インタビュー

キーパーソンインタビュー

キーパーソンインタビュー

ドコモ加藤社長が語るスマートフォン&ウェアラブル市場

 Mobile World Congressの開催に合わせ、世界各国の通信事業者がスペイン・バルセロナに集結している。日本のキーパーソンも、少なくない。NTTドコモの代表取締役社長 加藤薫氏もその一人だ。同氏は25日にキーノートスピーチを行う。本誌はそのキーノートに先がけ、加藤氏に単独インタビューを行った。その模様をお届けしよう。

NTTドコモの加藤薫社長

――最初に、iPhone導入から約5カ月が経ちました。改めてその成果をお話ください。

加藤氏
 12月まではきちっとMNPの数字が改善しています。9月があの状況(ポートアウトが多かった)だったので、もう1カ月シフトしていればよかったのですが……。1月もやや悪化しましたが、2月はそこそこの数字できています。他社のキャッシュバックの影響も少しありますね。

――やはりキャッシュバックですか……。

加藤氏
 競争なので我々もやらざるを得ない部分がありますが、本当にいいのか。純増数やポートインが多いに越したことはないのがキャリアの事業ですが、とは言え2年ごとにスイッチした方がお金が入るというのは……。長く契約しているお客様が多いので、おもしろくないのではと常々思っています。

――実際、キャッシュバックの影響はそこまで顕著ですか。

加藤氏
 はい。他社が(キャッシュバックを)積まれると、ポートアウトがビヨンと増えますね。逆に我々が追いかけるポートインが増えます。もっと違うところで競争がしたいし、お客様にも判断してもらいたいですから、違う形はないのかと考えています。

ドコモがiPhoneを導入したことで端末が3社横並びに近づき、キャッシュバック競争も激化している(2013年9月20日のiPhone発売記念イベントにて撮影)

――iPhoneが伸びている中で、相対的に日本でのAndroidのシェアが落ちています。スマートフォン全体での伸び率も鈍化しています。今後の日本のスマートフォン市場を、どのようにお考えでしょうか。

加藤氏
 (GALAXY Note 3を取り出しつつ)これは、よくできてますよね。いろいろなファンクション(機能)が入っていて、電池も長く持ちますし、これはいい。2年前のような状況ではないと思います。Androidが超えているところもありますし、iPhoneにはiPhoneの世界があります。

 すでにご案内のとおり、スマートフォン市場が少し落ち着いてきました。フィーチャーフォンからスマートフォンに行く中で、だけどまだフィーチャーフォンが気になるという方はタブレットをお持ちになることも少なくありません。前々から言っていることですが、これからより鮮明になってくると思います。そのために、我々も「プラスXi割」のような料金を用意していますからね。

――タブレット市場ではiPadがないため、苦戦しているようにも見えます。ここはどうお考えでしょうか。

加藤氏
 ずっと言っているように、検討しています。ただ、相手のあることなので、これ以上はご勘弁ください。

――Mobile World CongressではVoLTEに関する展示もありますが、日本ではいかがでしょうか。どのような打ち出しをしていくのかも教えてください。

加藤氏
 今年中にはやります。たとえば韓国では波の音や鈴虫の声まで聞こえるとやっていましたが、そこまで要求されるとは思っていません。車の中で高級ステレオの音楽を聴きたいとは思いますか? もちろん、高音質な部分がいいというのはありますが、どちらかいうとネットワークの効率が上がるのが大きいですね。

 しょせん音声と言ってしまえばそれまでですが、端末が出てこないとどうしようもありません。相手もVoLTE対応でないと、キレイに聞こえないですからね。始まればアピールはすると思いますが、どこまでというのはまだ考えています。

――同様に、前日のプレスカンファレンスでは第3のOSも注目を集めていました。一方でドコモはTizenの導入を見送っています。iOS、Androidに次ぐOSは必要ないとお考えでしょうか。

加藤氏
 もう1つのOSは必要ですし、その最右翼はTizenだと思っています。ただ、今回はiPhoneを導入したあとで、市場がこうなっている(スマートフォン販売台数が下降傾向)ので、見送りました。いつかというタイミングを見計らっています。

Tizen搭載スマートフォンの導入は見送られた。海外でも、スマートウォッチなどが先行している

――フィーチャーフォンの受け皿は、どのようにしていくお考えでしょうか。

加藤氏
 スマートフォンは確かに鈍っていますが、一方でタブレットは売れています。プラスXi割で、タブレットをお買い求めいただく。そういう使い方もあります。実は私もこれ(フィーチャーフォン)と、GALAXY Note 3を使っていて、電話とメールはフィーチャーフォン、ニュースや調べものはスマートフォンでやっています。ここがファブレットかもしれないですし、タブレットかもしれない。あるいはスマートフォンなのかもしれませんが、そういう(2台持ちが当たり前の)時代がきているのかもしれないと思います。

――「スマートライフのパートナー」を掲げていますが、現状の進捗状況はどの程度でしょうか。

加藤氏
 まだまだです。割合で言うと3~4割でしょうか。

――ということは、資本提携や買収などはまだこれからもあるということでしょうか。

加藤氏
 機会があればやろうと思っています。今はまだモザイクのような形になっていますが、できあがればそれなりに見られる図になると思います。もちろん、人の生活は多様なので、ある人が刺さる分野でも、別の人には刺さらないこともあります。世界的にもこの流れになっていて、GMSAも「Connected City」を打ち出し、同じようなことを言っています。M2Mも含めていろいろなものがつながる、それがモバイルでつながるという世界ですね。

 先日発表したペットフィットもその1つですが、こうしたことは10年以上前から考えていました。この市場は犬だけでなく、まだまだ大きいと思っています。

 たとえば高齢者の増加も課題の1つですが、センサーが0g、0ccに近づいたとき、さりげなく身につけるものに組みこめます。高齢者の方に「これを持ってくれ」と言って、いかにもなものを渡すと嫌がられますしね。(生態信号を読み取れる繊維の)「hitoe」も発表しましたが、ああいうものにセンサーを組み込める世界も来ると思います。

犬に装着して健康管理や位置追跡を行うペットフィットのように、人間の使う携帯電話以外への回線活用を進めている
NTT、東レが開発した生態信号を読み取れる「hitoe」を活用したビジネスも検討しているところだ

――本日はありがとうございました。

石野 純也