スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

周囲360度をワンシャッターで撮れるデジカメ

周囲360度をワンシャッターで撮れるデジカメ

 2013年9月5日に発表されたリコーの「THETA (シータ)」。全天球イメージを一度のシャッター操作だけで撮れるということで、一部で超大きな話題になったデジタルカメラだ。

 しかし「日本での発売は未定」とのアナウンス。「えーっお願い売って~頼む~絶対買うから~」とか思った人が続出した。何を隠そう俺もそのひとり。だが10月末にめでたく国内発売が決定し、「イーヤッハァ~キたぜシータ!! パズー!! バルス!! 古っ!! ってか絶対買うし!!」と考えた次の瞬間、光と同等とも思える速度でポチッと予約したのであった。

リコーの「THETA (シータ)」。スティック型のデジタルカメラで、2つのレンズにより1度のシャッターで全天球イメージ(静止画)が得られる。撮った写真は、THETA対応アプリを使って「見る方向や画角を変えながら自由に閲覧」できる。実勢価格は4万2000円前後

 前述のとおり、THETAでは1度のシャッターで全天球イメージが撮れる。「全天球イメージ」って初めて聞いた言葉なんですけど、前後左右上下360度全ての視野ということのようだ。つまりTHETAで撮ると、THETAのレンズ周囲にある風景を全部収めた写真が撮れる。

THETAでの撮影例。THETAのレンズ部を中心とし、前後左右上下方向360度をほぼ全て含む静止画が得られる。再生は専用ソフトで行う
画像の部分拡大にも対応する。つまり見る方向の画角を自由に変えつつ写真を閲覧できるんですな

 こういう写真はこれまででも撮影できた。容易な方法としてはMicrosoftの「Photosynth」の利用だ。iOS用アプリなどもあって、スマートフォンを使って手軽にパノラマ写真の撮影ができた。

 が、手軽と言っても、複数枚の写真からパノラマ写真を合成しているので、何枚も写真を撮る必要があった。少々手間がかかるんですな。また、撮影のタイミングが異なる写真を合成するため、動いているものがあるとそれが移動してしまったり、何度も写り込んだりと、風景として辻褄が合わないものになったりもした。

 でもTHETAなら、一度のシャッターで全天球イメージが撮れる。手間がかからないし、風景写真としての整合性も保たれる。これは素敵!! と、このテの写真が好きな人が思ったりして、大きな話題となったTHETAなんですな。

 てなわけで以降、THETAの機能や使用感などをレポートしてみたい。が、結論から言ってしまうと、コレ、スゲくおもしろいっす♪ ハッキリ言って「4万2000円前後」という実勢価格は高いと思うが、この手の写真が好きな人なら大いに喜べる操作感があり、期待に近い写真が得られると思う。

THETAはどうやって使う?

 THETAは、基本的にピント合わせも露出補正も不要なフルオートデジカメ。スペックは製品紹介ページにあるが、スマートフォンなどとWi-Fi接続したときに露出補正できる程度の機能性しか持っていない。逆に言えば、シャッターボタンを押して撮るだけなので、誰にでも簡単に扱える。

 なお、本体サイズは幅4.2×高さ12.9×厚み2.28cmで、質量は約95g。4GBのメモリを内蔵し、約1200枚の写真を撮れる。電池は内蔵式のリチウムイオンバッテリーでUSB充電に対応し、満充電から約200枚の写真を撮れる。

レンズ真下にシャッターボタンがあり、これを押すと撮影できる。レンズ先端より約10cm~∞まで合うパンフォーカスなので、ピント合わせは不要。当然、ズーム機構も持たない。スマートフォンとWi-Fi接続して対応アプリを使えば、リモート撮影も可能だ

 で、THETAでの撮影だが、方法は2種類ある。ひとつはTHETA本体のシャッターボタンを押下しての撮影、もうひとつはスマートフォンとWi-Fi接続してのリモート撮影(後述)となる。

 それと、THETAで撮った写真を見る方法だが、2パターンある。ひとつは、Wi-Fi経由でスマートフォンへ写真を転送し、対応アプリで見る方法。もうひとつは、USB接続でPCへと写真を転送し、専用アプリで見る方法となる。

THETAで撮った写真をPC用ソフト「RICOH THETA for Windows」で閲覧している様子。どの方向でも自由に見られる。ホイールで画角調節(映像の拡大縮小)も可能
「RICOH THETA for iPhone」アプリを使っている様子。THETAとWi-Fi接続して写真を端末に転送したり、リモート撮影が可能。もちろん写真を閲覧でき、ピンチインアウト操作で画角調節も可能
「Photosynth」アプリを使っている様子。本来の機能のほか、THETAとWi-Fi接続しての画像転送、閲覧、リモート撮影に対応している

 専用アプリは、PC用として「RICOH THETA for Windows」および「RICOH THETA for Mac」があり、スマートフォン用としてiOS対応の「RICOH THETA for iPhone」「Photosynth」がある。Android向けアプリは年内に提供予定とのこと。

スマートフォンとWi-Fi接続

 THETAでどんな写真が撮れて、どんなふうに閲覧できるのかは、製品紹介ページの下のほうにあるギャラリーを見て欲しいが、とりあえず何を撮っても愉快っす。シャッターボタンひと押しで全天球イメージが撮れて、全天球イメージが持つ情報量をたっぷり楽しめる。これは手軽であり楽しい。

クルマの中で撮影。車内を自由に見回せる。中央下はTHETAを持つ手
食事風景をパチリ。一度の撮影で、テーブルを囲む全員の顔を写せる
給油中に撮ってみた。ライフログ的に撮りまくっても楽しめると思う
アーケードを歩きつつ撮影した。腕を上げて撮るのは若干恥ずかしい
打ち合わせ風景を1枚。端末があればその場ですぐ閲覧し盛り上がれる
意味なく夜の駐車場付近を撮影。暗いとノイズが増えてイマイチかも!?

 画質は、ハッキリ言ってトイカメラのそれに近い。ノイジーだし、ディテイルも潰れがちだ。キレイとは言えない。が、360度自由自在に閲覧できるので、写真としての臨場感は高い。いや、写真というより、その空間に居るような感覚になれて、非常に楽しい。

 カメラとして残念なのは、THETA単体で撮ると、必ず撮影者とその手が写り込んでしまうこと。THETA本体を持って、THETAのシャッターを押す必要があるからですな。

 しかし、スマートフォンとWi-Fi接続すれば、THETAのシャッターをリモートで切れるようになる。スマホがシャッターボタンになる感じ。無線遠隔操作で、やや遠くに置いたTHETAのシャッターを切れるのだ。

iPad miniにインストールした「RICOH THETA for iPhone」からTHETAをリモート操作しているところ。中央の「θ」マークがシャッターボタンだ。露出補正もできるようになる。撮影直後、THETA内で画像処理が行われるようだ
画像処理に次いで、THETAからiPad miniに画像が自動転送される。転送は10秒程度で終わり、撮った全天球画像が表示される。アプリから、カメラ内の画像およびアプリ内の画像をサムネイル形式で一覧でき、それぞれの写真を自由に動かしながら閲覧できる

 リモート撮影では、撮影者が姿を隠すことができたり、THETAをどこかに置いたり取り付けたりしての撮影が可能になるので、全天球イメージの撮影幅がグッと広がる。以下にその作例を掲載してみたい。

誰も居ないトイレを撮影。THETAのレンズは空中/目の高さあたりにある
トイレの写真は、別売をストラップ用アタッチメントと釣り糸を使い、THETAを天井から吊ってリモート撮影を行ったのであった
クリップで車内にTHETAを固定して、リモート撮影
テーブルの上にTHETAを自立させてのリモート撮影
クリップで猫の寝床にTHETAを固定し、リモート撮影
テーブルの上にTHETAを固定して、リモート撮影した

 THETAを置いたり固定したりしてリモート撮影すれば、撮影者やTHETAを持つ手を写らなくすることができる。ただ、個人的には、THETAのシャッターをリモートで切るための専用リモコンもあって欲しかったように思う。THETAとスマートフォンなどのWi-Fi接続は容易ではあるが、THETA専用リモコンがあれば、さらに手軽にリモート撮影できると思うからだ。

発展途上だが、非常におもしろい♪

 THETAを使っていて思うのは、瞬間の記録としての写真のおもしろさだ。フツー、デジカメって「これを撮ろう」と思ってフレーミングを決めたりするじゃないですか。THETAは「今撮ろう」だけで、撮ると「周囲が全部写ってしまう」。これがおもしろい。

 要はその瞬間の、THETAを取り巻く全てが写る。ので、まったく意識も何もしていなかった存在が映り込む。THETAによる全天球イメージは、「この瞬間に、コレとコレとコレと、さらにこんな状況まで共存していたのだ」ということがわかる。それは、いつもは意識することも後から確認することもできないことで、写真からの発見が多くて楽しい。

 これで動画が撮れたりしたらスゴいなあ、とか思うわけだが、どうなんでしょうね。そのうち「MOVIE THETA」みたいなモノが出てくるんでしょうか? ぜひ出て欲しい♪

 さておき、そんな感じのTHETA。レンズが露出してて傷が付くかも~的な不安があったり、それ以前にミョーに高価だったり、あるいは前述のとおり画質がイマイチだったりもする。まだブラッシュアップの余地があるカメラだとは思う。

 だが、THETAで体験できることはそれらを些細に思わせるほど大きいし、インパクトがある。このテの映像が好きな方なら、きっと楽しめると思うので、機会があればぜひ一度触れてみてほしい。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。