本日の一品
単機能だからこそ面白い! Arduinoベースのテトリス専用機
2017年6月6日 06:00
幼少期からのプログラミング教育やその効果にきわめて多くの注目が集まる昨今だが、まあ人間向き不向きがある。誰もがプログラミングのエキスパートになれるわけではない。
筆者が社会人になって某IT系企業に就職した最初の基礎研修では、大型コンピュータの機械語をなどをやらされたが、生まれきっての文化系人間にはチンプンカンプンの世界だった。今ではプログラミングを楽しんでみたいなどと馬鹿げたことを考えるときもあるが、過去の悪い経験を思い出しては踏みとどまっているのが実情だ。
世の中に新しいOSやコンパクトなプログラミング環境が登場すると、当然のように、土台しか無い世界で開発環境の整備から始める“先駆的猛者”と、その猛者が通った道をなぞるようにアプリ作りを楽しむ“プログラミング系マニア”と、筆者のように全ての先駆者が集大成した結果だけをサービスとして楽しむ“ただの人”に別れるものだ。
今回、筆者が購入したのは、そんな最後のアウトプットとも言える「Arduinoベースのテトリス専用機」だ。誰もが楽しめるシンプルなテトリス・ゲーム機で、落下してくるさまざまなブロックをイメージするカラフルなパッケージに入って売られている。しかし、実際の商品は約1.5インチのモノクロ液晶なので内容はパッケージよりはるかにに地味でシンプルだ。
大事なことはカラーかモノクロか……ということなどではなく、このシンプルなゲーム機が「Arduino」(アルドゥイーノ)という小さな基板で搭載したクレジットカードサイズのゲーム機「Arduboy」で作られていることだ。
「Arduboy」はクラウドファンディングのKickstarter生まれデバイス。自らがゲームアプリを制作したり、すでに誰かが作ったいろいろなゲームアプリを自由にロードしてプレイできる超小型のゲーム機だ。そのArduboyが誰もが知っていて懐かしい“テトリス専用機”に仕上げたのが、今回ご紹介する「Tetris MicroCard」(テトリス・マイクロカード)なのだ。
購入したユーザーにプログラミング環境を提供するデバイスではないので、付属品は本体と英文の取説のみ。充電式のバッテリーを内蔵し、動作時間は約6時間。microUSBケーブルから充電できる。
ご存知のように1980年台後半に世界中で流行った元祖“落ちゲー”である「テトリス」は、上から落ちてくる何種類かのブロックを落下するまでの間に左右に移動させ、底辺に積み揃えて、ブロックが横一直線に隙間なく並ぶと、そのラインが画面から消えて行くというきわめてシンプルなゲームだ。
テトリス・マイクロカードはその発売にあたり、テトリスの公式ライセンスを取得。キーの配置や設定もテトリスの操作に特化している。ブロックの動作をコントロールする全部で6個のボタンが備えられている。右側の2つのボタンは落ちてくるブロックの回転キーだ。右側のボタンが時計の針回り。左側のボタンはその逆だ。左側の十字カーソルキーに見える4つのボタンの左右は、落ちてくるブロックの左右移動。上下のボタンは、上のボタンがブロック落下が最速となるボタン。下のボタンは、低速落下だ。底辺まで落ちたブロックを一瞬で左右に移動させることもできる。
そして、テトリスといえば欠かせないのが、うら寂しくもゲームの動きにあまりにもぴったりなBGMであるロシア民謡「コロブチカ」だ。もちろん、テトリス・マイクロカードにも単音で、よりマイナーな感じのBGMが設定されている。画面に向かって右上の小さなスライドスイッチでBGMをオン・オフできる。電源のオン・オフは十字カーソルキーの上に位置する電源スイッチのスライド操作だ。
比較的初心者でも扱いやすいマイコンボードの一種であるArduinoやその延長線上にあるゲーム機特化型のArduboy、その機能をテトリスだけを楽しむために活用したTetris MicroCardという多少無理な流れを見れば、Tetris MicroCardがシンプル機能な割に贅沢なハードを利用しているゲーム機であるかは簡単に想像できる。
それは、トランスルーセントで内部の半導体や基板が透けて見える表面構造と対照的な背面処理にも伺える。パープルカラーが商品の性格上、最適かどうかは意見が別れるかもしれないが、“TETRiS MICROCARD”という商品名を中央に配置したクールな背面は、ホットな前面に対して抜群のコンビネーションだ。
スマホアプリとしてはすでに無料のアプリが溢れかえっているテトリスゲームに数千円の対価を支払うの疑問だと思う人は端から関係のない商品だろう。しかし、何でもできるスマホ上で動作する無料でより多機能、多要素なテトリス発展系のゲームにハマるか、独特のデザインコンセプトはあるが、クラシカルなテトリスゲームしかできない高価なTetris MicroCardを好むかは人それぞれだ。
もちろん、偏屈者の筆者は、今だからこそシンプルでクラシカルなテトリスしかできない、そして他人とカブらないTetris MicroCardに強く惹かれてしまった。今では、「どこでも即テトリス」を実現できるハードウェアはTetris MicroCard以外の選択肢は無く、筆者はいつも財布に入れて持ち歩いている。
製品名 | 販売元 | 購入価格 |
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Tetris MicroCard | Seeed Studio | 6999円(税込) |