スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」
周囲360度をワンシャッターで撮れるデジカメ
(2013/11/18 06:00)
周囲360度をワンシャッターで撮れるデジカメ
2013年9月5日に発表されたリコーの「THETA (シータ)」。全天球イメージを一度のシャッター操作だけで撮れるということで、一部で超大きな話題になったデジタルカメラだ。
しかし「日本での発売は未定」とのアナウンス。「えーっお願い売って~頼む~絶対買うから~」とか思った人が続出した。何を隠そう俺もそのひとり。だが10月末にめでたく国内発売が決定し、「イーヤッハァ~キたぜシータ!! パズー!! バルス!! 古っ!! ってか絶対買うし!!」と考えた次の瞬間、光と同等とも思える速度でポチッと予約したのであった。
前述のとおり、THETAでは1度のシャッターで全天球イメージが撮れる。「全天球イメージ」って初めて聞いた言葉なんですけど、前後左右上下360度全ての視野ということのようだ。つまりTHETAで撮ると、THETAのレンズ周囲にある風景を全部収めた写真が撮れる。
こういう写真はこれまででも撮影できた。容易な方法としてはMicrosoftの「Photosynth」の利用だ。iOS用アプリなどもあって、スマートフォンを使って手軽にパノラマ写真の撮影ができた。
が、手軽と言っても、複数枚の写真からパノラマ写真を合成しているので、何枚も写真を撮る必要があった。少々手間がかかるんですな。また、撮影のタイミングが異なる写真を合成するため、動いているものがあるとそれが移動してしまったり、何度も写り込んだりと、風景として辻褄が合わないものになったりもした。
でもTHETAなら、一度のシャッターで全天球イメージが撮れる。手間がかからないし、風景写真としての整合性も保たれる。これは素敵!! と、このテの写真が好きな人が思ったりして、大きな話題となったTHETAなんですな。
てなわけで以降、THETAの機能や使用感などをレポートしてみたい。が、結論から言ってしまうと、コレ、スゲくおもしろいっす♪ ハッキリ言って「4万2000円前後」という実勢価格は高いと思うが、この手の写真が好きな人なら大いに喜べる操作感があり、期待に近い写真が得られると思う。
THETAはどうやって使う?
THETAは、基本的にピント合わせも露出補正も不要なフルオートデジカメ。スペックは製品紹介ページにあるが、スマートフォンなどとWi-Fi接続したときに露出補正できる程度の機能性しか持っていない。逆に言えば、シャッターボタンを押して撮るだけなので、誰にでも簡単に扱える。
なお、本体サイズは幅4.2×高さ12.9×厚み2.28cmで、質量は約95g。4GBのメモリを内蔵し、約1200枚の写真を撮れる。電池は内蔵式のリチウムイオンバッテリーでUSB充電に対応し、満充電から約200枚の写真を撮れる。
で、THETAでの撮影だが、方法は2種類ある。ひとつはTHETA本体のシャッターボタンを押下しての撮影、もうひとつはスマートフォンとWi-Fi接続してのリモート撮影(後述)となる。
それと、THETAで撮った写真を見る方法だが、2パターンある。ひとつは、Wi-Fi経由でスマートフォンへ写真を転送し、対応アプリで見る方法。もうひとつは、USB接続でPCへと写真を転送し、専用アプリで見る方法となる。
専用アプリは、PC用として「RICOH THETA for Windows」および「RICOH THETA for Mac」があり、スマートフォン用としてiOS対応の「RICOH THETA for iPhone」と「Photosynth」がある。Android向けアプリは年内に提供予定とのこと。
スマートフォンとWi-Fi接続
THETAでどんな写真が撮れて、どんなふうに閲覧できるのかは、製品紹介ページの下のほうにあるギャラリーを見て欲しいが、とりあえず何を撮っても愉快っす。シャッターボタンひと押しで全天球イメージが撮れて、全天球イメージが持つ情報量をたっぷり楽しめる。これは手軽であり楽しい。
画質は、ハッキリ言ってトイカメラのそれに近い。ノイジーだし、ディテイルも潰れがちだ。キレイとは言えない。が、360度自由自在に閲覧できるので、写真としての臨場感は高い。いや、写真というより、その空間に居るような感覚になれて、非常に楽しい。
カメラとして残念なのは、THETA単体で撮ると、必ず撮影者とその手が写り込んでしまうこと。THETA本体を持って、THETAのシャッターを押す必要があるからですな。
しかし、スマートフォンとWi-Fi接続すれば、THETAのシャッターをリモートで切れるようになる。スマホがシャッターボタンになる感じ。無線遠隔操作で、やや遠くに置いたTHETAのシャッターを切れるのだ。
リモート撮影では、撮影者が姿を隠すことができたり、THETAをどこかに置いたり取り付けたりしての撮影が可能になるので、全天球イメージの撮影幅がグッと広がる。以下にその作例を掲載してみたい。
THETAを置いたり固定したりしてリモート撮影すれば、撮影者やTHETAを持つ手を写らなくすることができる。ただ、個人的には、THETAのシャッターをリモートで切るための専用リモコンもあって欲しかったように思う。THETAとスマートフォンなどのWi-Fi接続は容易ではあるが、THETA専用リモコンがあれば、さらに手軽にリモート撮影できると思うからだ。
発展途上だが、非常におもしろい♪
THETAを使っていて思うのは、瞬間の記録としての写真のおもしろさだ。フツー、デジカメって「これを撮ろう」と思ってフレーミングを決めたりするじゃないですか。THETAは「今撮ろう」だけで、撮ると「周囲が全部写ってしまう」。これがおもしろい。
要はその瞬間の、THETAを取り巻く全てが写る。ので、まったく意識も何もしていなかった存在が映り込む。THETAによる全天球イメージは、「この瞬間に、コレとコレとコレと、さらにこんな状況まで共存していたのだ」ということがわかる。それは、いつもは意識することも後から確認することもできないことで、写真からの発見が多くて楽しい。
これで動画が撮れたりしたらスゴいなあ、とか思うわけだが、どうなんでしょうね。そのうち「MOVIE THETA」みたいなモノが出てくるんでしょうか? ぜひ出て欲しい♪
さておき、そんな感じのTHETA。レンズが露出してて傷が付くかも~的な不安があったり、それ以前にミョーに高価だったり、あるいは前述のとおり画質がイマイチだったりもする。まだブラッシュアップの余地があるカメラだとは思う。
だが、THETAで体験できることはそれらを些細に思わせるほど大きいし、インパクトがある。このテの映像が好きな方なら、きっと楽しめると思うので、機会があればぜひ一度触れてみてほしい。