UPLINQ 2014
ARプラットフォーム「Vuforia」がメガネ型デバイスに対応
(2014/9/25 11:26)
クアルコムが今回のUPLINQで最も強くアピールしていたのが、AR(拡張現実)アプリ開発プラットフォームの「Vuforia」だ。スマートフォンのカメラに映った映像を解析し、そこにAR空間を作り出すビジョンベースのARプラットフォームで、2010年の同イベントでCEO(当時)のPaul Jacobs氏が開発を表明していた。
それから4年の月日が流れ、チップのパフォーマンス向上やカメラ技術の進歩、ウェアラブルデバイスの登場などで状況が変化し、よりリアリティを持って人々に受け入れられる環境が整ったということだろう。現CEOのSteve Mollenkopf氏の基調講演でメガネ型デバイス向けのSDK「Vuforia for Digital Eyewear」が発表されたこともあってか、UPLINQのデモゾーンには、3種類のメガネ型ウェアラブルデバイスが展示され、体験しようとする来場者が列をなしていた。
「Gear VR」はカバーを外せばARも可能?
一つ目は、サムスンがIFAで発表した「Gear VR」。GALAXY Note 4を装着することでバーチャル体験が行える同デバイスは、本来前面には端末を隠すカバーを装着して利用するが、ビジョンベースのVuforiaを応用するとあって、端末のカメラを生かすためにカバーを外した状態でデモを体験できるようになっていた。Gear VRを装着して絵本を見ると、ページに合った内容の3Dオブジェクトが目の前に現れ、動き出す。IFAの発表会で実施されたデモは、ゲームパッドを使って3D空間内のキャラクターを操作するといった内容だったが、ARという要素が加わると、また新たな驚きがある。Gear VRにはカメラ部を塞がないようなカバーも必要かもしれない。
「MOVERIO BT-200」の使い道はアプリ次第
二つ目は、エプソンのメガネ型シースルーモバイルビューアー「MOVERIO BT-200」だ。BT-200では、Androidベースのアプリを動作させられるようになっており、今回の展示では故障した機械の修理手順をグラス上に表示するデモが行われていた。カメラの画素数が30万画素ということで、ビジョンベースのVuforiaでは精度がイマイチな側面もあるようだが、ARの実用的な応用例として期待を集めていた。
Snapdragon 805搭載の「ODG R-7」
三つ目は、Osterhount Design Group(ODG)の業務用途向けのメガネ型のウェアラブルデバイス「R-6」「R-7」。R-6は現行モデルで、R-7はSnapdragon 805を搭載した次期モデルとなる。業務用途とあって当初は一般向けの販売は行われず、価格も5000ドル前後と高い。今回の展示では、正しい配線のつなぎ方をグラス上に表示し、「NEXT」と表示されたボタンの位置に手をかざすことで次のステップに進む、といった操作体系をデモしていた。もう一つのデモでは、等高線が描かれた地形図を眺めると、立体的な山が現れ、背後を飛行機が飛び交うといった様子も確認できた。
日本のデベロッパーに聞くVuforiaの魅力
Steve Mollenkopf氏の基調講演では、レゴブロックとゲームアプリを組み合わせた「LEGO FUSION」という商品がVuforiaの活用事例として紹介されていたが、日本では未発売のため、あまりピンと来ない。おそらく、本誌読者を含め、日本の一般的なユーザーが、ARを最も身近に感じられたのは、グリコがポッキーなどの商品で3DCGアニメ映画の「STAND BY ME ドラえもん」とコラボレーションした例かもしれない。
こうしたARアプリを開発する魅力はどこにあるのか。クアルコムでは、通常のデベロッパーよりも手厚いサポートが得られる「Preferred Developer」として国内2社を支援しているが、会場内の会議室でそのうちの1社であるナレッジワークスの鈴木貴志氏にお話を伺う機会を得た。
鈴木氏によれば、ナレッジワークスでVuforiaを使い始めたのは3年ほど前。Vuforiaを採用した理由について、同氏は「当時からARの会社は何社かあったが、その中で無料で使えるというところと、非常に性能が良いというところが魅力的だった。マーカー認識をクラウド経由で行えるサーバーが提供されているところも魅力の一つ」と語る。同社のソリューションのうち、8~9割でVuforiaが使用されているという。
ビジョンベースという仕組みの特徴について、鈴木氏は「(カメラで)最初にマーカーを認識してしまえば、マーカーから外れてしまっても3Dモデルが表示され続ける。Vuforiaは、トラッキングのソリューションが非常に優れている」と表現する。ただ、カメラを使っているため、あまり早く動かしてしまったり、背景が真っ白の壁だったりした場合はうまく動かない場合もあるという。
対応デバイスの種類も拡大し、UPLINQ 2014では、ARの本格的な普及が近づいていることを感じられた。