本日の一品

アキバで見つけた謎のマウス型MP3プレーヤー

 モバイルオーディオなら、ほんの少し前まで「DAP」(デジタルオーディオプレイヤー)と呼ばれる専用ハードウェアを使うのが当たり前だった。しかし、腕時計機能がケータイやスマホに取って代わられたのと同じように、デジタルミュージックの再生ハードウェアも、その多くはスマホが代行する時代に移り変わっている。

モバイル用途の小さなマウスの形をしたMP3プレーヤーだ

 こういう環境となった腕時計の世界では、超高級化路線と、超低価格商品の二極分化して生き延びてきた。DAPの世界でも、似たような状況へと変化してきているようだ。何年かに一度必ず登場するハイエンド・オーディオのブームの波と連動し、ここ1~2年は高価格デジタル・オーディオが脚光を浴びる時代となってきている。

 そこはモバイルオーディオの世界も例外ではなく、一度はきわめてコンパクトになった形状も、ハイファイを極めようとするたびに、そのサイズはどんどん大きくなっていった。販売価格も10万円台はまだまだひよっ子で、高性能なインイヤーヘッドフォンとプレーヤーのセットなら、数十万円台の高額商品も珍しくない世界が登場してきている。

ずっと小さなDAPが好きだったが、最近の機種はどんどん大きく高価になってきている

 もちろん、ユーザには繊細な音質差を確実に聴き分けられるような、耳の性能の良さも求められる。しかし医学的には早ければ40代から、ほとんどの人は50代から聴力が劣化すると言われている。残念ながら、高価なハイエンドオーディオをお小遣いで購入するには、聴力の劣化する年齢に達しないと難しいのも皮肉な現実だ。

 今回、筆者がアキバの裏通りで偶然見つけた商品は、500円玉でも缶コーヒー一杯分のお釣りが戻ってくる、たったの399円(税抜)のMP3プレーヤーだ。興味深いのは、なぜかMP3プレーヤーとしてはあるまじき”マウス”の外観をしていることだ。

旧nano互換機のパッケージを流用していると思われるが、きっと内部回路はnano互換機と同じだろう
音楽再生の操作に必要なボタン類を上手くマウスボタンに割り振っている

 マウス上部のクリックボタンは、ショートクリックと長押しの組み合わせで、音量の大小と曲間スキップの両方を操作出来る。右側面にはmicroSDカードスロットとポーズボタン、左側面にはステレオイヤホン端子と、充電のためのminiUSBポート、そして電源オンオフの為のスライドスイッチが配置されている。

この小さな筐体にminiUSB充電端子というのも話の種にはなるだろう
残念ながらmicroSDの対応容量はどこにも記載がなかった。筆者は2GBを使用

 早速、パソコンでいつも聴いている数十曲(MP3のみ)をmicroSDカードにドラッグ・アンド・ドロップして、本体に挿入して付属のイヤフォンで聴いてみた。最初に聴いた感触は、低域成分の少ない多少シャリシャリした登場初期の頃のMP3プレーヤーのような印象だった。

 高音のノイズがそこそこ気になるが、大音量で聴くロックなどではそれほど気にはならない。そして実際にいくつかイヤフォンを替えて試聴しているうちに、本機にベストな組み合わせのイヤホンが見つかった。ひとつは、重低音が特徴の人気の低価格機種、JVCの「HA-FX3X」、そしてもうひとつは、399円のMP3プレーヤーと組み合わせるにはいささか場違いなAKGの「K3003」だった。両者の値段差を考えると、明らかに「HA-FX3X」が最適の選択だ。十分にプレーヤーの低域不足を補ってくれる。

音楽再生時にはマウス内部が赤く点滅してちょっとファンタジックだ

 さて、この商品に対する筆者の最大の疑問は、MP3プレーヤーの外観がなぜマウスなのかということだった。

 ある時、悪友が集まってその話題になった。台湾や中国の製造事情に詳しい、某社長の推測は「必要な回路やバッテリーを押し込むMP3の筐体をいろいろ物色したが、結局のところ新たに金型代が必要ないミニマウスに落ち着いたんじゃ」というもの。確かに説得力のある解説だった。

 今回のミニマウス形状のMP3プレーヤー、面白くもあり399円と超破格だが、不良率もそれなりの可能性はある。不良交換に行くための交通費だけでも足が出るということも念頭に置いて、覚悟をして購入されることをお薦めしたい。

製品名販売元購入価格
ミニマウス型MP3プレーヤーあきばお~399円

ゼロ・ハリ