【Mobile World Congress 2014】

「スマートライフ」のビジョンを語る、ドコモ加藤氏

 Mobile World Congressの2日目にあたる25日(現地時間)には、「The Connected Lifestyle: Transforming Industries」と題したキーノートスピーチが開催された。ここでは、世界各国のプレイヤーから、モバイルによってどのようなライフスタイルの変化がもたされるのかが語られた。日本からは、ドコモの代表取締役社長 加藤薫氏が登壇している。

キーノートスピーチでスマートライフを語るドコモの加藤社長
スマートライフの考え方が紹介された

 加藤氏は、ドコモが掲げるビジョンである「スマートライフ」についての考え方を語った。「ドコモの幅広い資産を活用して、モバイルで人々の豊かな生活を実演する」として、「dマーケット」を紹介。「dマーケットはドコモが運営するストアで、日用品やファッションアイテム、ヘルスケア、トラベルなどを提供している」とした。加藤氏によると、利用者数は700万(dビデオなどのデジタルコンテンツ)で、2013年の4月から12月にかけ、およそ3億ドル(300億円)の収入があったという。

dマーケットはその一例で、幅広い分野の商品が扱われている
モバイルと現実世界の橋渡しをするのが、周辺機器だ

 モバイルとリアルの世界の橋渡しとして期待しているのが、ウェアラブルやM2Mなどの「ペリフェラル(周辺機器)」だ。加藤氏が世界観を示すものとして見せたビデオでは、外国人との会話がリアルタイムで翻訳され、メガネ型デバイスには相手の情報が瞬時に表示されていた。こうしたサービスは「実現するのにもう少し時間がかかる」というが、こうした取り組みの一部はすでに始まっている。

外国人との会食の場で、会話の内容をスマートフォンでリアルタイムに翻訳しつつ、相手の情報がメガネ型デバイスに表示されるという世界が示された

 その一例として、加藤氏が紹介したのが、心拍数などを測定できる繊維の「hitoe」だ。加藤氏は「着るだけで、このTシャツを通じて心拍数を取得することができる。とてもシンプルだ」と自信をのぞかせた。また、モバイルの応用例として、M2Mを活用した「ペットフィット」や、牛の出産をサポートする「牛温恵」、トヨタと行っている電気自動車をシェアする「Ha:mo」など、幅広い事例を紹介した。

hitoeやペットフィットは、実際のアイテムを加藤氏自らが紹介。犬のぬいぐるみを持ち上げたときは、会場が笑いにつつまれた

 会場からの質問に答える形で、加藤氏はこうした目標を実現するため、組織の変革も行っていくと語っている。

「2つのファンクションがあり、キャリアとしてインフラを作るのは使命の部分。もう1つが今日お話したノンコアのM2Mなども開発していきたいが、それは夢の部分。7月1日に組織の中身を変えようと思っている。インフラの部分を効率化しながら、夢の部分に人を集めるようにする」

 また、健康系サービスについては、「今のところ大きな懸念はないが、ヘルスケアのデータは誰がハンドルするかで問題になる可能性がある」としながら、キャリアの責任は大きいと語った。同様に、ビッグデータについても、「トレンドが引き出されて自分にフィードバックされるという意味では個人も許してくれると思うが、すべてが嫌だという人もいて、これから二極化していく。社会がどうデータセキュリティを考えるかは、キャリアが中心になりながら一定のルールを考えていく必要がある」という見通しを示した。

石野 純也