【CEATEC JAPAN 2011】
mmbi二木氏、モバキャスの「NOTTV」の概要を説明


mmbiの二木氏

 幕張メッセで開催されているエレクトロニクス関連の総合イベント「CEATEC JAPAN 2011」の3日目、キーノートトラックの中で、mmbiの代表取締役社長である二木治成氏は「モバキャス(マルチメディア放送)のサービス開始に向けて」と題した講演を行った。

 まず二木氏は、mmbiが手がけるマルチメディア放送についての概要を説明する。mmbiは地上アナログテレビ放送が使っていた周波数帯を使う「V-Highマルチメディア放送」の事業を行う会社。より細かく言うと、V-Highマルチメディア放送は放送インフラ側を担当する「基幹放送局提供事業者(ハード事業者)」と番組を放送する「基幹放送事業者(ソフト事業者)」に分かれていて、ハード事業者はmmbiの100%子会社であるジャパン・モバイルキャスティングが担当し、mmbi自身はソフト事業者として参入する。そしてこのジャパン・モバイルキャスティングが提供するV-Highマルチメディア放送は、「モバキャス」と命名されている。

 モバキャスはアナログテレビ放送では10~12chに相当する周波数を使い、33個のセグメントに分割してサービスを提供する。このセグメントがさまざまな形式でソフト事業者に提供されることになるが、mmbiは13個のセグメントを使用する「大規模枠」の事業者として申請を行っている。

 モバキャスの放送には、ワンセグの方式を拡張した、ISDB-Tmmという方式が用いられる。この方式では、従来型の放送のようなリアルタイム型放送に加え、放送を端末に保存する蓄積型放送、3Gなど受信機側の通信回線と連携する機能が提供される。蓄積型放送では、映像に限らず、電子書籍やアプリといったコンテンツも配信可能となる。

 また、チャンネルはセグメントという単位で区切られているが、たとえば複数セグメントを持つソフト事業者であれば、時間帯に応じて特定のセグメントをリアルタイム型に使ったり、蓄積型に切り替えたり、といった使い方もできる。

 mmbiではこうした放送サービスを、有料で提供する予定だ。二木氏は、「月額数百円を考えている。さらにプレミアム料金で特別なコンテンツを提供する。しかし標準料金だけでスポーツを含め、かなりの番組をお見せできると思っている」と説明した。

 モバキャスのリアルタイム型放送では、720×480ドット、毎秒30フレームのH.264/MPEG-4 AVCを用いる。二木氏はこれをワンセグと比較し、「解像度は縦横がそれぞれ2倍で4倍、フレームは15から30の2倍。合計で8倍の品質となる」とした。また、蓄積型放送では、最大で毎秒60フレームのフルHD(1920×1080)を送ることも可能であるという。

 モバキャスでmmbiが提供するサービスは、「NOTTV」という名称になることが、CEATEC初日の発表会で明らかにされている。その名前につながるコンセプトは、「テレビにできないことをする」だという。一方で二木氏は余談として、「株主となっているテレビ放送会社からは、テレビを否定していいのか、と言われたが、みなさんに受け入れてもらった」との裏話を披露した。また、ロゴにあるキャラクターの口は、スマートフォンのディスプレイを表わしているという。

 NOTTVの番組編成方針としては、「放送と通信のそれぞれの特徴をいかした、NOTTVならではのコンテンツを提供したい」と説明。さらに番組は3チャンネル程度を想定しているという。二木氏はここで、実際にパイロット的に作られたサッカーの複数試合同時中継番組によるソーシャルネットワークとの連動、リアルタイム型放送と通信の連携の例、蓄積型で提供できるコンテンツの例などを紹介した。とくに蓄積型では、動画だけでなく、HTMLコンテンツや電子新聞・雑誌なども配信できることをアピールした。

 また、モバキャスの特徴を生かしたサービスとして、災害対策についても説明する。二木氏は「地震があればリアルタイム型放送で速報を流すが、一方で蓄積型放送で安否情報など後で見る情報も流せる。通信と連携できるので、モバキャスをオフにしていても、緊急地震速報は受信できる」とし、ケータイともワンセグとも違う性質を持っていることをアピールした。



 最後に二木氏は、今後のモバキャスの今後の展開について説明する。

 まずエリア展開については、2012年春のサービス開始時点では約60%の世帯をカバーし、2012年度末には東名阪地域を中心として、約73%の世帯をカバーするという。さらに2014年度末には91%の世帯カバー率を目指すという。

 モバキャス対応端末については、スマートフォンとタブレットをベースに、モバキャスの機能が入ったものを、来年のサービス開始に向け、開発しているという。5年後には5000万台の普及を目指していて、二木氏は、「親会社のドコモに、このペースで出して欲しい、と要望し、ドコモの山田社長には了解をもらっている」とも語った。また、スマートフォンやタブレットだけでなく、さまざまな端末に搭載していくことも想定しているという。

 二木氏は、こうしたエリアや端末、コンテンツを充実させていくことで、ポジティブサイクルを提供し、「来年4月にはスタートダッシュできればと思っている」と語った。

 二木氏はモバキャスの開始について、「来年の春に開始する。半年あるが、半年しかない。着実に進めている。みなさんによろこんでいただけるサービスを提供したいと考えているので、楽しみにしていただきたい」と述べ、講演を締めくくった。


 




(白根 雅彦)

2011/10/7 14:13