エントリーモデルのDJ用ヘッドフォン「Pioneer HDJ-500」


パイオニア HDJ-500。ホワイト・ブラック・レッドの三色がラインアップされており、筆者は赤を購入

 以前、本コーナーでPCDJ入門機「Spin+Djay 3.0」を紹介した。未だクラブには躍り出ず、家で自前のミックスを楽しんでいるのだが、一つ物足りないと感じる要素があった。DJ用ヘッドフォンの存在だ。

 クラブや映像などで、片耳にヘッドフォンを押し当てて、忙しなくミキサーを弄っているDJの姿を見たことはないだろうか。あれは、今フロアで流れている音を確認しつつ、次にミックスする音源を確認して調整しているのだ。つまり、DJは二つの音を同時に確認するため片耳にのみヘッドフォンを押し当てる必要があり、そのため本格的なDJ用ヘッドフォンはイヤーカップが反転する機構を備えていたり、爆音の中でもキック音(おもに低音域)を聞き分けやすいよう音質が調整されていたりするなど、様々な工夫が凝らされている。

 とはいえ、筆者のような家でしかプレイしない者は、クラブのように爆音が鳴っているわけでもなし、イヤフォンを片耳に突っ込めば事足りるのだが、何事も形から入るのは大事だ。気分を盛り上げれば、自ずと練習にも身が入るに違いない。というわけでDJ用ヘッドフォンを物色し始めたものの、プロ用は値が張るのだ。しかし、上述の「Spin」のような初心者向け機材が多く出てきた影響だろうか、エントリー向けのDJ用ヘッドフォンが登場している。それが今回ご紹介するパイオニアのヘッドフォン「HDJ-500」(以下、HDJ-500)である。

 HDJ-500は、同社のDJ用ヘッドフォン「HDJ」シリーズの中でも初心者向けに位置づけられたモデルだ。最大の特徴は、右側のイヤーカップが、アームの部分から前後に回転する機構である。これにより、HDJ-500は頭の上に載せたまま右耳を開放して左耳のみをカバーできる。両手をふさぐことがないのは便利だ。もちろん、アームを真っ直ぐに戻せば普通のヘッドフォンとしても利用できる。カチッとひねるだけで片耳を開放できるこの機構は、普段使いでもさまざまな場面で活躍してくれる。

 音質は、この価格帯のヘッドフォンとして普通だと思う。豊かというよりは、モニタリングヘッドフォンらしいフラットな音質で、やや低音が強めに感じられる程度だ。“現場”に出たことがないので何とも言えないが、実用には足るであろう。それより、購入してから一年ばかり利用してきた結果として、気になる点がいくつか出てきた。

 その一つが、イヤーカップが小さいことだ。HDJ-500のイヤーカップは耳を包み込むというより、耳の上に乗る形なのである。音楽を聴く分には支障はないものの、頭を前後に振るとヘッドフォンが外れてしまう。右耳のアームを折りたためば外れにくくはなるものの、気はつかう。せっかくノリの良い音楽をかけているのだから、ヘッドバンギングくらいは心置きなくしたいものだ。

 もう一つ気になる点は、耐久性に対する不安だ。実は筆者のHDJ-500は、購入後半年くらいして頭頂部のアームの接着がもげてしまい、一度交換に出している。筆者だけなら良いのだが、同時期に同じモデルを購入した友人も同じ目に遭っていたりする。交換後数ヶ月経つが、とりあえず今のところは問題なく利用できているので、初期ロットのみ発生していた問題と信じたい。

 ……などと不安な点はあるものの、価格と機能&スタイルを鑑みれば、充分満足な一品である。普段使いのヘッドフォンとしても申し分ない。これからDJを志す方々には、以前ご紹介した「Spin」ともどもおすすめしたい。

右耳のイヤーカップがアームの部分から前後に回転し、耳を開放できる実際に装着した様子。後ろに回転させるのが安定していて良い

 

製品名製造元購入価格
HDJ-500パイオニア8980円

 




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2011/8/8 06:00