「dメニュー」広告スタート、D2Cの考えるスマホ向け広告


D2Cの杉本氏

 ディーツー コミュニケーションズ(D2C)は、10月19日、NTTドコモのスマートフォン向けポータル「dメニュー」の広告販売を開始した。現在、広告が全て埋まっているほど好調に推移しているという。iモードのレップ(広告代理店)として、iMenuの広告商材を扱ってきたD2Cが、スマートフォン版のiMenuである「dメニュー」でどんな展開を図るのか、関係者に話を聞いた。

 携帯電話各社はスマートフォンを成長市場に位置づけ、冬春商戦に攻勢をかけている。販売は各社好調で、電気通信事業者協会(TCA)などの集計でもその盛況ぶりがうかがえる。各社がフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行を積極的に進めている現在、新たなケータイを購入する際に、フィーチャーフォンは価格的にもラインナップ的にも選びにくい商品となりつつある。

 D2Cはこれまで、iモードの広告代理店として、iMenuやメッセージフリーなどさまざまな広告商材を取り扱ってきた。スマートフォンへの急速な市場の変化は、彼らにとってみれば、フィーチャーフォンユーザーの減少、ひいては広告売上げの減少につながる可能性もある。それでは、ドコモの「dメニュー」は、スマートフォン時代におけるモバイル広告のフロンティアになり得るのか。

 D2Cのドコモメディア事業本部 サービスサポート部 部長の杉本弘明氏は、dメニュー向けの広告について、「おかげさまで満稿状態。枠数が少ないため10社程度の企業からの出稿となるが、CTR(クリック率)もフィーチャーフォンより若干高く、5%前後で推移している。我々が当初想定していたよりも良い結果」と話す。

 D2Cが最初に提供を開始した広告商材は、dメニューのメニューリスト向け広告、「女子部」の名を冠した女性向けコーナーの広告、ゲームコーナー向け広告の3つ。いずれもディスプレイ広告となる。D2Cでは、2012年1月にも広告商材を拡大し、dメニューのiMenu化を進めていく計画だ。なお、iMenuにあるようなトップ掲載広告については、ある程度ユーザー数が増えてから展開するという。


ショートカットアイコンdメニュー

 現在のクライアント(広告主)は、フィーチャーフォンと同じくコンテンツ・プロバイダー(CP)が中心で、スマートフォンの広告も大きな違いはないという。ただし、広告のクリエイティブについては、「試行錯誤しながらユーザーの反応を見て取り組んでいる」(杉本氏)とのこと。フィーチャーフォンに関してD2Cは、10年間に渡るモバイル広告のノウハウを持つものの、これがそのままスマートフォンに活かせるとは限らないのだ。

 杉本氏は「iMenuは30代後半~40代前半が中心になってきており、dメニューはそれに比べると若い。デバイスがスマートフォンに代わり、CTRも高いがこのまま行けるのかは見えない」と明かし、「dメニューが今のiMenu以上にメディアパワーを持つのか、ユーザーの動向を見てみないとわからないところがある。ドコモと相談しながら、dメニュー以外の部分、たとえば、dマーケットといったものを使った広告なども探っていかないとならない」とした。

 なお、フィーチャーフォンのユーザーが減少しているとはいえ、ドコモのフィーチャーフォンの母数は2000万以上と非常に大きなプラットフォームであることに変わりはない。杉本氏は「新聞などの一般メディアよりも圧倒的なユーザー数がいる。売上げが落ちるとは言っても、フィーチャーフォンでまだまだ利益を得ている。2012年半ばか後半までは、既存のフィーチャーフォン向けの広告が中心」と語る。同氏は「そこから先は、dメニューのユーザー数も1000万を超えてくるはずで、そうなるとdメニューへのナショナルクライアントの出稿の可能性もある。そこに合わせた広告商品も考えている」と説明した。


dメニューの広告掲載イメージ

 また、今後さらにスマートフォンへの乗り換えが進んだ際の懸念として、dメニューがiMenuのように皆が使ってくれるプラットフォームにならない可能性を指摘。「これからやってくるユーザーがそのままdメニューを使ってくれるかは、今は見えていない。そうなればフィーチャーフォンの時のようなコンテンツ課金市場が育たない可能性もあり、フィーチャーフォンで出稿実績のあるクライアント以外からも出稿してもらえるような広告商品を作っていかなければならない」と話した。

 その一方で、クライアント側でもスマートフォンにおける“良い広告のあり方”が見えてない状況があるようだ。期間保証(CPC)なのか、クリック数(CPC)なのか、それとも顧客獲得単価(CPA)なのか、何を持ってスマートフォン向け広告に対する効果を判断するのか、クライアント側も捕まえられていないという。

 D2Cは、iMenuにおいて、媒体であるドコモ、CP、ユーザーの3者を結ぶ広告周りのエンジンとして機能してきた。同社はドコモを取り巻く大きなアドプログラムとして機能していきたい考えだ。D2Cでは、ドコモ向けの広告売上げについて、フィーチャーフォンの売上げをスマートフォン向けの出稿が上回るのは、「早くとも2013年後半」(杉本氏)とする。それまでに、スマートフォンに最適な高付加価値の広告商品を提供していかなければならない。

 




(津田 啓夢)

2011/12/20 16:50