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指紋や目でパスワード代わりにログインできる「FIDO」がNFCなどに対応

日本に新組織も設立、さらに拡充狙う

左からヤフー決済金融カンパニーIDソリューション本部企画部部長の菅原進也氏、NTTドコモプロダクト部プロダクトイノベーション担当課長で日本WGも担当する富山由希子氏、NTTドコモプロダクト部プロダクトイノベーション担当部長の森山光一氏、FIDOアライアンスエグゼクティブディレクターのブレット・マクドウェル氏、FIDOアライアンスマーケティング担当シニアディレクターのアンドリュー・シキアー氏

 指紋や目(虹彩)でWebサービスへログインできるなど、パスワード要らずの仕組みを実現する「FIDO(ファイド)」の新たなバージョン、「FIDO 1.1」が発表された。あわせて新たに取り込まれる仕様も発表されている。

 FIDO(Fast IDentity Online)は、指紋や虹彩などをパスワード代わりに使える認証のための仕様。肝となるのは本人確認に使う情報(現在のところ指紋や虹彩など)をスマートフォンなど端末内に保存しておき、通販サイトやWebサービスのログインなどで、サーバー側にはそれらの情報をそのまま送らないということ。

 サーバーが攻撃されると、WebサービスのなかにはIDやパスワードが盗まれることもあるが、そうしたリスクがなくなる。業界団体であるFIDOアライアンスにはグーグルやクアルコム、マイクロソフト、VISAなどのほか、日本からはNTTドコモが業界団体のFIDOアライアンスのボードメンバー(主要会員)に名を連ねる。

FIDO 1.1でNFCに対応

 FIDO 1.1では、認証に利用できるインターフェイスとして、新たにNFCやBluetooth Low Energyなどをサポート。たとえばFIDO対応かつNFC対応のスマートフォンを、パソコンに繋いだNFCリーダーにかざして認証する、といった使い方や、NFC対応のUSBドングル型FIDOデバイスを、指紋認証非対応のパソコンやスマートフォンにかざして、パスワード代わりにする、といった使い方が実現できると見られる。

 また、インターネット関連の標準技術を策定する団体、W3Cでは、FIDOアライアンスが提案した技術仕様をベースに、「W3C Web認証仕様」の検討が進められている。最新のドラフト版にも収録され、一般のサイトでも導入に向けたレビューが可能な状態。このW3C Web認証仕様をサポートすることが今回明らかにされた。たとえばChromeやFirefox、Microsoft Edgeといった主要ブラウザが対応するとのことで、Webサイトでのログイン時のパスワード代わりに指紋認証などが利用できるようになる。2017年にはそしてプロトコル技術の「CTAP(Client-to-Authenticator Protocol)」もリリースされる予定で、ブラウザやWebサイトから直接、認証情報を格納するUSBキーやNFC/Bluetooth対応機器へ認証を要求できるようになる。

 クレジットでショッピングする際の決済ネットワークの標準仕様を策定する団体「EMVco」の要件「コンシューマデバイスベリフィケーションメソッド(CDCVM1)」に、FIDOが対応することになった。店舗やオンラインでショッピングする際、指紋や自撮り認証することで、ユーザー本人がその場に確かにいることを証明できる。

iOSはアプリ側で対応

 FIDOの認証を得た製品はUSBドングルや、スマートフォンなどさまざまな種類があるが、アップルのiPhone、iPadは含まれていない。

 しかしそれでも指紋認証機能のtouch IDの仕様が公開されていることから、FIDOの仕組みに準拠したSDKを用いてアプリを開発することで、touchIDを使ったFIDO対応アプリやサービスを開発することはできる。

FIDOの“日本支部”も

 FIDOの仕組みをさらに広げるため、日本支部とも言えるワーキンググループが設立されたことも発表された。座長にはNTTドコモプロダクト部プロダクトイノベーション担当部長 森山 光一氏が就任する。

 森山氏は「ユーザーにとって、たくさんのパスワードを覚えるのが難しい。(覚えやすく1つのパスワードを使い続ければ)どこかで漏洩して不正アクセスに繋がってしまう。FIDOアライアンスは秘密鍵と公開鍵が分かれており、秘密鍵や生体情報をサービス提供者と共有する必要がない」と、パスワードを巡る現状に警鐘を鳴らしつつ、FIDOのメリットをアピール。NTTドコモは自社のWebサービスのログインでFIDOをサポートしており、日本は韓国と並んでFIDOが先行して広がっている地域と説明する。

 今回、中国、インドに続いてワーキンググループが設立されることになり、FIDOへ関心のある企業に向けて、日本語での情報発信ができるようになる。