ブライトコーブが動画サービス拡充、アプリ開発・管理システムも


 ブライトコーブは、法人向けに提供している動画配信プラットフォーム「Video Cloud」のサービスラインナップを拡充し、低価格な「Video Cloud Express 日本語版」の提供を開始した。オンラインから申し込むだけで利用でき、クレジットカードがあれば法人でなくても利用できる。価格は月額9900円~。同社はまた、Webサイトの制作技術があればスマートフォンアプリを開発・配信・管理できるサービス「App Cloud」も日本語版サービスを開始した。


「Video Cloud Express」日本語版

 ブライトコーブでは、法人向けの動画配信プラットフォームとして「Video Cloud」を提供しており、サービスラインナップは主にプロや大企業向けの「Professional」「Enterprise」が用意されている。今回新たに日本語版として追加される「Express」は、配信品質や中心的な機能はそのままに、小規模なWebサイトやプロジェクトでの利用に向けたもの。クレジットカードがあれば法人でなくても利用できるなど、価格や課金の面でもターゲットとする中小企業が利用しやすくなっている。

 配信する動画の本数や転送量により3つのプランが用意されており、動画50本、転送量が月間40GB、管理IDが1つのプランが月額9900円となっている。動画200本、月間100GB、管理IDが2つのプランが月額1万9900円。動画500本、月間250GB、管理IDが3つのプランが月額4万9900円。いずれのプランでも、上位のプランにアップグレードが可能。

 また、「Video Cloud Express」の開始記念キャンペーンとして、サービスが開始された4月12日から半年間は、動画1本を月額500円で配信できる特別プランも用意される。


「Video Cloud Express」の機能「Video Cloud」のサービスラインナップ

 

「App Cloud」日本語版

 ブライトコーブでは、動画配信プラットフォームのほかに、スマートフォン向けのアプリ開発を比較的簡単に行え、配信手続きや分析、管理、メンテナンスまで行える「App Cloud」を提供している。今回、新たに日本市場向けとして「App Cloud」の日本語版の提供が開始された。同サービスは、iOSとAndroidをターゲットにしている。

 「App Cloud」の特徴は、ブラウザで閲覧するWebサイトの機能と、端末上で動作するネイティブアプリの機能を組み合わせた「ハイブリッドアプリ」と呼ばれるアプリを簡単に開発できること。同社と関連は無いが、「Facebook」や「Google+」のスマートフォン向けアプリなどは、ハイブリッドアプリと呼ばれており、Webサイトのようなコンテンツの柔軟性を備えながら、ネイティブアプリとして端末のさまざまな機能を利用できるのが特徴になっている。

 「App Cloud」では、具体的にはHTML5、CSS3、JavaScriptといったWebサイトの開発・制作技術があればハイブリッドアプリを開発できるようになっており、クラウド上でのコンパイルにより、iSOやAndroid、タブレット端末にもひとつのソースで対応できる。インストール数や利用動向といった、営業やマーケティング担当者が活用できる情報も提供される。アプリの配信自体はApp Storeなど既存のアプリケーションストアで行う。

 プランは、アプリの開発のみのデベロッパー版が無料で利用でき、アプリの公開やサポートが付属する商用版が有料。価格は個別の契約による。


Webの技術だけでスマートフォン向けの「ハイブリッドアプリ」を開発できるとする開発のほか、営業やマーケティング向けの情報も提供される
「App Cloud」の3つのポイント「App Cloud」の価格など。アプリを公開しないデベロッパー版は無料

 

動画・アプリの課題を解決する日本向けの2つの取り組み

ブライトコーブ CEOの橋下久茂氏

 4月12日には都内で記者向けに発表会が開催された。登壇したブライトコーブ CEOの橋下久茂氏は、50カ国で約3800社が同社の動画配信プラットフォームを採用するなどの実績を紹介し、この中には大手メディアやグローバル企業、政府機関などが含まれることを紹介。合わせて、2月には米ナスダックに上場したことも紹介した。

 同氏は、パソコンやスマートフォンで動画の利用が進んでいるとするデータを示し、スマートフォンが市場に急速に普及していることを示す調査結果も示した。一方で、企業がこうした急拡大しているスマートフォンをターゲットにするとき、動画を使ったアプローチやアプリ開発の手間などの面で問題に直面することが多いと指摘。こうした問題を解決するのが、この日発表された「Video Cloud Express」日本語版と「App Cloud」日本語版であるとした。


ブライトコーブのサービスを利用する企業スマートフォンが普及し、動画の視聴も増加している

 

Webサイトの開発者がいればアプリを開発できる「App Cloud」

米Brightcove CMOのジェフ・ワトコット氏

 米Brightcove 最高マーケティング責任者(CMO)のジェフ・ワトコット氏からは、今回発表された2つのサービスについて、特徴などが解説された。ワトコット氏は、「Video Cloud Express」日本語版について、「クレジットカードだけで、セルフサービスで購入できる。エンタープライズ向けに提供している主な機能は入っており、プレーヤーのテンプレートは15種類を用意した。スマートフォン、タブレットにも自動的に対応して配信できる」と、これまでと比べて安価ながら機能面が充実していることを紹介する。

 すでにサービスが提供されている米国では、「Express」のプランからスタートし、「Enterprise」などにアップグレードする企業が多いとのこと。動画配信の様子や反応を見たい企業にとっても、比較的安価な「Express」プランが重宝されている様子で、ワトコット氏は「日本でも同じ状況になるのではないか」と予想した。


「Video Cloud Express」日本語版のプラン先行して東映京都撮影所などでも採用されている

 

 「App Cloud」日本語版については、パソコン向けWebサイト、タッチ操作に最適化したスマートフォン向けWebサイト、スマートフォン向けアプリ、タブレット向けアプリと、提供すべき形態が「複雑になっている」とワトコット氏は指摘。スマートフォンもiOS、Android、Windows Phoneとプラットフォームが分かれており、アプリだけでも開発が難しくなっているとする。同氏はまた、スマートフォンにおけるプラットフォーム(OS)シェアのデータを示し、予測ではAndroidが最大となるものの、iOSやBlackBerryも一定のシェアを確保することから「ひとつのプラットフォームだけでは(すべてを)カバーできない」と、マルチプラットフォーム対応は避けて通れないことを示した。

 同氏はここでアプリ開発コストについても紹介する。同社の調査として、iOS向けアプリを開発した上で、Android向けに移植し、サーバーやインフラを整備し、コンテンツやバージョンアップなどのメンテナンスを行うと、一般的なレベルのアプリでは3年間で11万3000ドル(約915万円)のコストがかかると見積もる。高度なアプリの場合は、同様の試算で33万~100万ドル(2671万~8095万円)にもなるという。こうしたコストを高額と考える人が増えたことで、Webサイトのみでコンテンツを提供するスタイルに回帰する動きもあるという。


IDC調査による市場シェアの予測。マルチプラットフォーム対応は当面の間、避けて通れないとするアプリ開発コストの試算の例。規模の大小は別にしても、アプリの高度化やプラットフォームの細分化で、高コスト化が進んでいる

 

 しかし、同氏はWebサイトとアプリにはそれぞれ一長一短があるとする。例えばアプリは端末のさまざまな機能を利用できるなど長所が多いものの、一般的に、その中身は検索サービスの対象にならないほか、プラットフォームの細分化や開発コストの増大といった課題を抱えている。一方のWebサイトは、プラットフォームに縛られない提供ができ、迅速な開発・提供や検索エンジンからの誘導といった効果も見込めるが、アプリのような端末機能と深く結びついた機能は利用できない。

 ワトコット氏はこれらを踏まえ「両方が必要であるというのが事実」と結論した上で、Webサイトの開発者がいればアプリを開発できる「App Cloud」を“革命的”なサービスとして紹介。独自のAPIを経由し、「HTMLの技術を通して、ネイティブの機能にアクセスする」と、ハイブリッドアプリの特徴を解説するとともに、「Webの技術を使って、キラーアプリを作れる。開発が終わってからのメンテナンスや分析にも対応する」と、開発やマーケティングなどそれぞれのサイクルに対応した内容になっていることをアピールした。


App Cloudを実際に利用したアプリの例。これは米国国務省の公式アプリ。動画、地図と連携した機能、写真などさまざまな機能が用意されているタブレット(iPad)に最適化したアプリも用意されている

 

 発表会ではこのほか、質疑応答で「YouTube」など無料の動画配信サービスとの違いが問われた。橋下氏は、「YouTubeとは共存できる」と語り、同社のサービスにもYouTube公開機能などが搭載されていることを紹介する。一方で、位置付けの違いについては「YouTubeはトラフィックがYouTubeの中に留まる。関連動画に意図しないものが含まれるなどコントロールできない部分も多い。独自性やブランディングで使うには限りがある」とし、ブランディングや、自社にトラフィックを集めたい場合には同社のようなサービスが最適とした。

 




(太田 亮三)

2012/4/12 17:55