本日の一品

安価な「セラミック焼網」でプチリッチブランドと勝負

 昨今は世の中は景気が良いのか悪いのかよくわからないことが多い。銀行による最新の調査でも、サラリーマンの平均昼食代は約600円。月のお小遣いの平均値は約3万7000円あまり。ところがニュースを見れば、数万円以上の炊飯器やら、北大西洋の島の名前によく似た2万円を軽く超える超高級トースターやらが飛ぶように売れているという。

 両者を並べてみると、お小遣い調査が不正確なのか、炊飯器やトースターが本当は飛ぶようには売れてはいなくて、SNS上の情報発信に長けた一部の層だけが買っているのかのどちらかではないかと邪推してしまう。

1000円のセラミック焼網で焼くトースターの味は昨今流行りのプチリッチ・トースターに迫れるか、いや抜き去ることができるか?!

 ともかく、本当に美味いトーストは2万円の投資をしないと達成できないのか、気になってしまって、今回はできるだけ安くて、美味しく食パンを焼ける道具をネットで探して試してみた。

 購入したのは、中小企業が集まる東大阪市に本社を置く丸十金網社製の「セラミック焼網」の中サイズ。Amazonでなんとたったの1000円だ。おまけにAmazonプライム会員なら送料無料で即日配送なんてオマケもついてしまう。なんと話題のプチリッチトースターのたった20分の1の値段だ。

 配送されてきたセラミック焼網は、150mm角で上段が金網、下段はセラミックでシールドされた金網の2段構造。昨今ではあまり見かけることのないメイド・イン・ジャパンのシンプルな構造物だった。

セラミック網の下段とシンプルな鉄網の上段の2段構造がセラミック焼網の特徴だ

 筆者はその昔、キャンプで食べたトーストの味が忘れられず、もっと安価で同時にトーストが4枚ほど焼けるキャンプ用のトースターを購入して自宅のガスレンジで使ったことがある。ガス火で焼いたトーストは抜群のカリカリ具合が実現できる。そしてそれに均等な焦げ目がつけば最高だったのだが、パンを設置する位置関係からなかなか難しい問題が多かった。

 結局のところ、キャンプ用のトースターは、あくまで自宅じゃないキャンプ先での食料加工の一時しのぎ道具のように思えてしまった。そして決してトーストを美味しく食べるためのアイテムではないという結論に達したのだった。

 さて、今回、満を持して購入したセラミック焼網の使い勝手はどうだろうか。何度かトーストを焼いてみて、自分なりの手順書を作ってみた。まず、ガスレンジを点火する。最初の火は小さめ、換気扇を回すことを忘れず、約1分間空焼き。

まずは1分ほど、ガスレンジの中央にセラミック焼網を置き、小さなガス火の空焼きでウォーミングアップ
使うのは超高級食パン……ではなく近所のコンビニで買った厚切りパン

 その後、お好みにもよるが、やや厚切りの食パンを取り出し、セラミック焼網の中央に載せる。焦げ具合のお好みに応じて、火はより小さくしたり、少し大きくしたり調整する。どちらかと言えば焦げ目の目立つくらいが好きな筆者は、ここでガス火の調整はなく最初のまま。

 慣れない最初のうちは時々裏返してみて、ガス火のサイズと焦げ目の感覚を掴むことが重要だ。ガス火が大き過ぎたり、食パンを置く位置が上下左右に多少ブレると、偏った焦げ目がアッという間に付く可能性がきわめて高い。

適度に熱くなったセラミック焼網の中央に厚切りパンを載っける
焦げないように用心しながら時々様子を見て、裏返して反対側を焼く

 超高級トースターと違って、1000円のフル・マニュアル焼網は、ボタンを押せば終わりというわけにはいかない。お好みのトーストができあがるまでは一時の油断も許されないのだ。そしてパンの片面に綺麗に焦げ目がつけば、裏側にひっくり返して同じように焼く。

 下段のセラミック網や上段の金網に蓄積された熱エネルギーの関係から、裏返した後は最初の面を焼いた時より少し早く焦げ目が付くので、ますます目が離せない。上手いこと両面に焦げ目を綺麗に付けたら、セラミック焼網からパンを降ろす。ガスを消して換気扇を止めて、全て終了だ。慣れてくればこのプロセスの所要時間は5分以下だ。

焼網の跡がきれいについたトーストができあがった
末端部分は焦げやすいので要注意だ。筆者は焦げた箇所も好きなので気にしない

 陽の当たる生活感のないリビングダイニングで、一杯目のコーヒーを飲んでる間に、プチリッチな賢いトースターが全自動で焼いてくれるトーストではないので、短時間に全知全能を注入する手作業が必要。ガス台の前に付きっきりになる覚悟は絶対だ。その分、トーストができあがるまでのトータル時間はきわめて短時間で、貧乏暇なしには超合理的だ。

 さて肝心なトーストの味はどうだろうか? プチリッチトースターで焼いたトーストの味を全く知らない筆者が語るのはおこがましいが、近所のコンビニで買った厚切りの食パンの外側は綺麗にこんがり焼けて、表面はカリカリ、内部はふんわりの絶品に仕上がった。

 まだまだ高温な表面に溶けこむようにバターでもマーガリンでもお好みに塗って口に入れると間違いなくその差に気づくはずだ。この素晴らしいトースト効果を宣伝コピーにするなら「“セラミック焼網”だけのノン・スチームテクノロジーと完璧な人海戦術による温度制御が最高の味を実現!」ということになるのかもしれない。

熱いうちにバターやマーガリンを溶けこませるように塗る。シュガートーストも絶品だった

 話題の全自動プチリッチトースターにして優雅な朝を過ごすか、1000円のフルマニュアル仕様のセラミック焼網で、ガス台の前に立ちっぱなしで焦げ目のタイミング遊びを楽しんでアクセクした朝のひと時を楽しむか……筆者は手作業の楽しみと工夫の幅の楽しさを知ってしまったので、もう後戻りはできない。

製品名販売元購入価格
セラミック焼網(中)丸十金網1080円

ゼロ・ハリ