法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

つながりやすさをアピールしたソフトバンク夏モデル発表会

 ソフトバンクは5月7日、2013年夏モデルの発表会「SoftBank 2013 Summer Collection」を催し、発表および発売済みのモデルを含め、合計9機種をお披露目した。毎回、テーマを掲げた発表会がおなじみのソフトバンクだが、今回は「スマホ時代のつながりやすさNo.1」と銘打ち、同社の『世界でもっとも素晴らしいモバイルネットワーク』を強くアピールする内容だった。発表会の詳しい内容については、すでに本誌レポートで解説されているので、そちらを参照していただきたいが、ここでは筆者が見た今回の発表内容と捉え方などについて、解説しよう。

「つながる」ことに対する評価

 ソフトバンクは2006年に英ボーダフォンの日本法人を買収し、携帯電話業界に参入して以来、さまざまな話題を提供してきた。月額980円のホワイトプラン、端末の割賦販売、数十色のカラーバリエーション、iPhoneの販売、Wi-Fiサービスの整備、Twitterへの注力、ウィルコムの子会社化、イー・モバイルの買収など、業界内を驚かせるトピックを次々と発信し、大きな影響を与えてきた。フォトフレームやモバイルWi-Fiルーター、みまもり端末など、新しいジャンルの端末に積極的に取り組みながら、近年はiPhoneやiPadをはじめとしたスマートフォン及びタブレットの販売で市場をリードし、携帯電話事業者の好調ぶりを示す1つの指標である純増シェアの競争でもトップを走り続けている。

 これだけの結果を残し、市場と業界にインパクトを与えながら、なかなかイメージを変えることができていないのがソフトバンクのモバイルネットワークに対するイメージ、つまり、「つながる」ことに対する評価だ。ここでは見出しとして「『つながる』ことに対する評価」という言葉を書いたが、実は筆者はこれとまったく同じ言葉を約1年前の2012年夏モデルの発表会の記事でも書いている。そう、1年前と言えば、ソフトバンクが念願の900MHz帯の免許を取得し、いよいよ2012年7月25日からの「プラチナバンド」のサービス開始を控え、2012年夏モデルの全機種対応を発表したタイミングだった。

 あれから1年が過ぎたが、今回の発表会でもメインのテーマとして、「つながりやすさ」が掲げられ、その説明に多くの時間が割かれた。詳しい内容については、本誌記事を参照していただきたいが、ソフトバンクのユーザーのモバイルトラフィック量がこの5年間で60倍に拡大したことの紹介に始まり、昨今、インターネット上で話題になることが多い“パケ詰まり”について触れ、これを未然に防ぐ策として、ソフトバンクとしては世界に先駆けて、自社のネットワークを電話時代の仕様からスマートフォン時代の仕様へと設計を変えてきたことなどが紹介された。

 スマートフォン時代のネットワークの基本思想として、ソフトバンクでは小セル化を推し進め、これにWi-Fi、イー・モバイルの買収によって実現したダブルLTEを組み合わせることで、世界最強のネットワークを構築しているという。Wi-Fiについては主要3事業者でもっとも多くのスポットを設置する一方、Wi-Fiスポットに接続するときの認証をWeb方式からSIMカード方式に改め、認証時間を大幅に短縮したり、不安定なWi-Fiの弱い電波を制御することで、安定したWi-Fi通信を実現しているそうだ。さらに、小セル化についてもSFN(Single Frequency Network)によるクラウド基地局の運用を始めたことも紹介された。

 そして、月間6億件の通信ログの解析から各社のスマートフォンでのパケット通信の接続率を算出することができ、その結果として、自社のパケット接続率がもっとも優れていたという調査結果が示された。音声通話の接続率についても他社をリードし、各社が実施するさまざまな調査でも自社がもっとも高い評価を受けていることも合わせて紹介された。これらの一連の解説は、今回の発表会のプレゼンテーションで、約20分を超える時間を割いていたことからもその並々ならぬアピールの強さがうかがえる。

 このプレゼンテーションの内容をそのまま受け入れれば、ソフトバンクのモバイルネットワークはかなり優れているという印象が得られそうだが、読者のみなさんはどう受け取っただろうか。あまり答えを限定してしまうのは好ましくないが、もしかしたら、これだけのアピールを受けてもまだまだ疑心暗鬼に思う人がいるのではないだろうか。

 筆者は以前にも記事や番組などで指摘したが、こうしたネットワークに対する評価は、一朝一夕に決まるものではなく、さまざまな調査で示される結果も1つの目安に過ぎないと考えている。特に、携帯電話は多くの人が一度に使うネットワークであり、電波を使ったワイヤレス通信であるため、複合的な要因で調査の結果が大きく左右される可能性がある。たとえば、どこかで事故が起きれば、交通機関が影響を受け、多くの人が電話やメールを使うだろうし、突然の雷雨など、天候の要素が大きな影響を与えることもある。もしかしたら、ゆるキャラが渋谷の街を歩いていて、それを見かけた人が写真を撮って、一斉にSNSに投稿したことで、一時的にそのエリアのトラフィックが増えてしまうかもしれない。つまり、こうした不確定な要素が多い中で、調査を取ってもそれは傾向の1つでしかなく、絶対的な答えにはならないということだ。つながりやすさをはじめ、モバイルネットワークに対する総合的な評価は、一人ひとりのユーザーの声の積み重ねによって決まるものであり、時間を掛けて、ユーザーの信頼を勝ち取っていくしかない。つまり、調査だけでなく、ユーザーから「ソフトバンクはつながるよ」という声が数多く聞かれるようにならなければ、評価は変わっていかないということだ。

 では、ソフトバンクのネットワークがつながらないのかというと、筆者自身の印象から言わせてもらえれば、「ちゃんとつながるし、速いところでは本気で速い」という答えになる。もう少し具体的に書くと、筆者はこの数カ月、東京以外に石川や福井、大阪、福岡、鹿児島、沖縄などに出かけたが、場所によって、多少の差はあるものの、筆者のソフトバンク端末(AQUOS PHONE Xx 203SH)ではベンチマークソフトで40Mbpsを超えるパフォーマンスを記録した場所もあった。ただ、注意しなければならないのは、この結果も筆者1人のユーザーの1つの結果でしかなく、この記事を読んでいる読者の環境によっては「全然、つながらない」「速度が遅い」といった感想が出てきてもまったく不思議ではない。それはモバイルネットワークの特徴の1つであり、それを理解せずに、やれどこが速いとか、何がつながるだとか騒いでもあまり意味をなさない。

 また、今回のプレゼンテーションでも触れられているが、ソフトバンクのモバイルネットワークを語る上で、話を難しくしているのが周波数の追加割り当てや一連の買収によって、複数の通信方式と周波数、機種が混在している点だ。ソフトバンクは元々、2.1GHz帯でW-CDMA(以下、HSDPAなどを含む)方式によるサービスを提供し、PDC方式の2Gサービス終了に伴い、1.5GHz帯でもW-CDMA方式のサービスを開始した。これらに加え、2012年7月からはプラチナバンドと呼ばれる900MHz帯の運用を開始している。昨年の秋からは2.1GHz帯の一部をFDD-LTE方式に切り替えた「SoftBank 4G LTE」、旧ウィルコムからWireless City Planningに受け継がれた2.5GHz帯のAXGP方式(TD-LTE 100%互換)による「SoftBank 4G」をそれぞれ提供している。そして、今年3月からは買収したイー・モバイルの1.7GHz帯のW-CDMA方式とLTE方式も利用できるようになった。

 他社も複数の周波数帯と通信方式をサポートしているが、ソフトバンクの場合、機種によって、対応する周波数や通信方式が違い、ユーザーからは非常にわかりにくくなっている。たとえば、2.1GHz帯でFDD-LTE方式を利用する「SoftBank 4G LTE」はiPhone/iPadのみがサポートし、2.5GHz帯でAXGP方式を利用する「SoftBank 4G」は2012年冬モデル以降のAndroidスマートフォンで利用できる。1年前にサービスが開始されたプラチナバンドは、iPhone/iPadと2012年夏モデル以降のAndroidスマートフォンの両方が対応しているが、2012年10月に発売されたモバイルWi-Fiルーター「ULTRA WiFi 4G 102HW」、今回の夏モデルで発表された「Pocket WiFi SoftBank 203Z」も対応していない。つまり、同じソフトバンクと契約した端末を利用していてもiPhoneの「LTE」という表示とAndroidスマートフォンの「4G」という表示では、つかんでいる周波数帯も通信方式もまったく別々ということだ。実用上はそれほど気にすることではないが、「つながる」「つながらない」という話をするのであれば、これらの違いはきちんと区別して、考える必要があるだろう。

SoftBank 4Gのラインアップを拡充

 これも昨年の夏モデル発表時とまったく同じことを語ることになるが、ソフトバンクはNTTドコモやauに対抗するべく、携帯電話業界に参入して以来、発表する機種数やカラーバリエーションで他社に負けず劣らずの充実したラインアップを展開してきた。しかし、スマートフォン時代に入り、主力をiPhoneに据えたこともあり、徐々にラインアップを絞り込んできている。

 今回の発表では発表済み及び発売済みの機種も含め、Androidスマートフォン6機種(Disney Mobile on SoftBank、1機種を含む)、モバイルWi-Fiルーター1機種、みまもり端末2機種が夏モデルとして、ラインアップされた。こう書いてしまうと、機種数も少なく、面白みがないと捉えられてしまうかもしれないが、個人的にはそれぞれに個性がはっきりとした「粒ぞろい」のラインアップだと見ている。

 個々の機種については後述するが、スマートフォンについてはハイスペックの「AQUOS PHONE Xx 206SH」「ARROWS A 202F」を筆頭に、ボリュームゾーンを狙うコンパクトモデルの「AQUOS PHONE ss 205SH」、世界最軽量の防水スマートフォン「DIGNO R 202K」、シニア世代のユーザーを狙った「シンプルスマホ 204SH」を揃え、限られた機種数ではあるものの、しっかりとターゲットを明確にしたわかりやすいラインアップとなっている。メーカー別ではスマートフォンでシャープが3機種ともっとも多く、モバイルWi-Fiルーターとみまもり端末でZTEが3機種、富士通と京セラが1機種ずつという構成だ。

 また、今回の夏モデルはフィーチャーフォンからの移行だけでなく、スマートフォンの普及が始まってから、ある程度の期間が経っていることもあり、スマートフォンからの買い換え需要も増えると予想される。時期的に考えれば、2010年冬モデルから2011年夏モデル、2011年冬モデルあたりまでが視野に入っってくるだろう。これらの時期のユーザーは2.1GHz帯及び1.5GHz帯のW-CDMA方式に対応した「SoftBank 3G」を利用しているはずだが、これらのユーザーが今回の「SoftBank 4G」に機種変更する際、1つ注意しておくべきことがある。

 以前、Impress Watch Videoの「ケータイしようぜ!!」でも紹介した話だが、SoftBank 3GのスマートフォンからSoftBank 4Gのスマートフォンに移行すると、SIMカードが変更されるため、基本的にはこれまで使ってきたSIMカードが回収され、使えなくなってしまう。そこで、一部の販売店では「SIMカードを抜いてしまうと、お困りでしょうから、別途、旧機種用にSIMカードをご用意しますよ」と持ちかけることがある。勘のいい読者のみなさんなら、もうおわかりだろうが、この『旧機種用のSIMカード』というのは特別なSIMカードではなく、新たな回線契約をすることで発行されるSIMカードであり、端末に挿して利用すれば、当然のことながら、料金が発生する。1つ間違えば、詐欺まがいとも受け取れるような手法だが、新規契約獲得のため、販売店がこうした話を持ちかけることがあるのだ。この話は他人からの伝聞だけでなく、筆者自身がこの春、機種変更をする際に体験した話だ。「そんなこと言うなんて、どこかアヤシイ店で機種変更したのでは?」と考えるかもしれないが、筆者が話を持ちかけられたのは、おそらくほとんどの読者がよく名前を知っているであろう有名な大手家電量販店だ。

 すべての販売店がこんなことをやってるわけではないのだろうが、新規契約のインセンティブが大きいからなのか、販売店へのプッシュが強いのか、どうもソフトバンクには販売に関連するトラブルが散見され、そういったことの積み重ねがソフトバンクというブランドの信頼性や前述の「つながりやすさ」に対する手厳しい評価にもつながっているように見受けられる。ユーザーとしてはネットワークに手を入れ、魅力的な端末をラインアップしてもらうことも重要だが、ソフトバンクとして、「お客さんの信頼を勝ち取る」ということの重要性をもう一度、よく考えるべきではないだろうか。

SIMフリー版iPhone/iPadへの期待

 そして、もう1つ質疑応答でも盛り上がったSIMロック解除について、少し触れておきたい。SIMロックについては改めて説明するまでもないが、各携帯電話事業者が販売する端末に、他社のSIMカードを挿しても利用できない状態を指す。2007年に公表された「モバイルビジネス活性化プラン」では2010年をメドにSIMロック解除の義務化を検討するとされたが、2010年に携帯電話事業者などにヒアリングが行われた結果、各携帯電話事業者が利用者の要望を前提に、SIMロックを自主的に解除するという方針で一定のコンセンサスが得られたとされている。

 これを受け、NTTドコモでは2011年4月以降に発売された機種については、3150円の手数料を支払うことで、SIMロックの解除を受け付けている。現在はソフトバンク傘下となったイー・モバイルも一部のモバイルWi-FiルーターなどをSIMロックが設定されていない状態で販売している。これに対し、ソフトバンクは「SoftBank 008Z」「SoftBank 009Z」「STREAM SoftBank 201HW」の3機種でしかSIMロックの解除に応じておらず、今後、iPhoneなどでSIMロックの解除を受け付ける意思があるかどうかなどの点について、質問が出たわけだ。

 孫正義代表取締役社長としては、SIMロックを解除すると、端末価格が高くなるため、ユーザーからの要望はほとんどなく、iPhoneについても世界的に見て、ごく一部でしかSIMロックを解除した状態で販売していないと答えていた。

 しかし、実状を見る限り、iPhoneのSIMフリー版についてのニーズは非常に高く、SIMフリーの状態で端末が購入できる米国や欧州などに出かけたとき、iPhoneやiPadを購入して帰るケースは少なくない。かく言う筆者も、SIMフリー版のiPhoneやiPadを海外で何度となく購入し、現在も国内で利用している。ソフトバンクの言い分としては、ユーザーからの要望が少ないとのことなので、今後、SIMロック解除を希望するユーザーとしては孫社長お得意のTwitterなどでメッセージを伝えていくしかないが、ソフトバンクとしても虎の子のiPhoneやiPadのSIMロック解除にそう易々と応じるとは考えにくい。

 では、現実的にiPhoneのSIMフリー版を利用するには、輸入や海外旅行のお土産に期待するしかないかというと、必ずしもそうではない。どうせ働きかけるのであれば、ユーザーとしてはアップルに対し、国内でもSIMフリー版のiPhoneやiPadを堂々と売って欲しいと訴えていくべきだろう。たとえば、アップルストアでSIMフリー版のiPhoneを購入し、そこにソフトバンクのSIMカードを挿しても利用できるようにするわけだ。

 現在、ソフトバンクではSIMフリー版のiPhone 5を持ち込み、SIMカードだけを発行する契約を認めていないとされているが、前述のような「アヤシイSIMカード契約」を持ちかけるのであれば、この対応ができないわけでもないだろう。さらに付け加えるなら、ソフトバンクはiPhoneやAndroidスマートフォンなど、ユーザーが契約する端末やサービスによって、別々のSIMカードを発行し、同一キャリア内SIMロックのような状況を生み出しているが、これも改善を検討するべきではないだろうか。

 本来、モバイルビジネス活性化プランでは端末とサービスの販売を分離し、それぞれに公正な競争を促すとしてきたのだから、メーカーも携帯電話事業者もそのことをしっかりと認識し直す必要があるだろう。また、最近、NTTドコモがiPhoneを扱うかどうかが新聞などで騒がれているが、この件についてもアップルがSIMフリー版のiPhoneやiPadを販売すれば、利用できる機能に多少の制限があるものの、多くのユーザーのニーズは十分に満たせるはずだ。SIMフリーについては、また別の機会に触れたいが、ユーザーとしては今後、アップルやソフトバンクをはじめ、各携帯電話事業者にしっかりと要望を伝え、各社の動向を注視していきたいところだ。

夏モデルとして12機種を順次発売

 さて、ここからは今回発表されたソフトバンクの2013年夏モデルの印象と捉え方について、解説しよう。個々の製品の詳しい内容については、本誌のレポート記事を参照していただくとして、ここでは筆者がタッチ&トライで得た印象などを踏まえて紹介しよう。

AQUOS PHONE Xx 206SH(シャープ)

AQUOS PHONE Xx 206SH

 ソフトバンクのAndroidスマートフォンとしては、初のフルHD液晶に、業界初のフルセグ(地上デジタル放送)チューナーを搭載したフラッグシップモデル。5.0インチの液晶ディスプレイは、前モデルのAQUOS PHONE Xx 203SHで採用されたIGZO搭載液晶ではないが、同様に省電力性に優れたS-CG Silicon液晶を採用する。ボディは背面の角をラウンドさせ、持ちやすくした形状で、手に持った印象は従来モデルとほぼ同等か、少し幅が広い程度のレベルだ(正確なサイズは未定)。

 フルセグについては非常に美しく、動きもなめらかで、当然のことながら、ワンセグとの差は歴然としている。モバイル環境では内蔵アンテナを延ばして利用することになるが、同梱の卓上ホルダにアンテナ接続端子を付けることで、卓上ホルダにセットしたときは家庭内のアンテナから安定した映像を受信できるようにしている。フルセグの電波状態が良くないときは、カーナビゲーションのテレビ機能などと同じように、自動的にワンセグに切り替わるしくみが実装される予定だ。

 カメラのレンズもF値1.9とかなり明るく、暗いところでの撮影にも強い。PANTONE 200SHと同じように、音量キーが前面のタッチセンサーになっているところなどは、好みが分かれるかもしれないが、ソフトバンクの夏モデルでもっとも期待できるモデルだ。

ARROWS A 202F(富士通)

ARROWS A 202F

 昨年の夏モデル、冬モデルに続く、ARROWS A(エース)の第3弾。AQUOS PHONE Xxと共に、ソフトバンク初のフルHD液晶搭載、フルセグチューナー搭載のAndroidスマートフォン。富士通製端末ではおなじみの指紋センサーを背面に搭載し、プライバシー保護機能により、独自のNX!メールを使うことで、特定の相手からのメールを隠すといった使い方もサポートされる。本体には固定式の3020mAhの大容量バッテリーが内蔵され、富士通ならではのヒューマンセントリックエンジンによる省電力機能を活かすことにより、ライバルを意識した「2日以上」の連続使用を実現する。

 本体は薄さ9.8mmとなかなかスリムで、手に持った感触は男性向きのサイズ感であるものの、薄くて持ちやすいという印象だ。ブルーなどのカラーは背面がマット仕上げになっており、指紋などの汚れが付きにくい。RAMの2GBに対し、ROM(内蔵ストレージ)は最高クラスの64GBを搭載するなど、スペック的にも充実しており、もう1つのフラッグシップモデルとして、非常に期待できるモデルだ。

AQUOS PHONE ss 205SH(シャープ)

AQUOS PHONE ss 205SH

 約4インチのディスプレイを搭載し、幅60mmというコンパクトなボディにまとめられたモデル。背面全体をラウンドさせ、ボディ周囲も角を落とすことにより、女性などの手の大きくない人にも非常に持ちやすく、かわいいデザインに仕上げている。背面はシルキーマット仕上げで、指紋などが残りにくくなっているのも好印象だ。サイズ的にはコンパクトなモデルだが、スペック的には昨年の夏モデルのフラッグシップモデルとほとんど変わらないか、項目によっては今夏のフラッグシップモデルと同等レベルで、おサイフケータイやワンセグなどの日本仕様もすべてサポートするなど、かなりお買い得感の高いモデルとなっている。

 PANTONE 107SHに搭載された放射線測定機能が継承されているが、従来モデルよりも大きな新設計のセンサーを搭載することにより、測定時間を半分に短縮している。カラーバリエーションが5色と豊富で、幅広いユーザーにおすすめできるが、なかでもシルキーピンクやシャンパンゴールド、ホワイトなどはスマートフォンをはじめて持つ女性ユーザーにもおすすめできるモデルだ。

DIGNO R 202K(京セラ)

DIGNO R 202K

 世界最軽量94gを実現した防水スマートフォン。現在、販売されているスマートフォンの内、ハイエンドモデルは140~160g程度が主流で、コンパクトなモデルやスリムなモデルでも120gを切るのがやっとという状況の中、100gを大幅に切る軽量ボディを実現したのは、技術的にもかなりのインパクトを持つ。実際に手に持ったときの印象も中身が一部入っていないモックアップなのかと勘違いしてしまうほど、軽い。マグネシウム合金によるフレームと0.4mmの薄型ガラス、固定式の1800mAhのバッテリーなどにより、この軽さを実現している。

 京セラ製端末でおなじみのスマートソニックレシーバーを搭載しているため、本体前面はほぼフラットで、背面側はマット仕上げが採用されている。microSDメモリーカードが外付けなど、一部制約はあるが、おサイフケータイなどの日本仕様も一通り揃っており、非常に内容が充実したモデルだ。軽くて持ちやすいスタンダードなスマートフォンが欲しい幅広いユーザーにおすすめできるモデルだ。

Disney mobile onm SoftBank DM015K(京セラ)

Disney mobile onm SoftBank DM015K

 DIGNO R 202Kをベースにしたモデルで、背面にキャラクターのイラストが大きく描かれているのが特徴。イラストと言ってもキャラクターがそのままリアルに描かれているのではなく、ボディカラーに対して、うっすらと淡色で描かれ、光の加減で浮かび上がるようなイラストになっている。また、ディズニーのキャラクターをあしらったスマートフォンケースも購入者向けに提供される。ライブ壁紙と合わせれば、ひとつのキャラクターでまとめられたスマートフォンができあがる。ディズニーのキャラクターを存分に主張したいユーザーにおすすめだ。

Pocket Wi-Fi 203Z(ZTE)

Pocket Wi-Fi 203Z

 ソフトバンクの「SoftBank 4G(AXGP)」とイー・モバイルの「EMOBILE LTE」の両方が利用できる『ダブルLTE』対応のバイルWi-Fiルーター。モバイルWi-Fiルーターに搭載するバッテリーとしては最大クラスの約5000mAhの大容量バッテリーを搭載し、スマートフォンなどに給電するモバイルバッテリーとしても利用できる。ただ、その分、ボディサイズは大きく、102HWなどと比べても二周りほど大きい印象のボディとなっている。今回の展示はモックアップのみだったが、最終的な製品ではカラー液晶ディスプレイを搭載し、タッチキーで簡単な設定変更などをできるようにする予定。料金体系は発表されなかったが、現状のモバイルWi-Fiルーターの多くが月額3880円で利用できていることを考えれば、ほぼ同じ料金体系を採用してくることが期待される。

みまもりケータイ3(ZTE)

みまもりケータイ3

 子どもやシルバー世代向けの端末として、定着しているみまもり端末の最新モデル。通話とメールに機能を絞り込んだ端末で、今回のモデルはカラー液晶を搭載し、プラチナバンド対応、定型文による返信メール、音声を録音してのメールにも対応するなどの改良が図られている。速度検知機能や生活みまもり機能など、実際の利用シーンをよく考慮した機能も搭載されている。

みまもりGPS(ZTE)

みまもりGPS

 今回のタッチ&トライコーナーでは発売済みのみまもりGPSが展示され、クルマや重要書類を入れたカバンの追跡などに有効という事例が紹介されていた。最近、トヨタのハイエースやスバルのインプレッサなど、特定車種の盗難が話題になっているが、こうした端末の盗難時の追跡用としても非常に有効だろう。何万円もする高価なイモビライザー(盗難防止装置)を付けるほどではないが、愛車や会社の車両などを安全かつ手軽に管理したいユーザーにもおすすめだ。

シンプルスマホ 204SH(シャープ)

シンプルスマホ 204SH

 スマートフォンに興味を持つシニア世代のユーザーのためのスマートフォン。タッチパネルの誤操作を防ぐための「かんたん押し感タッチ」をはじめ、縦方向のみのスクロールでわかりやすく表現した「シンプルラインホーム」、電話とメールのハードキーを装備するなど、スマートフォンがはじめてのユーザーでも確実に操作できるように作り込まれている。Google Playには対応しないが、標準で搭載されている地図アプリはYahoo!地図アプリをベースに、文字サイズを大きく表示できるようにするなど、随所によく考えられた作り込みが見られる。単純に機能をシンプルにするだけでなく、ある程度の経験を持つシニア世代のユーザーにも満足できるモデルという印象だ。月額2980円の専用パケット定額サービスが契約できるため、安心して使うことができる。スマートフォンをはじめたいシニア世代のユーザーにおすすめのモデルだ。

粒ぞろいのラインアップをどう売っていくか

 さて、今回の発表会のプレゼンテーションを見てもわかるように、ソフトバンクが「つながりやすさ」に対して、非常に強いこだわりがあることは十分に理解できる。もちろん、NTTドコモやauなど、他の通信事業者にも同じようにこだわりがあるわけだが、それ以上に「ウチはつながるんだ!」という強い思いがソフトバンクからは伝わってくるプレゼンテーションだったと言えるだろう。

 昨年のプラチナバンドのサービスが開始されるとき、ソフトバンクとして、新しい帯域を得たことで「言い訳のできない」環境ができたことになり、今後はこれまでのようなエクスキューズが認められない状況になってくるという話を書いた。そして、本当にユーザーから「つながるようになったね」という声が上がってくることを期待したいとも書いた。今回のプレゼンテーションで示された各社の調査では、ソフトバンクがつながりやすいという結果が示されていたが、残念ながら、筆者が見ている限り、ユーザーから「つながりやすくなったね」という声が上がってきたという印象はあまりない。

 もし、ソフトバンクが十分にエリアを整備し、本当に『つながりすぎる』ほど、つながるようになっているのにもかかわらず、ユーザーからそういった声が上がってこないのであるとすれば、それはソフトバンクに対する信頼感やユーザーに対する姿勢が影響しているのではないだろうか。

 今回の発表会後の質疑応答と囲み取材では、前日に起きたネットワーク障害についての質問が出て、ある記者が「今回の障害が1時間58分だったのはたまたまですか?」と聞いたところ、孫社長は「たまたまです」と答えていたシーンがあった。実は、2時間を超える障害については、総務省に報告する必要があるのだが、孫社長はそういった報告をしなくても済む時間の障害だったと答えていたわけだ。

 ルールから考えれば、確かにこれはこれで問題がないのだが、社会インフラを担当する企業として、これが本当に正しい姿勢なのかどうかは、ちょっと議論の余地があるだろう。たとえば、実際に停止した時間は1時間58分だったが、「約2時間だった」と捉え、念のため、総務省に報告するという方法論もあるだろうし、逆に今度はそれを「スタンドプレーだ」と捉える向きもあるかもしれない。

 ただ、「1時間58分はたまたまですか?」に対し、「たまたまです」と答える問答を聞いてしまうと、どうしても「2時間を切ることを狙いましたね」と疑念を持ってしまう。これは記者とのやり取りの中の話だが、ソフトバンクに対してはこういった疑念が少なからず持たれているため、ユーザーの信頼を十分に得ることができず、結果的につながりやすさに対しての評価に結びついていないのではないだろうか。

 SIMロックに対する問答も同じことで、ソフトバンクとして、SIMロック解除に応じたくないことをユーザーからの要望が少ないということに置き換えてしまっているように見える。逆に、きっぱりと「ソフトバンクとしては、利益に影響が出るので、SIMロック解除には応じられない」という答えの方がすっきりするが、そういった潔い回答はなかなか出てこない。

 そして、こういった姿勢は販売の現場にも影響するようで、前述のような「アヤシイSIMカード」の発行のような事態が起きてしまう。機種変更時のアヤシイSIMカード発行は1カ月以上前のことなので、すでにそういった問題は解消されていることを願いたいが、やはり、街中のソフトバンクショップや家電量販店の店頭を見ていると、どうも歪みがたくさん残されているように見えてしまう。もちろん、これはソフトバンクに限ったことではなく、各社の異常なまでのMNP優遇施策などにもあきれるユーザーは多く、販売全般については携帯電話業界全体がもう一度、襟を正して、考え直す時期に来ているように見える。

 厳しい話が続いてしまったが、今回発表されたソフトバンクの2013年夏モデルは、機種数こそ少ないものの、どのモデルも明確な個性を持っており、しっかりとハマるユーザーにはハマる完成度の高いラインアップだという印象だ。今後、本誌では各製品のレビューや開発者インタビューなどを随時、掲載する予定なので、それらも合わせてチェックした上で、ぜひ自分ならでは1台を見つけていただきたい。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。