得ない場合は12月から3カ月以内であれば、とのただし書きを付けている。auでは、端末一括払いでのスピーディなSIMロック解除は2018年2月ごろに提供が開始される可能性がある。

 ちなみにソフトバンクは「端末一括払いでのSIMロック解除は不要では?」と意見を出しているが、総務省は、システム改修が必要というだけではSIMロック解除に応じないのは不適当、と一蹴している。

スマホ割引、「下取りで実質0円」もNGに

 スマートフォンと通信回線がまとめて提供され、さまざまな割引が用意されることは、ユーザーにとって端末価格や通信料を実際、いくら支払ったのかわかりづらい。さらに資本力のある大手キャリアによる高額な割引は、MVNOの新規参入や成長を阻害する……こうした問題点から、これまでも多額のキャッシュバックを規制する取り組みが推進されていたが、今回のガイドラインはさらに一歩踏み込んで、「実質0円」を退治する姿勢を示している。

 新たに2017年2月から適用されるのは、通信回線の契約によって一時的(1カ月未満)に増える奨励金への規制だ。これにより、たとえば週末だけ割引が増えて実質0円になってしまうケースなどを廃止に追い込むことが期待されている。

 また大手キャリアで今や当たり前となった、iPhoneなど新機種登場後の「旧機種の下取り」にもメスが入る。2017年6月以降に発売される機種については、「2年前の同型機種の下取り価格以上」という値付けにすることが求められる。つまり、「もし2017年秋にiPhoneの新モデルが登場する場合、2015年の『iPhone 6s』『iPhone 6s Plus』の下取り価格よりも、高い価格へ値付けする」ことになる。過去、下取り価格と相殺して、ユーザーは実質0円で新機種を手にすることも可能だったが、そうした事例が今後、禁止される。

 なお、在庫が余っている機種や、5Gなど今後導入される新しい通信方式への移行、はたまた卸売価格や小売価格が3万円以下の廉価端末は、実質0円までとはいかずとも、ある程度の割引が可能とされている。

割引抑制で競争が減る?

 端末割引が縮小することで、大手キャリア間でのユーザーの乗り換えが減少した、という話は2016年を通じて、キャリア幹部からたびたび明らかにされてきた。MNPを条件とする割引、学割を規制すると、競争が抑制されるという意見は、最大手のNTTドコモからは提出されておらず、KDDIやソフトバンクが緩和を求めている。これに総務省は、ユーザー間の不公平を是正するというもともとの趣旨のために必要な規制との見解を示す。

 NTTドコモは、MNPでの割引に、いわゆる「解約新規」を含むよう求めた。MNPの正規の手続きではないが、店頭でそれまで使っていたA社の回線を解約して、その場でB社の回線に加入する……といった手続きを指すもので、新ガイドラインでは解約新規の割引もMNPと同じ扱いにすることになった。

MVNOからは今後の監視を求める声

 ガイドラインの策定にあたり、広く一般から意見を募集した結果、携帯電話業界各社から、今後に向けた懸念、あるいはガイドラインへの反論も提出されている。

 MVNOサービス「mineo」(マイネオ)を展開するケイ・オプティコムは、「一部の大手キャリアの子会社、サブブランドが、MVNOではなしえない料金・サービスを提供している」と指摘。MVNO市場も大手キャリアに占められる可能性があり、課題が明らかになれば法整備などをすみやかに行うよう求めている。