ディズニーが提供する完成度の高い世界観

2010年6月25日 06:00
(橋本保)

 前回、Twitterのウィジェットに対応していることを知ったのをきっかけに調べてみると、別の発見がありました。いまディズニー・モバイルの最新機種は『DM006SH』。これには、撮った写真を自分に似たディズニーキャラクターに変身してくれる「ディズニー・キャラクターフォトメーカー」というアプリの最新版がプリインストールされています。最新版は、ブログやmixiへ直接投稿が加わりました。その最新版が『DM005SH』でもダウンロードが可能なんです。

 つまり、古い機種でも、アプリなどを最新機種と同等にすることができるので、いつ買っても安心できる。すべてを照合しきれないので言い切ることはできませんが、どうやら他のキャラクター素材などにも当てはまるようです。こうした配慮は、ユーザーとの関係を大切にしたいと考えているディズニー・モバイルならでは。ここには、携帯電話会社やメーカーの都合がむき出しになった世界とは違うルールがあることを実感しました。一人一台が当たり前になった飽和市場だからこそ、細かな心配りが大切にされるはず。細かな心配りこそ、日本メーカーの得意分野なはずなので、その強みが活かせるのではないでしょうか。

 少し別の視点から見てみましょう。ディズニー・モバイルの細かな作り込みは、完成度の高い世界観ともいえるでしょうし、ある意味で過剰とも言えます。過剰な作り込みは、ガラパゴス化と揶揄されるのが最近の風潮ですよね。でも、ディズニーのような物語を持っていると、過剰な作り込みが完成度の高い世界観に変わるのです。それは、魔法にかかったように。

 ここから敷衍して言えそうなのは、ただケータイを開発するのではなく、それと一緒に体験できる物語があると、ユーザーの心を躍らせることができるのではないか、ということです。そう考えると、アップルの製品には、スペックや機能だけではない物語があります。インターネットの存在感を示すGoogleが主導するAndroidにも、それなりの物語が伝わってきます。

 では、日本のメーカーが作る機種には、どんな物語があるのでしょう。それなりの物語はあるのでしょうが、それが面白いか、人々の心を躍らせることができるかといえば、私は物足りなくさを感じています。でも、今日現在の状況から、アップルやGoogleのような物語を持ったモノを作ることは難しいかもしれませんが、すでにある物語と手を組むなら、何かできるのではないかと思います。それがMVNOなのか、キャラクターケータイなのか、ブランドとのコラボなのか、それらとはまったく別のものなのか、いろいろと選択肢はあるでしょう。ただ、ユーザーを頷かせるようなモノになっている必要はあるでしょう。『DM005SH』を使っていると、個々の機能や性能うんぬんよりも、そんなことばかりが頭をよぎります。ディズニー・モバイルには、次のヒットモデルのヒントが隠されているような気がしてならないのは、私の勝手な思いこみなのでしょうかねぇ。