【IFA2014】

「Ascend Mate7」「Ascend G7」を送り出すファーウェイの戦略

 ファーウェイは9月4日、ドイツ・ベルリンで開催されるIFA 2014に合わせ、プレスイベントを行い、Androidスマートフォンの新モデル「Ascend Mate7」「Ascend G7」の2機種を発表した。

 プレスイベントではファーウェイのConsumer Business Group CEOのRichard Yu氏が登壇し、市場背景の説明からスタートした。まず、ファーウェイの端末の出荷台数が2010年の300万台から、2011年に2000万台、2012年に3200万台、2013年に5200万台と順調に伸び、2014年は8000万台を目指していることが紹介された。マーケットシェアは6.9%で業界3位のポジションを確保し、なかでもラテンアメリカやアフリカ、中東などの地域の伸びが目立っているという。

 次に、事業戦略の注目点として、「Product」「Brand」「Partnership」の3つを挙げた。製品では上質なデザイン、高い品質、強力なLTEネットワークとの接続性を重視し、ブランドについては「Make it POSSIBLE」を企業キャッチコピーに掲げる一方、サッカーの人気が高いドイツということもあり、ACミランやアヤックス、アーセナル、ボルシア・ドルトムント、パリ・サンジェルマン、アトレティコ・マドリードという欧州各地のサッカーチームをスポンサードしていることが合わせて紹介された。パートナーシップについては、各国の通信事業者とWin-Winの関係を構築し、リテール市場での認知度もこの3年ほどで着実に伸ばしてきている。ユーザーとの接点になるカスタマーサポートにも力を入れており、今後は「コンシューマー(消費者)に愛されるブランドを目指す」とした。

 続いて、今回発表する具体的な製品のプレゼンテーションが行われた。ファーウェイは今年5月に「Ascend P7」をグローバル向けに発表しており、日本国内向けにも9月5日から販売が開始されたが、今回新たに「Ascend P7 Sapphire Edition」がラインアップに加わることが明らかにされた。Rose goldのメタルフレーム、セラミック製の背面パネルで構成され、前面にはネーミングの由来ともなったサファイアガラスが装着される。サファイアガラスは高級腕時計のガラスなどに使われ、傷が付きにくいことで知られているが、Richard Yu氏はアシスタントからアーミーナイフを受け取り、ディスプレイに何度も刃を当てるデモンストレーションを行い、その強さをアピールした。

Ascend Mate 7

 そして、今回発表する新モデルとして、まず「Ascend Mate7」がイメージビデオと共に紹介された。Ascend Mate7が登場する市場背景として、ユーザーから大画面に対するニーズが高く、それに応えるべく、6インチのフルHD液晶ディスプレイを採用している。この6インチというサイズはGALAXY Note 4に対して11%、GALAXY S5に対して35%、iPhone 5sに対して125%も大きい。また、液晶パネルはジャパンディスプレイ製のIPS-NEO液晶(ネガ型IPS液晶)を世界で初めて採用する。1500:1の高コントラストを実現し、従来製品に比べ、15%の透明度向上、15%の低消費電力化を達成している。

 ボディは金属製の一体成形を採用し、ボディ周囲やボタン類などの細部も質感の高い仕上げを実現している。ディスプレイ周囲も「Invisible Edge」と銘打つ狭額縁で仕上げており、本体前面に画面が占める割合は83%にもなる。他機種の画面占有率がiPhone 5sで62%、GALAXY S5が69%、GALAXY Note 4が80%であることを考えると、いかに大画面狭額縁であるかがよくわかる。

 また、6インチという大画面ディスプレイを搭載しながら、同クラスのディスプレイを搭載するライバル機種に比べ、ボディ幅を抑え、7.9mmと薄く仕上げているうえ、バッテリー容量もライバル機種が3000mAh前後であるのに対し、Ascend Mate7が4100mAhと大容量であることも強くアピールされた。ちなみに、ボディの薄さについては、最厚部が7.9mmだが、ボディ周囲のフレーム部分は3.28mmで、背面をラウンドさせたエルゴノミクスデザインで、持ちやすい形状に仕上げている。ボディカラーはmoonlight silver、obsidian black、amber goldの3色がラインアップされる。アクセサリーとして、フリップタイプのレザーケース、イヤホン端子からの給電にも対応したANC(Active Noise Cancellation)イヤホンも供給される。

 アプリケーションプロセッサはHuawei製Kirin 925を採用する。Kirin 925はLTE Category6モデムチップを内装したオクタコアSoC(System on a Chip)で、4つずつの1.8GHz A15コアと1.3GHz A7コア、Mali-T628 GPU、i3コプロセッサーで構成され、28nmのHPMプロセスで製造される。4つずつの異なるコアを搭載したオクタコアSoCは、ユーザーの利用シーンに応じて、動作させるコアを自由に変更できるようにしており、処理が重くなる3DゲームではA15コア4つとA7コア3つ、写真撮影時はA15コア3つとA7コア4つ、処理の軽いメールではA7コア3つのみ、もっとも処理の軽い通話やSMSではA7コア1つだけで動作させることにより、高いパフォーマンスと低消費電力をバランスさせている。このSoCに最適化した100種類以上のアプリでは、消費電力を20~50%も節約できるという。省電力についてはジャイロスコープや電子コンパスなどの各センサーをi3コプロセッサーでマネージメントすることで、0.009mW/GHzを実現している。バッテリーは前筒の通り、4100mAhのリチウムポリマーバッテリーを搭載するが、省電力性能の追求により、一般的な利用で2.33日、ヘビーな使い方で1.38日、ビジネスユースでも1.33日の利用が可能だという。具体的な利用例では動画のストリーミング再生で8時間、保存された動画再生で15時間、音楽再生で60時間、インターネットのブラウジングでは9時間の連続利用を可能としている。

 通信機能は最新のLTE Category6に準拠し、受信時最大300Mbpsのキャリアアグリゲーションに対応する。通信方式はFDD-LTE、TDD-LTE、W-CDMA、GSM、TD-SCDMA、CDMAに対応し、100以上の国と地域、200以上の通信事業者のネットワークで利用できる。対応バンドも非常に多く、さまざまな国と地域で利用できるが、こうした多くの通信方式と周波数帯に対応するにはアンテナの設計がカギを握ってくる。ファーウェイでは「Intelligent Antenna System」と呼ばれる技術を採用することで、これを可能にしている。そのひとつが「Tunable Antenna」で、各国の幅広い周波数帯をサポートしながら、小さいアンテナにまとめることで、コンパクトなボディにもフィットできるようにしている。「Smart Dual Antenna」は送受信用のアンテナを本体の上部と下部にレイアウトし、信号の弱いエリアでの安定した通話を40%以上、端末を持つ向きの違いによる信号も15dB以上、改善する。メタルボディながら、カメラ部周辺にアンテナをレイアウトすることで、NFCにも対応する。

 また、中国や新興国向け端末で採用されることが多いDual SIMにも対応し、本体左側面にトレイ式のSIMカードスロットを2つ備える。このDual SIMがユニークで、上部側のスロットにはmicroSIM、下部側のスロットにはnanoSIMか、microSDメモリーカードが装着でき、どちらのSIMカードスロットも4Gネットワークを利用できるという。ただし、2つの4Gネットワークを同時に利用することはできないようだ。カメラは背面に13メガピクセルのソニー製第4世代CMOSセンサーとF値2.0のレンズを組み合わせたものを搭載し、28mmの広角での撮影に対応する。

 ユーザーインターフェイスではファーウェイ独自の「EMOTION UI」が「EMOTION UI 3.0」にバージョンアップし、さまざまな改良が図られている。たとえば、画面サイズが大きくなり、片手で操作しにくくなることを考慮し、端末を片側に傾けると、文字入力パレットやダイヤルキー、Androidプラットフォームの3つのキー(ホームキーや戻るキーなど)が片側に寄って表示される。

 そして、もうひとつの注目点として、本体背面に備えられたタッチ式指紋センサーについて、説明された。ユーザーは本体のロック解除などのために、毎日、パスワードを入力しているが、これをより簡単にする手段として、ワンタッチ1秒以下で認識可能な指紋センサーを採用したという。iPhoneをはじめ、他機種は2ステップで指紋をスキャンするが、Ascend Mate7の指紋センサーはワンタッチでスキャンできるという。この指紋センサーは360度、どの向きに指を当てても認識する仕様で、指先の乾湿に影響されることなく、利用できる。また、センサーを含めたベゼル部分は1000種類以上のサイズを試作し、もっとも認識率が良く、もっとも小さい1.22mm角のサイズに決められている。最大5つまでの指紋パターンを登録することができ、指紋データはベースバンドチップセット内のセキュアな領域に保存される。指紋センサーと連動させたプライバシー機能も搭載し、特定のフォルダのみを隠す「Private Folder」、特定のアプリの利用を制限する「Application Lock」、第三者に一時的に貸し出すときに写真などのデータ閲覧を制限できる「Visitor Mode」などが用意される。ちなみに、指紋センサーはカメラ起動時、シャッターとしても利用することができる。

Ascend G7

 続いて、Huawei Germany Consumer Business Group Vice PresidentのRobbert de Graaf氏がステージに登場し、もうひとつの新モデル「Ascend G7」のプレゼンテーションを行った。Graaf氏は今日の消費者が求めるキーワードとして、「個性の追求」「スマートな仕事」「思いきり遊ぶ」という言葉を挙げ、こうしたニーズに応えるモデルとして、プレミアムで使いやすく、楽しいスマートフォン「Ascend G7」を企画したという。

Robbert de Graaf氏

 Ascend G7のボディはアルミを採用したフルメタルボディで、ボディの細部まで美しい仕上げを追求している。2.85mmの狭額縁と7.6mmのスリムボディは、Nanoモールド技術によるコンパクトなユニボディを採用し、直感的に持ちやすいとわかる形状に仕上げられている。ボディカラーはSpace gray、Moonlight silver、Horizon goldの3色をラインアップする。

 ディスプレイは5.5インチのHD対応IPS液晶を採用し、80度の広視野角を確保している。端末には30種類以上のテーマ、2000種類以上のロックスクリーン画面などをプリセットし、カスタマイズを楽しむことができる。

 通信機能はLTE Category4に準拠しており、約1GBのファイルを約1分でできるため、自分が撮影した動画や写真をすぐシェアすることができる。海外の幅広いネットワークでも利用できるように、通信方式はFDD-LTE、TDD-LTE、W-CDMA、GSM、TD-SCDMA、CDMA EVDO、CDMA 1Xに対応する。本体には3000mAhの大容量バッテリーを搭載しており、600時間以上の待機、30時間の音楽再生、9時間のWebブラウジング、8時間のオンライン映画、5時間の動画録画、6時間のゲームを楽しめるとしている。省電力機能も標準的なものに加え、ユーザーの利用環境によって省電力をする「Smart」、より長時間の利用を可能にする「Ultra-saving」というモードが用意される。

 カメラは1300万画素のソニー製第4世代CMOSセンサーとF値2.0のレンズを組み合わせたものを背面に搭載し、28mmの広角撮影、1080pのフルHD動画の撮影にも対応する。本体前面上部には5メガピクセルのフロントカメラを搭載し、88度の広角撮影、720pの動画撮影に対応する。パノラマ撮影にも対応するが、ライバル機種のように片方向にしか撮影できないのではなく、端末の向きを認識し、ベルリンのブランデンブルク門であれば、横方向のワイドパノラマ、ニューヨークのエンパイアステートビルであれば、縦方向のパノラマ撮影をできるとした。

 また、世界中で拡がりを見せるSelfie(自撮り)、これを拡張したGroufie(グループでの自撮り)に便利なワイド撮影に対応するほか、最近のAscendシリーズでも人気の高いBeuty modeをさらに強化し、プレビュー画面で補正した写真を確認できるようにしたり、動画撮影についてもBeuty-Enhanced Videoにより、美しく撮影できるようにしている。オートフォーカスに対応するが、奥行のある写真を撮ったとき、撮影後に手前と奥でフォーカス位置を調整できる機能も備える。撮影した写真は新しいGalleryアプリで確認でき、撮影した位置情報をGoogleマップ上に表示して、確認することもできる。

 そして、Huawei Business Consumer Group Global UI Design DirectorのDennis Poon氏が登壇し、両機種に搭載されたEMUI(EMOTION UI)3.0についての説明を行った。EMUIは2012年7月に最初のバージョンがリリースされ、2013年3月に省電力性能を考えたEMUI 1.6、2013年9月にPhone Managerを強化したEMUI 2.0、2014年5月にはDynamic Lock Screenに対応したEMUI 2.3をリリースしてきた。今回のEMOTION UI 3.0は「Time」と「Space」をキーワードに設計し、円とドットで構成するデザインを採用している。レイヤーを重ねる透過デザインも多用し、より直感的に操作できる美しいユーザーインターフェイスに仕上げているとした。

 最後にもう一度、Richard Yu氏がステージに登壇し、今回発表されたそれぞれの製品の価格帯とスペックが明らかにされた。Ascend Mate7はRAM/ROM容量とボディカラーの違いにより、499ユーロと599ユーロのモデルがラインアップされ、ドイツをはじめとした欧州各国、中国をはじめとしたアジア各国で最初に発売される。残念ながら、この一覧に日本は含まれていない。Ascend G7については希望小売価格が299ユーロに設定された。

Richard Yu氏

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。