本日の一品

バイクのタイヤ交換にも!? タンク付き空気入れ「TLR Flash Charger」

巨大タンク付き空気入れ、Bontrager「TLR Flash Charger」

 今回は空気入れにエアータンクが付いているゴツめの自転車用フロアポンプを紹介したいのだが、これがどういう目的で使用するものなのか説明するために、少し回り道をさせていただきたい。

 自転車のタイヤというのはどんどん進化しているらしく、ちょっと前まで26インチが標準だったように思うのだが、近頃は700cというひと回り大きなサイズの規格が主流になっており、チューブタイヤだけでなくチューブレスタイヤも使われているらしい、ということを最近知った。

 で、チューブレスタイヤにはホイールに接する内周部分にビードというものがあり、これがホイールに密着することで空気が漏れない構造になっている。しっかり密着させるため、ビードはタイヤのトレッド面よりはるかに固い。固いから、タイヤ交換する時は、一気に空気を入れて勢いで密着させる必要がある。これが、いわゆる“ビード上げ”という作業だ。

 普通の自転車用空気入れだと、一度に入れられる空気量が少ないから、すでにビードが上がったものに空気を足すことはできても、ビード上げ自体は難しい。そのため、ビード上げには自転車屋なんかにある電動のエアーコンプレッサーというものが一般的には使われるのだけれど、いよいよコンプレッサーなしでビード上げできる自転車用フロアポンプが発売された。それがBontragerの「TLR Flash Charger」だ。

 というわけで前置きがちょっと長くなってしまったが、冒頭で触れた通り、TLR Flash Chargerは普通っぽい空気入れのボディに、巨大なエアータンクが付いたフロアポンプ(足で押さえて上から両手で押し込むタイプの空気入れ)となっている。一般的なフロアポンプと比べると一目瞭然、どこから見てもゴツくてデカい。ホース先端のチャック部分は米式バルブと仏式バルブに対応しており、仏式バルブでもアダプターなしで差し込むだけで空気を入れられる。ママチャリなどに採用されていることの多い英式バルブには対応していない。

一般的なフロアポンプと比べ一回りか二回りくらいデカい
そのぶん脚もしっかりしていて安定する
持ち手部分も大きめで力を入れやすい
チャック部分は米式バルブと仏式バルブに対応
仏式バルブにもそのまま押し込めばOK
こちらは米式バルブ

 エアータンクには赤いレバーがあり、これを“CHARGE”に合わせてポンプをひたすら押すとタンクに空気が送り込まれて圧縮されつつ貯まっていき、レバーを“INFLATE”に切り替えてリリースすれば貯まった空気を放出する。通常のフロアポンプでは不可能な量を一気にタイヤに送り込めるので、自転車用チューブレスタイヤのビード上げにも対応できる、というわけだ。

“CHARGE”に合わせている時はポンピングした空気はタンクに送られる
“INFLATE”に合わせると貯めた空気を放出。このままの状態でポンピングすれば普通のフロアポンプとしても使える
貯めた空気を使わなくなったら“BLEED VALVE”を押すとエアを抜ける

 ところで、筆者はチューブレスタイヤの自転車は所有していない。ならなんでこの製品を購入したのかというと、バイクのタイヤのビード上げに使えるのではないか、と淡い期待を抱いてのこと。いや、自転車用なので、バイクのタイヤには空気量が全然足りないだろうから、一発でビードが上がらないであろうことは分かっていた。分かってはいたものの、普通の空気入れでビード上げするつらさを考えると、少しでも楽になるなら欲しい。

 そんなこんなでTLR Flash Chargerを使ってバイクのタイヤのビード上げに挑んでみたのが以下の動画。「ビン!」という音がビードが上がった合図だ。ビードはタイヤの両側にあるので、2回音がすれば完了ということになる。

【TLR Flash Chargerによるポンピング動画】

 結果、4分32秒かかってビード上げに成功した。ただし、実際には4回目のチャージの最中に勝手にビードが上がったので、実質的に3回目のリリースをした3分50秒あたりですでに成功していたと言える。

 本体に備える空気圧ゲージで見て、150psiまで貯めたところでリリースしていたのだが、100psiを超えたあたりから全体重を乗せないとポンプを押し込めないほどで、体力と筋力はそれなりに使う。それでも、ある程度マイペースでポンピングできる分、普通の空気入れを使ってビード上げするよりは楽だ。

空気圧ゲージも備える。体重の軽い人は150psi付近まで貯めるのは難しいかも

 ちなみに普通の空気入れを使った場合、わずか1分少々でビードが上がった。けれど、重ねて言うが、TLR Flash Chargerを使う方が体力的にはマシだ。普通の空気入れでは、ホイールに密着していないビードの隙間から漏れるのが早いか、ポンピングで送り込む方が早いかという、あてのない空気入れ競争を強いられる。少なくともその1分間、全力でポンピングし続ける体力が必要だ。浸水するボートから水をすくい出す作業に似ているかもしれない。これは自転車の場合も似たようなものだろう。

 TLR Flash Chargerを使えば、疲れないことはないが、ゆっくりポンピングしてビードを上げられる。金額を考えるとそこそこ性能の良いエアーコンプレッサーを手に入れられる可能性もあるが、電力なしで使える点も含めると、自転車乗りやバイク乗り(のうち自分でタイヤ交換する人)は「買い」の一品ではないだろうか。

注意点は1つ。バルブへのロックに使うレバーが長いこと
レバーを引き上げてバルブに固定する際、ホイールによっては干渉してしまうこともある
製品名販売元購入場所購入価格
TLR Flash ChargerBontragerBEX ISOYA 成城1万3900円

日沼諭史