カステルバジャックのマネキンが腕時計に「GUMMY ME!」


背の高いコップ状の容器に押し込まれている姿は誰が見ても腕時計には見えない

 腕時計が、現在時刻の認識や経過時間の把握、来るべき近未来の予測をする道具として役立った時代はもうとっくの昔に過ぎ去ったようだ。単なる腕時計が持つこれらの機能だけのためなら、今や全国民が24時間365日、身につけているケータイで全て解決だ。

 腕時計は、今や何か明快な目的を持った道具ではなく、個人のアイデンティティを示し、他人と区別するためのアイコンのようなイメージ商品に変化しようとしているのかもしれない。世界中のデザイナーブランドの腕時計が群雄割拠し、日々、コンペティションしている日本の市場だが、最近、腕時計の世界ではあまり耳慣れないデザイナーズウオッチが登場した。

 個性の強いフランスのデザイナー「カステル・パジャック」は日本国内でも有名なデザイナーだ。「GUMMY ME!」は、カステル・パジャックのブティックで、実際に使われていたというマネキンをモデルにして香港のデザインウオッチブランドである「o.d.m.」(original, dynamic, minimal)が商品化した一風変わったユニセックス腕時計だ。

 筆者は実際にカステル・パジャックのブティックに展示されていたというマネキンの実物を見たことがないので、GUMMY ME!をそれと関連付けて説明はできない。しかし、一見してGUMMY ME!は、両手を高く持ち上げた痩せっぽちのうさぎに似た動物に見える。

 o.d.m.社の商品紹介によると、GUMMY ME!は、「宇宙からやってきたウサギのような生命体」との説明があるが、やはり誰が見ても“うさぎ”なのだろう。腕時計としての実用的機能は、二の次、三の次なのだが、アイデンティティとしてのデザインや、他と比べてどう際立つかという目立ち度は極めて重要なエレメントだ。

 GUMMY ME!は、Swatchやシリコン系のファッション・ウオッチならごく普通のカラーに当たるブラックとホワイトに加えて、目立ち度の圧倒的に高いレッドやブルーを本体カラーに採用している。商品デザインやカラーリングは極めて飛んだ発想なので、きっと腕には装着せず、どこか腕以外の他の部位に装着するのかと想像したが、それは期待はずれで、単なる腕時計として、腕首に普通に取り付けるらしい。

 GUMMY ME!の大きく伸ばした両腕の先には2本のピンが一列に取り付けられており、そのピンを足首の2穴10列、合計20個開けられた穴に引っ掛けて腕首サイズに合うように調整する普通仕様だ。実際に腕に装着してみると、うさぎの長い手足と耳が腕首に巻き付くイメージになるが、パッと見何か「おかしなモノを腕に巻いている」というイメージだ。

 とにかく目立つことで本来の目的を達することが出来るなら悪くはないが、取り外して置いているときに比較して、そのインパクトは弱い。今回は肝心ではない現在時刻の表示機能だが、GUMMY ME!の両方の眼から時刻を読み取る。向かって左目で現在時間、右目で分をデジタル表示する。もちろん本体の何処かをプッシュすることで、日付表示に変化したり、バックライトが点灯するところはごく普通の腕時計と同じだ。もちろん見やすいとはお世辞にも言えない。

 GUMMY ME!は、きっと独創的であるカステル・パジャックのブティックにあったマネキンにエネルギーあるインフルエンスを受け過ぎた為にデザイン的に暴走した腕時計の最右翼だ。腕に装着することで誰よりも目立つことと、それをトリガーにして話題が繋がる自信があるなら購入は正しいと言えるだろう。

パッケージから取り出しても、まだまだ腕時計とは確信の持てない形状をしているSwatchなどではお馴染みのシリコン製の素材を使った腕時計だ左右の目の玉が時と分を表示している。お世辞にも見やすいとは言えない
手の先のピント足に刻まれた丸い穴で腕時計を手首に取り付ける「何か変なモノが腕首に巻き付いているが、ひょっとしたら腕時計?」という感じ


商品名実売価格購入場所
GUMMY ME ! White1万1550円o.d.m.


(ゼロ・ハリ)

2012/5/8 06:00