法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

Moto Modsで機能の拡張が楽しめるモトローラ「Moto Z2 Play」

 国内ではかつて各携帯電話事業者向けにさまざまな端末を供給してきたが、ここ1~2年はSIMフリー端末のラインアップを充実させてきたモトローラ。同社の主力モデルのひとつ「Moto Z」シリーズの第二世代モデルとなる「Moto Z2 Play」が国内向けに発売された。実機を試すことができたので、その仕上がりをチェックしてみよう。

モトローラ・モビリティ・ジャパン「Moto Z2 Play」、約156.2mm(高さ)×76.2mm(幅)×5.99mm(厚さ)、約145g(重量)。カラーはルナグレー(写真)、ファインゴールド、ニンバスをラインナップする

スマホでハードウェアの拡張を実現したMoto Mods

 スマートフォンにはさまざまな機能が搭載されている。一般的に、従来型の携帯電話に対し、スマートフォンは「ユーザーの利用に応じて、機能を追加できる」といった表現を使うことが多いが、これは改めて説明するまでもなく、「アプリを追加することで、機能が増える」という意味を表わしている。

 しかし、実際に追加できるのはソフトウェア的なものに限られ、ハードウェアを必要とする機能は、通常、追加することができない。たとえば、スマートフォンの初期から求められてきたものとして、おサイフケータイ(FeliCa)やTVチューナー(ワンセグ/フルセグ)、赤外線通信などが挙げられ、ユーザーは購入時にその端末がこれらの機能をサポートしているか、つまり、その機能を利用するためのハードウェアを搭載しているかどうかをチェックして、選んできたわけだ。これは日本仕様のためのハードウェアに限ったことではなく、カメラやバッテリー容量など、さまざまな要素について、端末選びの基本となってきた。

 こうした状況に対し、モトローラは昨年、「Moto Z」と「Moto Z Play」向けに、本体の背面に装着可能な「Moto Mods」という拡張モジュールを開発し、各方面で注目を集めた。Moto Modsは端末本体の背面にマグネットで固定する仕様を採用し、背面部分の端子と電気的に接続することで、さまざまな機能を追加できるようにしている。本体背面側のカメラ部や端子の位置が固定されるため、端末側にもモジュール側にもデザイン的な制約はあるが、PCなどと違い、一般的にハードウェアの拡張が難しいとされてきたスマートフォンにおいて、ユーザーの好みに応じて、自由にハードウェアを必要とする機能を拡張できるようにしたわけだ。

 昨年の「Moto Z」と「Moto Z Play」発売時には、光学10倍ズームを搭載したカメラモジュール「Hasselblad True Zoom」をはじめ、最大70インチの大画面を投影可能なプロジェクターモジュール「Moto Insta-Share Projector」、JBLサウンドが楽しめるスピーカーとバッテリーを搭載した「JBL SoundBoost」などが発売され、話題になった。こうしたMoto Modsによる機能拡張をしないときの背面カバー「Moto Style Shell」もさまざまなデザインのものがラインアップされ、ファッション性の高さでもそれまでのスマートフォンにはない新しい魅力を打ち出すことに成功した。

 今回発売された「Moto Z2 Play」は、モトローラの「Moto Z」シリーズの第二世代に位置付けられるモデルだ。従来モデルに引き続き、Moto Modsに対応しており、これまでに発売されたMoto Modsも同じように装着できる。Moto Modsについては今年3月に行なわれた「Moto G5/G5 Plus」の国内向け発表会では、新たに車載用ドック「Incipio Vehicle Dock」、バッテリーを搭載したMoto Mods製品を充電する「Charging Adapter」、WPC/Qiに両対応する「Wireless Charging」、急速充電にも対応したバッテリーパック「Turbo Charger Mod」を順次、国内向けに投入することが明らかにされており、今回のMoto Z2 Play発売のタイミングでは、少し発売時期がずれたももの、7月21日から「ワイヤレス充電キャップ」、7月28日から「Turbo Powerパック」の販売が開始されている。今回は「Turbo Powerパック」をいっしょに試用することができたので、その内容もレビューしよう。

 また、Moto Modsについては、Moto Z2 Play発表会でも明らかにされたように、開発キットが提供されることが明らかにされており、9月2日にはアイデアソンも開催されることが合わせて発表された。モトローラ・モビリティ・ジャパン 代表取締役社長のダニー・アダモポウロス氏や米モトローラ・モビリティでMoto Modsを担当するクリスチャン・フラワーズ氏によれば、国内のエンジニアや企業が開発したMoto Modsをグローバル市場に展開したり、ワンセグやFeliCaといった国内市場のニーズを満たすMoto Modsの開発にも期待を寄せているという。

薄さ5.99mmのスリムボディを実現

 さて、Moto Z2 Playの外観からチェックしてみよう。モトローラのスマートフォンにはMoto Zシリーズ、Moto Gシリーズ、Moto X Playなどがラインアップされているが、Moto Gシリーズがコンパクトなボディのスタンダードモデルであるのに対し、Moto Zシリーズは初代モデル以降、スリムさを強調したフラッグシップモデルに位置付けられている。

 本体を手に取り、まず、最初に驚かされるのがその薄さだ。ここ1~2年、スリムな端末が増えており、モトローラは昨年のMoto Zで5.19mm、Moto Z Playで6.99mmを実現していたが、今回のMoto Z2 Playは従来のMoto Zに迫る5.99mmを実現している。重量も従来モデルに比べ、20gの軽量化に成功し、145gに仕上げられている。

オールメタルのユニボディデザインを採用。背面にはカメラ、Moto Mods端子を備える
右側面には音量ボタン、電源ボタンを備える
上部にはSIMカードトレイを格納するスロットを備える。穴にピンを挿して、SIMカードトレイを取り出す
底面には3.5mmイヤホンマイク端子、USB Type-C外部接続端子を備える。認証マークのロゴなどもここにプリントされている

 こうしたスリム化や軽量化は、ここ数年、多くのスマートフォンでも取り組まれているが、Moto Zシリーズの場合、前述のように、本体背面に装着するMoto Modsが存在するため、その意義は大きく、開発意図としても明確なようだ。スリムさを求めるのであれば、本体のみで利用することになるが、背面カバーのMoto Style Shellも非常に薄く、これを装着した状態でも同クラスの他のスマートフォンよりも薄いか、同程度の薄さに抑えられている。多くのスマートフォンの場合、本体背面などに傷が付くことを避けるため、樹脂製カバーを装着することが多いが、Moto Z2 Playであれば、Moto Style Shellを装着しておけば、背面の傷はカバーのみに留めることができる。ただし、本体周囲の保護を考えるのであれば、別の方法を検討した方が良さそうだ。

 本体前面にはディスプレイ、その下にはMoto G5/G5 Plusにも採用された指紋認証センサー、ディスプレイ上にはインカメラとデュアルCCTフラッシュ、背面にはアウトカメラとデュアルCCTフラッシュ、右側面に電源キーと音量キー、底面側に3.5mmイヤホンマイク端子とUSB Type-C外部接続端子、トップ側にはトレイ式のSIMカードスロットを備える。本体は防水防じんに対応しないが、Moto G5/G5 Plus同様、撥水ナノコーティングが施されているため、、雨などの水滴くらいであれば、問題はないだろう。

 背面に備えられているアウトカメラはボディに対し、突起した形状だが、カメラのリング部分はレンズ部よりもわずかに高くなっているため、机の上などに置いて、レンズ部にキズが付くことはなさそうだ。また、Turbo PowerパックなどのMoto Modsを装着すれば、カメラ部は内側に凹んだ状態になるため、安心して利用できる。

 バッテリーは固定式で容量3000mAhのものを内蔵しており、着脱はできない。他のモトローラ製端末同様、急速充電に対応しており、同梱の15WのTurbo Power充電器を接続すれば、約15分の充電で最長8時間の利用が可能としている。市販のUSB充電器などでも充電することは可能だが、外部接続端子がUSB Type-Cに変更されているので、ケーブルや変換アダプタなどは別途、用意した方がベターだろう。バッテリーの消費については同クラスの端末と比較しても十分なレベルにあるという印象だ。よりロングライフを求めるのであれば、後述するMoto ModsのTurbo Powerパックを組み合わせての利用がおすすめだ。

カメラ部分は突起しているが、Turbo PowerパックなどのMoto Modsを装着すると、凹んだ状態になる
指紋認証センサーはMoto G5 Plusなどで採用された横長楕円の凹んだタイプを採用
Moto Z2 Play(右)とMoto Z(左)。指紋認証センサーやインカメラ用フラッシュなどの位置も変更されている
Moto Z2 Play(右)とMoto Z(左)の背面。Moto Modsに対応しているため、カメラやMoto Mods端子の位置は共通
Moto Z2 Play(上)とMoto Z(下)を重ねて、側面から見たところ。厚みはあまり差がなく、カメラ部の突起もほぼ同じ
背面に「Moto Style Shell」を装着。もっとも軽く持ち歩くには、このカバーが適している

ミッドハイに位置付けられるスペック

 昨年、国内向けにも発売されたMoto Zは、モトローラのラインアップでフラッグシップに位置付けられるが、今回のMoto Z2 Playは昨年のMoto Z Playの後継機であり、位置付けとしてはミッドレンジとハイエンドの中間であるミッドハイに位置付けられる。チップセットはクアルコム製「Snapdragon 626(MSM8953 Pro)」を採用し、メモリー(RAM)は4GB、ストレージ(ROM)は64GBを搭載する。今回の試用ではそれほど負荷の大きな用途に使わなかったが、本体が熱くなるようなこともなく、常に安定した状態で利用できた。

 ネットワークの対応については2G(GSM)、3G(W-CDMA)、4G(FDD-LTE/TD-LTE)に対応しており、Moto G5/G5 Plus同様、デュアルSIM&デュアルスタンバイに対応する。メモリーカードについては本体上部のSIMトレイに装着する構造で、最大128GBまでのmicroSDメモリーカードの装着が可能だ。nano SIMカードを2枚、装着した状態でもmicroSDメモリーカードを装着できるため、本体のストレージを圧迫することなく、写真や音楽をmicroSDメモリーカードにたっぷりと保存できる。

 ネットワークの対応バンドはスペック表をご覧いただきたいが、今のところ、NTTドコモのネットワークを利用したMVNO各社が動作確認機種にリストアップしているのに対し、auのネットワークを利用したMVNO各社では動作確認機種に挙げられていない。ワイモバイルについては何も情報が掲載されていないが、筆者が試した範囲ではSIMカード装着後、APNは自動的に候補が表示され、選択後は通話もデータ通信も利用することができた。

SIMカードトレイを取り出したところ。こちら側にはmicroSDメモリーカードを装着する
SIMカードトレイの裏面にはnano SIMカードを2枚、装着することが可能。SIMカードもmicroSDメモリカードもはめ込むタイプなので、トレイの着脱時に落としにくくなっている

 今後、バージョンアップなどで、UQ mobileをはじめ、mineoのAプラン、IIJmioのタイプAなど、auのネットワークを利用した環境でも動作できるようになることを期待したい。本体のAPN設定についてはNTTドコモのspモードやmoperaU、MVNO各社のIIJmioや楽天モバイル(楽天ブロードバンド通話SIM)、LINEモバイル、OCNモバイルONE、mineo(ドコモプラン)など、15種類が出荷時に登録されていた。

 ちなみに、少し余談になるが、モトローラでは昨年のMoto ZやMoto Z Playをはじめ、数機種向けにβ機能として、VoLTE対応を提供している。その中にはauのネットワークへの対応も実現されており、筆者の手元の環境ではMoto G5 Plusで、IIJmioのタイプAのSIMカードの動作が確認できている。β機能という位置付けではあるものの、モトローラとして、auのネットワークへの対応に取り組んでいることから、将来的にMoto Z2 Playでもauのネットワークを利用したMVNO各社での動作は期待できると見て、良さそうだ。

 また、デュアルSIM&デュアルスタンバイについては、SIMスロット1に既存の携帯電話各社(MNO)のSIMカードを挿して、音声通話などに利用し、SIMスロット2にはMVNO各社のSIMカードを挿して、安価なデータ通信に利用するといった使い方ができる。もちろん、国内だけでなく、海外渡航時にSIMスロット1に日本のSIMカードを挿して、緊急時の連絡ができるようにしておき、SIMスロット2に現地のSIMカードを挿して、データ通信を利用するといった使い方もできる。

 筆者も7月にタイ・バンコクに出かけた際、この組み合わせで利用してみたが、問題なく使うことができた。万が一、設定ミスなどでローミング料金の発生を避けたいのであれば、SIMカードを抜かなくてもSIMカード設定の画面でSIMカードそのものをオフにすることも可能だ。もっともその場合は、オフにしたSIMカードには一切、着信もできなくなるが……。

設定画面の[SIMカード]のメニュー。それぞれに有効無効を切り替えることができ、優先する接続なども設定が可能。SIMカードの名称は自動的に認識しない場合、個別に自分で登録できる
出荷時に登録されているAPNの一覧の前半
出荷時に登録されているAPNの一覧の後半。合計15個のAPNが出荷時に設定済み

 ディスプレイは1920×1080ドット表示が可能な5.5インチフルHD対応AMOLED(有機ELディスプレイ)で、前面のガラスはコーニング製Gorilla Glass 3を採用する。発色も非常にきれいで、映像コンテンツなども大画面かつ高品質な表示で楽しむことができる。Moto ModsのJBL SoundBoostを装着して、外出先や旅先などで映画やドラマ、スポーツ中継などを楽しむのも良さそうだ。

 本体前面のディスプレイ下に備えられている指紋認証センサーは、Moto G5/G5 Plusにも採用されている少し凹んだ形状のタッチ式のものを備える。Moto Zに採用されている四角いタッチ式のものに比べると、面積も広く、指先の当たり具合も良く、扱いやすい印象だ。

 Moto G5/G5 Plusにも搭載されていた「ワンボタンナビゲーション」機能も継承されており、指紋認証センサーでAndroidプラットフォームの操作に必要なナビゲーションキー(戻るキー、ホームキー、履歴キー)の動作を可能にしている。出荷時にインストールされている[Moto]アプリ内の[Moto Actions]で[ワンボタンナビ]で設定することができる。

 具体的な動作としては、指紋認証センサー部分を左にスワイプで戻るキー、タップでホームキー、右にスワイプで履歴キーという操作が割り当てられている。ワンボタンナビを有効にすると、画面内のナビゲーションキーの表示がオフになるため、その分、画面も広く使うことができる。操作には少し慣れが必要だが、慣れてしまえば、あまり違和感なく使うことができる。

 ちなみに、ワンボタンナビゲーションが有効になっているとき、指紋認証センサーを長押しすると、Googleアシスタントを起動することができる。また、右にスワイプで履歴キーの操作をしたとき、アプリのウィンドウを画面上部のエリアまで移動すると、Android 7.0で利用できる分割画面表示を使うことができる。画面にもガイドが表示されているので、非常にわかりやすい。

デュアルピクセルセンサー採用の1200万画素アウトカメラ

 カメラについてはMoto Modsに対応する関係上、従来のMoto ZやMoto Z Playと同じ位置になるが、本体背面の中央上にアウトカメラを備える。カメラのスペックとしては、画素ピッチ1.4μmの1200万画素デュアルピクセルセンサーに、F値1.7の明るいレンズを組み合わせている。

カメラは1200万画素デュアルピクセルセンサーを搭載。カメラ部の下にはデュアルCCTフラッシュも備える

 デュアルピクセルセンサーについてはMoto G5/G5 Plusのレビューでも触れたが、一般的なスマートフォンのカメラの位相差センサーが画素全体の1%程度にしか組み込まれていないのに対し、デュアルピクセルセンサーはイメージセンサーを2つのフォトダイオードで構成し、それぞれのフォトダイオードが光の信号を検出して、位相差AFを機能させるため、すばやいフォーカシングと暗いところでのピント合わせに強みを発揮する。デュアルピクセル技術はキヤノンの一眼レフカメラ「EOS 70D」をはじめ、スマートフォンではGalaxy S8/S8+のカメラなどにも採用されており、高い評価を得ている。

 撮影モードとしては、標準的な「写真」、最大4K/30fpsの撮影が可能な「動画」、ワイドに撮影する「パノラマ」、動きのあるシーンが楽しい「スローモーション」、ISO感度や露出、シャッター速度などを細かく設定できる「プロフェッショナルモード」が用意されている。標準的な「写真」モードで撮影する場合、ファインダーを上下にドラッグしての「ズーム」、ファインダー内のアイコンを操作しての「HDR」、カメラ部に備えられたデュアルCCTフラッシュを使う「フラッシュ」、3秒と10秒の設定が選べる「タイマー」などの設定が切り替えられる。ファインダー画面を右方向にスワイプすると、写真や動画のサイズ、位置情報保存の有効/無効などの設定も切り替えることができる。設定のメニュー内に「シャッター音」の項目はあるが、国内向けモデルは操作することができない。

 インカメラについては同じ1.4μmの画素ピッチの500万画素イメージセンサーに、F2.2で広角85度のレンズを組み合わせている。広角レンズは複数人で撮るセルフィーや背景を活かした自分撮りなどにも効果的だ。

ファインダー画面を右方向にスワイプすると、設定画面が表示される。項目にシャッター音はあるが、オフにできない
画面右下のメニューをタップすると、カメラの撮影モードを選ぶことができる
プロフェッショナルモードではISO感度や露出などを細かく設定することが可能
少しわかりにくいが、複数の箇所にフォーカスが合っていることがファインダー内で確認できる

 実際に、Moto Z2 Playを使い、屋内や屋外などでも撮影してみたところ、屋外などの明るいシーンではきれいな写真が撮影でき、室内も通常の照明がある場所では十分に明るく撮影できている。ただ、いつもレビューで撮影している薄暗いバーなどでの撮影では、当然のことながら、全体的に暗めに写ってしまい、シーンによってはノイズが増えてしまうこともあった。Moto G5/G5 Plusのときにも触れたが、現在のスマートフォンのカメラは人間の見た目よりも明るく撮れる方向性のモデルが増えてきており、Moto Z2 Playも暗いところでの撮影を中心に、もう少しチューニングを期待したいところだ。ちなみに、旅先などの撮影については、Moto Modsの光学10倍ズーム搭載のカメラMods「Hasselblad True Zoom」を組み合わせることで、活用するシチュエーションを拡げることができる。

薄暗いBARでの撮影したサンプル。ガラスの質感やカクテルの薄い赤い色などもきれいに再現されている ※リンク先は4032×3024ドット、4.63MB
ショッピングモールのオブジェを撮影。内側から光る構造のものだが、きれいに撮影できている ※リンク先は4032×3024ドット、3.55MB

便利機能が揃った「Moto」アプリ

 今回試用したMoto Z2 Playは、現在、Android 7.1.1が搭載されており、前述のように、Android 7.0の新機能のひとつである「分割画面」(デュアルウィンドウ)なども利用できている。

 ホームアプリをはじめとしたユーザーインターフェイスは、Moto G5/G5 Plusなどと同じように、モトローラ自身が「ピュアAndroid 7.0」と呼ぶAndroidプラットフォーム標準に近いものを採用している。ホーム画面にはアイコン、ショートカットを設定でき、画面最下段のドック部分のすぐ上の「△」を上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示され、一覧は上下方向にスクロールする。その他の部分の操作性もAndroid標準に準拠しており、事実上、終了したとされているNexus 5XやNexus 6Pなどのユーザーが移行してもストレスなく使える印象だ。

モトローラ製端末ではすっかりおなじみとなったホーム画面。中央上のウィジェットは時刻、日付、天気のアイコンをタップして、それぞれの機能を呼び出すことが可能。外周はバッテリー残量を表わす
アプリケーション一覧は縦スクロール表示。最上段に文字を入力すれば、アプリを検索することが可能

 独自アプリとしては、Moto G5/G5 Plusに引き続き、「Moto」アプリにいくつもの機能が集約されている。ここに登録されている各機能を使うことで、Moto Z2 Playの使い勝手はグッと楽しくなる印象なので、購入したユーザーはぜひ試して欲しいアプリだ。具体的な機能としては、「Moto Actions」と「Moto Display」の2つのグループに分けられている。画面上では「Moto Voice」も表示されているが、残念ながら、現時点では日本語がサポートされていないため、利用することができない。

 Actionsには前述の「ワンボタンナビ」をはじめ、7種類の機能が用意されている。Moto G5/G5 Plusと比較すると、「近付いてMoto Displayを起動」が新たに追加されている。

機能アクションと内容
ワンボタンナビAndroidプラットフォームの操作に必要な[戻る]キー、[ホーム]キー、[履歴]キーの機能を指紋認証センサーの操作で可能にする
2回降り下ろしてフラッシュライトを操作本体を握り、軽く2回、振り下ろすことで、背面側のフラッシュライトが点灯する。暗いところで周囲を照らしたいときなどに便利
手首をひねってQuickCapture本体を握り、手首をすばやく2回、ひねることで、カメラを起動することが可能。画面オフやロック画面からも操作できる
スワイプして画面縮小画面下の左、もしくは右にスワイプして、画面を縮小表示することができる。片手でも操作したいときに便利な機能
持ち上げて着信音停止着信があり、着信音が鳴っているとき、本体を持ち上げると、着信音が止まり、バイブレーション(振動)に切り替わる
下向きに置いて無音化本体を裏返し、ディスプレイを下向きに置くと、着信音などを鳴らないようにできる。アラームのみを通知したり、重要な通知のみを知らせる設定も可能
近付いてMoto Displayを起動端末に手を伸ばすと、ディスプレイが点灯する。時刻やバッテリー残量などもすぐに確認できる

 Moto Displayはディスプレイ関連の機能がまとめられており、画面オフ時にフェードイン/フェードアウトで通知を表示したり、夜間に表示を暖色トーンに自動調整する「夜間表示」が用意されている。ActionsとMoto Displayのいずれも画面内にアニメーション付きのチュートリアルなどが用意されているため、はじめてのユーザーでも端末がどのように動作するのかを確認しながら設定できるのは好印象だ。

 また、Moto G5/G5 Plus、Moto Zなどでも搭載され、同社製端末のホーム画面のひとつの顔となっている時計ウィジェットも継承されている。時刻の表示だけでなく、円内の日付をタップして「カレンダー」、温度の表記をタップして「天気」、時刻をタップして「時計」のアプリがそれぞれ起動するうえ、外周の部分がバッテリー残量のゲージも兼ねているなど、視覚的にも使い勝手の面でもよくできている。

 日本語入力については、Google日本語入力が標準でインストールされている。Google日本語入力がダメというわけではないが、ライバル機種がiWnnやATOKなどをプリインストールしていることを考慮すれば、他の選択肢を検討してみてもいいのではないだろうか。もっともそれがコストに跳ね返ってくることを考えると、判断は分かれるところだが……。

[Moto]アプリのメイン画面。名前は登録したものがそのまま表示される
Moto Actionsで利用できる各機能。いずれも項目を選べば、アニメーションで実際の動作が再生される
Moto Displayで利用できる各機能。「夜間表示」はブルーライトをカットし、暖色トーンで表示する
Moto Voiceは残念ながら、日本語がサポートされていないため、利用できない。今後のバージョンアップに期待したい
設定画面の[電池]でバッテリーの残量や時間経過による減り具合なども確認できる

賢くロングライフを可能にする「Turbo Powerパック」

 今回のMoto Z2 Playの発売に合わせて、モトローラでは今年3月に国内市場投入を発表していたMoto Modsの販売を開始した。新しいMoto Modsのうち、Turbo Powerパックを試用することができたので、こちらもチェックしてみよう。

「Turbo Powerパック」、約153mm(高さ)×73.4mm(幅)×6.58mm(厚さ)、約95g(重量)、3490mAhバッテリー搭載

 Moto ModsのTurbo Powerパックは、Moto Zシリーズ専用の外付けバッテリーで、3490mAhのバッテリーを搭載している。今回取り上げているMoto Z2 Playをはじめ、従来のMoto Z、Moto Z Playの背面イン装着することで、本体のバッテリーを拡張できるというものだ。ただし、Turbo Powerパックが一般的な外付けタイプのモバイルバッテリーと違い、通常の装着時は最大15Wの急速充電を行なうのに対し、スマートフォンのバッテリー残量を常に8割程度に保つように、効率良く電池を長持ちさせる「効率駆動モード」を選ぶことができる。たとえば、Moto Z2 Play本体のみで利用しておいて、バッテリー残量が少なくなったら、Turbo Powerパックを装着して、急速充電をしたり、Turbo Powerパックを装着した状態で持ち歩いて、とにかく長く使えるようにするといった使い方を選べるわけだ。

 前述のタイ・バンコクに出かけた際、午前中から夕方まで、外出していた日があったが、Moto Z2 PlayにTurbo Powerパックを装着し、効率駆動モードを選んで、持ち歩いてみたところ、携行時の重量(約95g)が増すものの、バッテリー残量をまったく気にすることなく、使うことができた。特に、海外渡航中などは国内ほど、充電環境が整っていないことがあり、モバイルバッテリーを携行しなければならないケースが多いが、Turbo Powerパックは本体に装着したままでも利用できるうえ、急速充電と効率駆動モードを利用状況に応じて使い分けることができるため、非常に有用だという印象を持った。ちなみに、Turbo Powerパックそのものも側面のUSB Type-C端子で充電できる。電池残量もMoto Mods対応端末に装着しなくても背面の4つのLEDで確認できるようにしている。

Turbo Powerパックの背面にはLEDが備えられていて、ボタンを押すと、LEDが点灯して、バッテリー残量が確認できる
Turbo Powerパックの充電もUSB Type-C端子が採用されている
Turbo Powerパックを装着したときの電池モードは、急速充電の「Turbo」のほかに、電池残量を80%に保つ「効率性」も選ぶことができる。長時間利用には「効率性」がおすすめ
Turbo Powerパックを背面に装備したMoto Z2 Play。総重量は約250gになってしまうが、この状態で使い続けることも十分に可能

Moto Modsで機能を拡張しながら楽しめるMoto Z2 Play

 これまでスマートフォンやケータイなど、一般的に携帯電話は、メーカーが決めた仕様に基づいて製造されているため、PCなどと違い、搭載されるハードウェアを自由にカスタマイズすることができなかった。こうした状況に対するひとつの答えとして、モトローラが提案したのが拡張モジュールの「Moto Mods」というコンセプトであり、今回取り上げたMoto Z2 Playは、3機種めの対応機種ということになる。

 Moto Modsは本稿でも説明したように、ユーザーの使い方に合わせて、さまざまな機能を拡張する環境を実現している。カメラを重視したいユーザー、バッテリー駆動時間をロングライフ化したユーザー、映像コンテンツなどを大きなスクリーンで楽しみたいユーザーなど、それぞれのユーザーに合わせたMoto Modsがラインアップされており、ユーザーの利用シーンに応じて、自由にカスタマイズすることができる。しかも2つのハードウェアを接続するだけでなく、Turbo Powerパックの効率駆動モードのように、ユーザーの利用状況に応じて、本体側の動作を制御できるなど、連動性についても考えられている。今のところ、Moto Mods対応端末は今回取り上げたMoto Z2 Play、昨年のMoto Z、Moto Z Playの3機種に限られるが、モトローラ自身が開発キットを提供していることなどから、モトローラとしては今後も継続的に同社製端末の拡張プラットフォームとして、継続して展開する意向を持っている。そのため、ユーザーとしては購入したMoto Modsを今後の対応機種で利用できるわけだ。

 Moto Modsという拡張性ばかりを強調してしまったが、端末そのものについてはスリムで美しいデザインにまとめられたボディに、シンプルでわかりやすいユーザーインターフェイスを搭載し、[Moto]アプリで提供される『気の利いた機能』も備えるなど、全体的に満足度の高い端末として仕上げられているという印象だ。

 実売価格は5万円台半ばに落ち着いており、家電量販店やMVNO各社などで購入できる。最終的にはMoto Modsの拡張性をどこまで評価するかがポイントだが、他製品にはない拡張性は大きな魅力であり、今後のスマートフォンの進化を考えるうえでもカギを握る取り組みと言えるだろう。その意味でも多くのユーザーに、ぜひ一度は試して欲しい一台だ。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめる iPhone 7/7 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門」、「できるポケット HUAWEI P9/P9 lite基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10b」、「できるゼロからはじめる Windows タブレット超入門 ウィンドウズ 10 対応」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。