スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

安くて手軽なドキュメントスキャナ
キングジム「スタンドスキャナ デスクショット DK800」

安くて手軽なドキュメントスキャナ

 2013年11月っていうか今月頭に発表されたキングジムの「スタンドスキャナ デスクショット DK800」(以下、デスクショット)。机上に置いた紙資料などを手軽に読み取れるスキャナで、メーカー価格1万5540円という点も目を引く製品だ。
 デスクショットの発売日は2013年11月29日で、今週末。だが、発売前の実機を試用することができたので、今回はこのスキャナの機能や使用感などをレポートしてみたい。

キングジムの「デスクショット」。机上に立てて設置する棒状のドキュメントスキャナで、USB給電で動作する。メーカー価格は1万5540円。Windows 7/8に対応する

 デスクショットは可動部分のないスタンド型スキャナ。棒状の本体の頂点近くにある撮像素子で、机上に置いた書類などを撮影(スキャン)できる。紙書類などの電子化を手軽に行えるドキュメントスキャナという位置付けですな。
 デスクショットを使うときのスタイルは、以前にレポートしたPFUの「ScanSnap SV600 (FI-SV600)」と似ている。デスクショットもSV600も、机上に書類をポンと置いてサクッとスキャンできるあたりの使い勝手も似ている。

 のだが、両者は明らかに別モノ。スキャンできる対象も画質も全然違うのであり、ハッキリ言えば「デスクショットは画質が高くない」のである。ので、ひとつの結論から言えば、デスクショットは原稿を高品位で保存するのに向かないし、自炊には全然向かない。「スキャンしてどうにか読めればいいや」という要望を満たす程度の解像力しかないと思う。

 しかしそういった特性を理解して使えば、けっこー役立つし非常にお手軽なスキャナになる。値段も安く、現在1万3000円前後で予約を受けているショップも少なくない。てなわけで以降、画質はそーんなに期待できないものの、けっこー役立つ実用性能や手軽さなどを中心に、デスクショットの使用感などをレポートしてみたい。

デスクショットはどう使う?

 まずデスクショットの使い方だが、とても簡単。本体を机上に立ててPCとUSB接続し、デスクショット前方にスキャンしたい対象を置き、PC上の専用ソフトからスキャン(撮影)操作をするだけだ。PCとデスクショットはUSB接続し、デスクショットはUSB給電で機能する。A4サイズ程度のドキュメントをスキャンできる。

PCとデスクショットをUSB接続し、専用ソフトを使って机上に置いた原稿をスキャンする。スキャンした原稿は専用ソフトにより歪みが自動補正できたり、マーカーで囲んだ部分だけスキャンすることができる
スキャン後、専用ソフト上で色や明るさの調節やトリミングを行える。また、PDF/PNG/JPEGの形式で保存できる。画像サイズを小さくした縮小版での保存も可能だ

 てな感じ。非常にシンプルな専用ソフトを操作するだけなので、迷わず使える。ちなみにデスクショットは、6.5×7.8cmの面積があれば置けて、高さは高さ38.6cm。本体前方の机面は、スキャンするときのためある程度広く空けられる必要はあるが、それでもあまり場所を取らずに使えるスキャナと言えよう。

 ちなみに、1回のスキャンにかかる時間は、マウスポインタを合わせてのピント合わせ操作~撮影~保存までで、だいたい10~15秒程度かかる。デジカメのように一瞬で撮影が済む、というわけではない。

 デスクショットは棒状本体の最上部付近に800万画素CMOSセンサーカメラを内蔵し、それで原稿を撮影することでスキャンしている。スキャン後に専用ソフト上で歪みを補正するなどの処理も行える。で、最終的に得られるスキャン結果だが、前述のとおりその画質はあまり高くはない。具体的に、A4サイズの書籍をスキャンしたものを見てみよう。

A4サイズの書籍の1ページをスキャンしてみた。専用ソフト上での補正は行わず、PNG形式で保存。中央と右はそのPNG画像の等倍表示だ。中央がページ上付近でカメラに近い位置、右がページ下付近でカメラから離れた位置になる。カメラから離れると、解像感が少し失われる感じですな

 というイメージで、一般的なドキュメントスキャナと比べると、画質はよくないんですな。このケースの場合、書籍の本文の文字はまあ読めるレベルだが、ページ下の方はけっこーボヤケる感じ。また、図版やキャプションによっては判読できないこともある。

 ちなみに、このケースのスキャン結果を保存したところ、PDFとして保存するとオリジナルが2635KBで縮小版は696KB、PNGだとオリジナルが3089KBで縮小版が1122KB、JPEGだとオリジナルが599KBで縮小版が296KBとなった。もちろん、縮小版で保存すると画像サイズが小さくなるので、文字などがより読みにくくなる。

 てな感じなので、いわゆるドキュメントスキャナを想像していると、「デスクショットは画質が悪すぎて使えない」ということになるだろう。この画質で自炊とか有り得ませんな。

 しかし、「まあだいたい読めればいい」というくらいなら、この画質でもけっこー使えるのではなかろうか。デスクショットの前に原稿を置いて撮影(スキャン)操作をすれば、10~15秒程度でスキャン結果が得られる。そして実勢(予約)価格は1万3000円前後。「用途次第でけっこー使える安価なお手軽スキャナ」と捉えるのがいいように思う。

読めればOKなら、かなりイケる♪

 さて、そんな画質のデスクショット、どんな用途になら向くのか、いろいろと試してみたので、以下にそのスキャン結果を並べてみたい。それぞれ、専用ソフトでのスキャン直前の様子、スキャン直後の様子、それから画像をPNGで保存してドットバイドットで表示したものだ。

【名刺】
まずは名刺でトライ。細かな文字まで視認できてまずまず良好な結果になった。このデータをOCRするのはツラいかもしれないが、十分実用レベルですな
【クレジットカード】
クレジットカード(ETCカード)をスキャンしてみた。ヘンに反射もせず、良好な結果に。有効期限の数値なども問題なく視認できた
【名刺とクレジットカード】
名刺とカードを同時に読み取ることもできた。これは認識枠が自動の設定だが、ドキュメントモードで認識枠を手動で出せば、より発展的な使い方もできそうだ
【宅配便伝票】
宅配便の伝票をスキャン。細部までしっかり読めるクオリティだ。こういう伝票を逐一電子化していくような使い方も現実的ですな
【付箋】
縦横ほぼ7.5cmの付箋をスキャン。バッチリですな。無問題
【新聞】
新聞の一部をピンクのマーカーで囲んでスキャン。マーカーモードにすると、マーカーで囲まれたエリアのみスキャンされる。文字の細部は潰れ気味だが、文章を読んでいけるレベル。ちなみに、マーカーはフリーハンドで書き込んだ

 てな感じ。これ以外にも「デスクショット向けの書類」はいろいろあると思うが、大雑把な感触を言えば「A5以下程度のサイズのドキュメントならどれも実用レベルのスキャン結果が得られる」と感じた。もちろん「とりあえずドキュメント上の情報を目で追って読めればいい」というスタンスからの評価ではあるが。

納得できるコストパフォーマンス

 デスクショットを快適に使うにはいくつかコツがある。簡単なことなんですけど、たとえば机面とドキュメントの色が似ないようにする(似た場合は下に何か敷く)とか、机の端や小物が映り込まないようにするとか、なるべくドキュメントを傾けないとか、ドキュメントの反りやシワは極力正すとか、そんな細々した事柄ですな。

 でも、そうできない場合でも、わりと手軽にドキュメントをスキャンできる方法がある。方法ってより、フツーに実装されている機能なのだが、専用ソフトでの「認識枠」を「手動」で設定するという方法である。デスクショットでは基本的に「スキャン対象を自動的に認識して四角くスキャンする」のだが、その機能が働きにくい場合、上記のような工夫をせず、いきなり「手動」で「枠認識」をするとスムーズに使える。

たとえば、デスクショットの視野内に収まらないようなドキュメント。ドキュメント中の一部をスキャンできればいいが、スキャンする枠を自動的に認識してくれない。このような場合、迷わず「認識枠」を「手動」で設定するといい
枠を手動設定して「このエリアをスキャンしてネ」と指示するわけですな。こうすれば、どんなカタチのドキュメントでも、その全部や一部をスキャンできる
こちらは白い机面に置いた白いハガキ。これも枠を自動認識してくれない。この場合も「認識枠」を「手動」で設定すれば、キレイにスキャンできる

 てな感じで、小さな工夫でけっこー幅広く応用できるデスクショット。シンプルなツールだけあって、アイデアや工夫次第でアレコレ活用できますな。また、実勢(予約)価格が1万3000円前後であることを考えると、納得できるコストパフォーマンスだと感じられる。本格的なドキュメントスキャナを導入するほどの必要性はないが、毎日何枚か細々したドキュメントを電子化したい、みたいな人にマッチしそうなので、興味のある方はぜひ一度チェックしてみて欲しい。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。