インタビュー

スマートフォンアプリ開発のツボ

スマートフォンアプリ開発のツボ

わずか3人で航空業界をリードするJALのスマホ戦略

 2010年に倒産という憂き目に遭いながらも、見事に再生を果たしたJAL(日本航空)。その裏には強力なリーダーシップだけでなく、社員全員が徹底した改革意識をもち、一丸となって企業再生に取り組んできた並々ならぬ努力があったに違いない。

 特にここ数年は、多数のスマートフォンアプリを継続的にリリースするなど、モバイル分野における動きも活発だ。FeliCaに加えてNFCにも対応した電子チケットサービスを提供するというアグレッシブなビジネスを展開し、以前のJALとは少し異なる企業イメージが定着しつつあるように見える。

 他社に先駆ける形で次々と新たな施策を打ち出している理由と、そのバイタリティはどこにあるのか、同社Web販売部の清水俊弥氏と藤山健治氏にお話を伺った。

アプリは「間口」、Webサイトは「お店」

JAL Web販売部 Web・コールセンター企画グループ マネジャー 清水俊弥氏

――アプリやWebサイトなど、モバイルに限っただけでも数多くのサービスを展開されています。これらのサービスについてどのような体制で取り組まれているのですか。

清水氏
 JALの航空事業における旅客収入の3本柱として国内販売、国際販売、そしてWeb販売があります。Web販売部は2010年の部門別採算性の導入時に組織され、私が総括するモバイルチームはWebの中でもモバイルビジネスに特化した企画・運営を行っています。

 それまでは藤山がたった1人でモバイル案件を担当していたのですが、組織変更で私と藤山ともう1人の女性の3人でチームとして動くことになりました。ちょうどスマートフォンのシェアが伸びるタイミングと、3人編成になるタイミングが合って、スマートフォンに関して新しいことをやっていくという形ができあがってきました。

――「JALタッチ&ゴー」アプリで、FeliCaだけでなくNFCにも対応するなど、スマートフォンを重視した新規性のあるサービス展開をされているように感じます。

清水氏
 逆にJALはこういう新しいものには疎いと見られがちで、先進的なものとか革新的なものというのは、他社に先行されているようなイメージがあったと思っています。とはいえ、私たちもそのイメージを変えるチャンスというのがこのモバイル、スマートフォンにあると捉えているんです。JALのコンセプトである「伝統・革新・日本のこころ」のうち、「革新」の部分をモバイルやスマートフォンで攻められるのではないかと考えました。

 他社と同じことをするのではなく、たとえばFeliCaとNFC Type A/Bにも対応したサービスも提供するといったところで、新しいことに挑戦しているように受け止められているのだとしたら、うれしいことだと思います。

――スマートフォン向けにはどういった形でサービス展開を?

清水氏
 3月28日にスマートフォン向けサイトをリニューアルしました。私たちとしては、これらのWebサイトを「お店」であると考えています。1日に数万人のお客様が来ていただける24時間営業のお店です。このWebサイトを運営しながら、スマートフォンアプリもすでに11個リリースしています。

 お店であるWebサービスに対して、スマートフォンアプリはその「間口」となります。お客様には、日常・予約・サポート・エンタメなど、いろいろなジャンルのアプリの間口から入っていただいて、最終的に売り場であるWebサイトに来ていただこうということですね。アプリはスマートフォンだけでなくタブレットにも対応していますし、AndroidやiOS、Kindle Fire、一部Windows 8タブレットにも提供しています。

――スマートフォンではどのあたりを重視してサービス設計しているのでしょうか。

清水氏
 端末のプラットフォームによってお客様の使われ方が違います。ざっくりいうと、iOSでは売上の4割がアプリから、残りの6割がWebサイトからです。一方のAndroidは、アプリでの売上は2割もないんですね。お客様によって使い分けされていることがよくわかっているんですが、私たちとしては間口や売り場となるお店をさまざまなプラットフォーム向けに設ける必要があると思っています。

 そういう中で何をメインとしていくかといえば、やはりWebサイトになるでしょう。ただ、JALとしてWebサイトだけを重視することはなく、あくまでもアプリなどを間口として広げながら、最終的に売り場であるWebサイトに誘導していくという形を変えることはありません。

――スマートフォンとそれ以外のプラットフォームとで、サービスの提供の仕方に違いはありますか。

清水氏
 PC向け、フィーチャーフォン向け、スマートフォン向けのだいたい3パターンになるわけですが、もともとPC向けのサービスがあって、次にフィーチャーフォン向けを提供し始めたときは、あくまでもそれはPC向けサービスを補完するもの、もしくは同じ機能を提供するものという位置付けでした。でも、スマートフォン向けのWebサイトを作るようになってからちょっと流れが変わってきました。PCとスマートフォンとで、お客様の利用シーンやニーズは違うんじゃないかと感じているんです。

 たとえば、ボタン一発でお客様が必要とされる情報が全て表示される「QuiCナビ」というスマートフォン向けWebサイトがあります。フライトインフォメーションを見られるだけでなく、たとえば東京から札幌に行くお客様であれば、新千歳空港の現在の気温がわかり、さらにライブカメラの映像で実際の現地の様子を見ていただくことができます。また、羽田空港に4カ所ある保安検査場のうちどこが実際の搭乗ゲートから一番近いのか事前にわかったりもします。

 最寄りだけでなく、他の保安検査場の様子もすべてライブカメラで確認できて、搭乗ゲートから近い順に映像を並べて表示することも可能です。本来は人の少ない検査場をお知らせしたいのですが、荷物をたくさんお持ちのお客様が並んでいることもあれば、少ない方もいらっしゃいますので、一概にどこが空いているからどこが早いとは判断しにくくて、今は対応していません。しかし、こういうのは、お客様が常に持ち歩いているスマートフォンならではの情報配信の仕方じゃないかと思っています。PCやスマートフォンのそれぞれの使われ方を考慮してサービスの見せ方を変えているわけです。

――ということは、PC向けには提供されていないスマートフォンのサービスも結構あるのでしょうか?

清水氏
 ありますね。航空券を予約購入していただくと、お客様の出発までの時間をあと何日何時間何分という形でカウントダウンしてくれる「JAL Countdown」というアプリもこだわって作っています。出発前日になると搭乗ゲートの情報が通知されて、空港にある電光掲示板などと同じタイミングでアプリにもフライトの遅延、遅延の理由、新たな出発時刻などを表示します。

 さらに、出発1時間前になると「検査場を通過してください」といったメッセージも出るんです。今まで空港に行ってから調べたり、もう時間がないと思って走ってゲートに行ってみたら「30分遅れます」なんてパターンもあったかもしれませんが、スマートフォンという使い慣れて手になじんだ情報端末がありますので、そこに対して情報を出していくのは重要だと思っています。

――チケットの種類ごとの利用割合を教えていただくことはできますか。

清水氏
 チケットは非接触ICか、QRコードかに大きく分かれて、ICの中でもモバイル端末とカードに分かれます。また、QRコードであれば、通常の紙のチケットと、モバイル端末のQRコード、iOSのPassbookなどに分類されます。これらの利用頻度は路線によって違っていまして、代表的なところでいえば、東京・大阪間のようなビジネス路線では過半数のお客様が非接触ICを利用されています。頻繁に利用されるお客様ほどカードやモバイル端末を使われますね。その方がたくさん乗られているお客様にとっては便利なんだと思います。

 NFCの利用者については、細かい数字は言えませんが、想定どおり使われている、という状況です。国内ではFeliCaへの対応が進んでおり、NFC対応の端末はたいていFeliCaがサポートされていますから、普通はFeliCaだと思うんです。それでも、我々のサービスはNFCのみ対応している端末でもご利用いただけますので、auのGALAXY S II WiMAXやタブレット端末など、実際に使ってらっしゃるお客様もいます。

日本を代表して世界のNFC化を推進したい

――チェックイン時や搭乗時などにQRコードを使うことが多くなってきています。

清水氏
 昔はマグストライプという磁気テープのついたチケットを使っていました。国内線はそのあたりで磁気テープ以外のものを採用することもできたりして、まだ独自性を出しやすいんですけども、国際線となると航空会社が互いに場所を共有して使うことが多いので、共通仕様が求められます。ですので、これらの仕様はIATA(国際航空運送協会)という国際的な標準化団体が取り決めているんです。

 IATAによって、にマグストライプから2次元バーコードへの移行が始まりまして、現在世界的にはQRコードやバーコードがベーシックな仕様となっていますね。日本国内の場合はFeliCaをはじめとする非接触ICのチケットを世界に先駆けて、ほぼ10年くらい先を行っているような状態になっていますが。

JAL Web販売部 Web・コールセンター企画グループ アシスタントマネジャー 藤山健治氏

――航空業界全体としては、NFCへの対応についてどのような状況にあるのでしょうか。

藤山氏
 つい先頃、ジュネーブで開催されたFTE(Future Travel Experience)という空港見本市みたいなイベントに参加してきました。欧米の空港やその他の公共交通機関、金融機関でもNFCの導入に関心が高くて、各国で実証実験などが始まっています。

 日本ではすでに2005年頃からドコモさんのおサイフケータイサービスなどが始まっていたこともあって、我々も事例紹介として海外へ呼ばれることが多いんです。そこでの展示を見ると、やっぱり日本の方が進んで見えるんですね。海外はまだ実際の導入事例がほとんどないので、5年以上やっている我々の目からそのシステムを見ると、実運用時に問題になりそうな箇所とか、運用に耐えられないと思われる部分とか、いろいろ見えてくるところがあります。

 日本では電車やコンビニ、自動販売機でも非接触ICを使えるのが常識だと思っていますけども、そうではない未経験の国の方々からすると問題点が見えにくいんでしょう。そういった意味では、日本はテクノロジーだけじゃなくて、暮らしている人たちのマインドも含めて、一歩も二歩も先に進んでしまっていると思います。進みすぎて孤立する心配も持ち合わせていないといけないとは思いますが。

 我々が海外に積極的に出てお話ししている理由は、今まで日本で培ってきた経験を、失敗例も含めて世界と共有したいという気持ちがあるからです。いざ世界標準が決まったとなれば日本もその世界標準に乗らなければいけなくなるので、その瞬間にまた2~3歩くらい逆行することがないようにしたいんです。JALというよりも、日本を代表して世界を日本水準に引き上げていきたい、そういう思いがありますね。

清水氏
 私は、先日モナコで開催されたWIMAという、NFC利用を促進する団体が開催しているカンファレンスに参加してきました。将来NFCを使いたいという人たちを前に、私たちが導入事例として空港搭乗ゲートの改札の様子を映像でお見せしたら、最初の質問が「どうやってお客様に搭乗方法を教えているんだ」というものでした。もっとも、整然と並んで端末やカードなどをかざして次々と自然に改札を通過していくというのは、私たちというより、JRさんの功績が一番大きいのではないかと思っています(笑)。

 さらに、国際線の航空券となると1区間あたり10万円単位で、日本ではそれをスマートフォンなどで購入していますが、海外では「そんな不用心なことを日本人はよくできるな」と言われることもあります。ただ、これも過去からずっと日本のサービスプロバイダーが築いてきたモバイル決済の歴史が日本にはあって、テクノロジーの進化と日本のお客様の体験によって成り立ってきたものではないかと思います。

 私たちが海外に出て話をしているわけは、そうすることによって私たちの取り組みをガラパゴス化させたくない、できれば私たちのソリューションや考え方を標準化したいという思いがあるから、というのも1つです。それに、世界が10年後に標準化させようとしているのなら、私たちがノウハウを伝えることによってそれが5年に縮まるかもしれません。そうすればお互いにメリットも生まれると思うんです。

 とはいえ、海外が急速に追いついてくるであろうという感触は持っています。日本が10年かかったものに、彼らが10年かかることはないでしょう。アジア、特に韓国や香港、シンガポールは、すごい速さで日本に追いついてくると思いますね。

――JALとしてはそういった独自のソリューションを海外に売っていきたいのでしょうか。それとも、同じような仕様で標準化されれば導入コストが低く抑えられるという点を期待しているのでしょうか。

清水氏
 両方ともあり得ると思っています。いずれにしても設備投資が絡むこともあって業界全体で一気に推し進めるのは難しいものです。ビジネスとしてソリューションなどを外に売っていく方向と、アライアンスの中で価値を高めるという2つのやり方があると思っていますので、今は両方のアプローチで検討を進めています。

――スマートフォンなど、モバイルに対応することによるメリットはどういったところにあるのでしょう。

清水氏
 メリットは2つあります。航空路線はビジネス利用される方が多く、お客様のITリテラシーが極めて高いんですね。一般へのスマートフォン普及率が4割と言われる中、弊社の国内線航空券販売におけるモバイルからの販売額端末のうちスマートフォンからの航空券の購入はもう7割を超えているんです。すなわち、航空路線ではスマートフォンをお持ちのお客様が多いということです。スマートフォンに向けて私たちの商材を投入すれば、お客様の求めているものが求めているところにある、という状態にできます。

 もう1つは、日本ではいつもみなさんが鉄道などで非接触ICを使った体験をされていることになりますので、空港でもスマートフォンに対応することで、私たちが何もしなくても普通にかざして飛行機に乗っていただけるだろうということです。空港にある扉付きのゲートは、駅にあるものとほぼ同じ仕様で、かざすところも同様に青い色にしています。これは、まさに駅での日々の利用の成果をそこで試していただけるようにするためなんです。結果的に空港のスタッフにかけるコストにも影響してきますし、サービスという面もありつつ、トータルでの効率化というメリットもあると思っています。

――マクドナルドは、昼時のお客様をさばくスピードを向上させるのに非接触ICを採用しているとも言っていました。それと近い発想なんでしょうか。

清水氏
 短時間で改札を通過できるお客様が増えるほど、空港のマネージメントにかかる経費を削減できるのは確かですね。その分飛行機の搭乗にかかる時間も短縮され、飛行機の定時出発にも寄与します。定時到着率3年連続世界一と認定していただいているのも、こういった形での貢献もあるからだと考えています。

 ちなみに、500人以上が乗れるボーイング777型機であっても、改札を2台使った場合は、10分以内に90%以上のお客様が搭乗を完了できる状況になっています。今は、1人がタッチして改札機の終わりまで行くのに約1.8秒かかる、という想定のレギュレーションで運用していますね。

先を読み、可能な限り迅速にリリース

――スマートフォン向けのアプリやサービスを立ち上げる上で苦労されているのはどんなことですか。

藤山氏
 世の中の先を読むところ、でしょうか。我々はデベロッパーではないので、企画やソリューションを考えて、開発可能なベンダーさんを探します。でも、飛行機や空港と絡むものはどうしても開発に時間がかかります。開発コストも単純なアプリを作るよりゼロが1~2個増えるので、実現したときの効果や採算性なども証明しないといけないんです。

 なので、世に出すまでに結構時間がかかるんです。旬だと思って社内で検討してすごい駆け足でやろうとしても、他の企業が出すよりはきっと時間がかかる。軽く1年は過ぎてしまうので、じゃあその時にお客様に使ってもらえるものって何だろう、その時に流行しているものって何だろう、と。さらには、その時の端末スペックはどうなっているのか、その時にはどんな機能が備わっているのか、というのを、ある程度世の中の流れを見て推測することが必要です。

 お客様からのニーズと、キャリアさんやメーカーさんの向かっている方向を見極めて、極力無駄な投資はしない。アプリやサービスをリリースしたときに、お客様に「今さら?」と思われるようなものは出しちゃいけないですし、「すごい!」と言ってもらえるものを今から頑張って仕込むのが大変ですね。

清水氏
 私たちモバイルチームは、たとえば各地で開催されている展示会を見に行って情報を吸収して、それをヒントにアプリやサービスの構想を錬っているんです。ベンダーさんからの持ち込み企画というのはまずありません。私たちが作った企画を実現できる尖ったベンダーさんを見つけて、そこに開発していただくという形を取っているので、1個1個のアプリやサービスにきちんとしたストーリーをもっているのも特徴です。

 たとえば、Google Nowへの対応については、2012年末にGoogleさんからお話があり、サービスインは2月ですと言われました。言われたタイミングが年末年始なので、そこから1月中旬くらいまでJALとしては何もできないですし、普通はそんな短期間でシステム開発はできないのですが、おそらく他社もリリースすることを考えているでしょうから、JALとしても絶対出さないといけない。そんな開発リソースは確保できないと社内からも猛反対されたんですが、「今やる」理由を伝え、開発に着手しました。

 常日頃からどれくらいアンテナを張って、何がはやりそうかを見定める。それをJALというブランドとかけ合わせて価値を出す、ということをやるのが一番難しいところでもありますが、面白いところでもあると思いますね。

――スマートフォンに対しても航空券の販売をメインとしているわけですが、そこにユーザーをたどり着かせるために、アプリ・サービス開発などにおいてどういったところをポイントとして考えていますか。

清水氏
 個人的に自信を持って言えるのは、JALのフライトを一度利用していただければ、良いと思っていただけるだろう、ということです。空港もそうですし、機内もそうです。格安運賃で提供している会社ではありませんので、その分さまざまな面で質の高いサービスを提供しなければなりません。

 したがって、私たちがモバイルでこだわっているのは、お客様の時間の質を上げるということです。多彩なアプリを提供することで、フライト前の準備から空港でのチェックイン、ゲートの通過、飛行機に乗って目的地に着き、旅行を楽しんで帰ってくる、というように、ぐるっと1周してきたとき、JALで旅行してみるとよくわからないけどすごく充実していた、すごく時間を有効に使えた、というのを体験していただけるようにしたいですね。

 じゃあ、Webサイトのお店にはどうやって来ていただくのか、というところですが、もちろんアフィリエイトなどの広告という形でJALの名前を各所に露出するというのも戦略の1つとしてありますけれども、アプリのリリースの仕方もあるんです。たとえばARなどの話題の技術を旬の時期に採用すると、メディアが取り上げてくれるんじゃないかと(笑)。

 こういう新しいことに疎いと思われているJALにとっては、“スマホ”と“AR”の文字の横に“JAL”というワードがくるだけでも価値があるんですよ(笑)。旬なものを旬な時に、JALという会社から出していくというポイントを、この2年間すごく意識していますね。

国内線
国際線
先得
タッチ&ゴー
Schedule
AiRportナビ
Countdown
ライブ壁紙
787
JAL SHIMA
沖縄

機内での携帯使用ガイドライン

――ところで、スマートフォンを含めた電子機器類の機内での扱い方について、公式見解を教えていただけますか。

藤山氏
 まず、飛行機の出入り口のドアが開いている間は、機内でも電話を使っていただいて大丈夫です。ドアが閉まった時点で、電子機器は全て電源オフにしてください。飛行機が離陸して一定の高度まで上がり、ベルト装着サインが消えると、機内モードになっている携帯電話や、一部を除きもともと通信電波の発していない電子機器は電源を入れてもOKです。

 次は到着するとき、これもベルト装着サインが点灯したら、全ての電子機器の電源をオフにする必要があります。着陸後の地上走行中は航空会社の国の法律に準ずることになりますので、JALの場合は日本の法律に則って、電源はオフとしてください。飛行機が搭乗口に着いてドアが開いたら、電話はOK、というのが公式見解です。JALというよりも、日本の航空会社を利用する場合の共通見解ということになりますね。

――機内でWi-Fiを使える場合もあります。たとえばLINEなどではデータ通信で音声通話もできますが、そのあたりの利用心得みたいなものはどのようにお考えですか。

藤山氏
 基本的に機内での通話は禁止していません。機内のネットワーク環境で通話にどこまで耐えられるかというのはもちろんあるでしょうが、言ってしまえば、国際線の座席の横に付いているコントローラーには電話機能が付いていますから。以前からJALは機内の全ての席で電話を使えていたので、問われるとするなら、話し方のマナーということになるのではないでしょうか。

 備え付けの電話利用に関してこれまで大きなクレームになったことはありません。データ通信で音声通話できるようになったからスマートフォンでの通話は禁止、ということにはならないですね。

清水氏
 JALでも国際線では機内でのWi-Fi接続サービスを提供し始めましたし、今後もWi-Fiを使える航空会社は増えていくんじゃないでしょうか。地下鉄もつながるようになってきて、逆に、少なくとも国内では空の上が唯一ネットにつながりにくい場所、という見方もできます。つながらないのがいいというお客様と、つながるようにしてくれてありがとうと言っていただけるお客様と、両方いらっしゃいますが(笑)。

――最後にJALのスマートフォンアプリについて、今後の予定などありましたら教えていただけますか。

藤山氏
 空港に着いたら、その空港内の店舗などで使える割引きクーポンをもらえたり、お知らせを表示するというサービスを始めます。他社でも、お店のそばにいたらクーポンをもらえるというサービスを提供していると思うんですが、それに近い仕組みですね。出発までどのお店でどう過ごすのか、「JAL Countdown」アプリで残り時間をチェックしながらご判断いただく、という使い方もいいですよ。

――本日はありがとうございました。

日沼諭史