みんなのケータイ

 5月、7月と立て続けに中国本土に出張することになった。5月は、本誌にもすでに記事が掲載された、「Lenovo Tech World」の取材。7月は、上海で開催されるMobile World Congressのアジア版「Mobile World Congress Shanghai」に参加する予定だ。

上海で開催された「Lenovo Tech World」を取材した。写真右は同イベントで発表された、「Magic View」を試している筆者

 中国で仕事しようとすると、もっとも困るのがやはりインターネット環境。ご存知のように、同国には「金盾」や「グレートファイヤーウォール」と呼ばれる検閲システムがあり、TwitterやFacebookといったサイトがブロックされている。SNSが使えないだけならまだいいが(むしろ仕事がはかどることもありそう?)、Googleの各種サービスまで遮断されてしまうため、仕事に支障が出る。中国政府の意向には困ったものだが、何としてもこれは回避しなければならない。

現地SIMを使ってVPNを経由するのも、選択肢の1つ

 手としてあるのがVPNで日本国内にいったん接続するということだが、これも万全ではない。VPNが度々切断されてストレスがたまるし、回線によっては速度も十分出なくなってしまう。普段使っている端末は、ほぼすべてVPNをワンタッチで呼び出せるようにしているが、何度も接続し直すのは面倒だ。1つだけ、金盾を完全に回避する方法としてあるのが、国際ローミングを使うこと。ただし、海外パケ・ホーダイだと1日の料金は最大2980円。滞在期間が長いと、大きな負担になる。

 そこで、今回活用したのが、同じ中国でも特別行政区としてインターネットの“自由”が認められている香港のSIMカード。中国移動香港が出しているSIMカードの中に、中国での国際ローミングが1日68香港ドル(約1088円)のものがある。香港発行のSIMカードのため金盾の規制がかからず、しかも、「4G」対応で通信速度も期待できる。このSIMカードを出張前に手配。本誌でもおなじみ、香港在住の山根康宏氏にお願いして、出張前にこのSIMカードを送ってもらった。

山根氏にお願いして入手した、中国移動香港のSIMカード

 4Gとは言え、中国で主流なのはTD-LTE方式だ。対応しているSIMフリーのスマートフォンも、そこまで多くない。ただ、筆者が普段から利用している「GALAXY Note Edge SC-01G」は、国際ローミング用としてTD-LTEに対応している。TD-LTEの対応バンドは、2.6GHz帯(Band38)、1.9GHz帯(Band39)、2.5GHz帯(Band41)の3つだ。

 以前台湾でLTEに接続しようとした際に四苦八苦したため、少々警戒していたが、中国に到着して、SIMカードを挿したところGALAXY Note EdgeはあっさりTD-LTEにつながった。サービスモードで確認したところ、Band 38でTD-LTEに接続しているようだ。期待していたほど速度は出ず、数Mbpsほどだったが、大容量のデータをやり取りしようとしなければなんとかなる。

 なぜかあっさりつながったTD-LTEだが、設定を確認してみたところ、VoLTEが自動でオフになっていた。台湾のときはVoLTEの設定にたどり着くまでが大変だったが、どうやらどこかのタイミングのアップデートで、この設定が変わったようだ。今はドコモ以外のSIMカードを挿すと、VoLTEが自動でオフになる。

Band 38でTD-LTEにつながっている
ドコモ以外のSIMカードを挿すと、VoLTEがオフになるようだ

 これで快適に仕事ができると思いきや、北京市街を移動していると、2G(EDGE)になってしまうことが度々あった。おかしいなと思って中国移動の運用している周波数帯を改めて調べたところ、どうやら2.3GHz帯(Band 40)のエリアもあるようで、ここにGALAXY Note Edgeが対応していない。

 そこでSIMカードをiPhone 6に差し替えてみた。あくまで体感だが、GALAXY Note Edgeよりもエリアが広いように感じられる。実際、GALAXY Note EdgeがTD-LTEにつながらなかった場所でiPhone 6のフィールドテストモードを開いてみると、Band 40につながっていた。やはり、中国移動からも発売されているiPhone 6だけに、対応状況は完璧。街中ではTD-LTEでつながっていることの方が多い。

GALAXY Note Edgeが非対応な、Band 40にも対応している
調子がいいと、10Mbps以上出ることもある

 残念だったのは、ホテルの部屋が15階のせいもあり、TD-LTEの電波が安定しないこと。2.3GHz帯と高い周波数のためか、窓から離れるとすぐ2Gになってしまう。ホテルにいるときは窓際にiPhone 6を置いてテザリングするので、何とかなってはいるのだが……。このように、エリアばかりは現地に行くまで分からず、ギャンブル的な要素もある。過信しすぎるのは禁物だ。