ケータイ用語の基礎知識
第705回:SoC とは
(2015/4/21 12:33)
「SoC」とは、一個の半導体チップ上にシステムの動作に必要な機能の多く、あるいは全てを実装するという設計手法、また、その手法を使って作られたチップのことを指す言葉です。その名称は「システムを一個のチップ上に載せる」を意味する英語“System on a Chip”から来ていて、そのままエスオーシー、あるいソックと呼ばれます。
スマートフォンやタブレットの内部には、米クアルコム製のSnapdragon 801/400、韓国サムスン製のExynos 7420、あるいは米国のApple A8といったSoCが組み込まれています。あるいは米インテル製で、x86アーキテクチャーをそのままSoCにしたAtom x3などもあります。
SoCは多くの場合、コンピュータの中枢となるCPUとメモリ、ビデオチップ、I/Oといった機能を統合したチップとして設計されます。このようなタイプのSoCはかつては「ワンチップ・コンピュータ」と呼ばれることもありました。文字通り、ひとつのチップ内にコンピュータに必要なLSIが全て組み込まれているというわけです。
スマートフォンでのSoC
スマートフォンに組み込まれているSoCの多くは、CPUとGPU(グラフィック処理装置)、それに電波に乗せて送られてきた情報をデジタルデータに変換するためのモデムなどもワンチップになっていることが多いようです。
たとえば、Xperia Z3 CompactやGALAXY S5 Active、AQUOS Crystal Xなど多くのスマートフォンに組み込まれているクアルコム製のSnapdragon 801(MSM8974AC)というSoCの場合、Krait 400アーキテクチャーを採用したCPUとキャッシュメモリ、それにAdreno 330 GPU、LPDDR3メモリーインターフェイス、eMMC 5.0ストレージインターフェイス、LTEモデムなどが、一個の半導体チップに収められています。
Snapdragonの場合は、KraitやAdrenoといったクアルコム自身のアーキテクチャーを採用しています。Exynos 7420では英ARMのCortex-A57とCortex-A53といったアーキテクチャーを採用しています。このように、SoCの製造元が他社の技術を採用することは多くあります。
メリットは大きさと消費電力
スマートフォンではほぼ間違いなくSoCが利用されているのは、主に大きさや消費電力の面で非常に優れているからです。
SoCは、一個のチップの中に多くの機能を詰め込むため、機能単体チップで構成する場合と比べて回路に必要な面積がコンパクトになり、非常にサイズを小さくすることができるのです。
また省電力機構を組み込む場合、チップ単体ごとに省電力を図るのではなく、システム全体で考えることができ、その分、電力を効率よく使い、より低消費電力にすることができます。
筐体を小さく、しかも高性能なアプリケーションプロセッサを搭載し、さらに電力にも制限があるスマートフォンや携帯電話にとっては、SoCは今や欠かせないものなのです。携帯電話に限らず、組込用のマイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータなどでもSoCは使われています。コンピュータ的な機能を持っているものなら、たとえば家電やゲーム機、オーディオ、自動車など、搭載品を数え上げればきりがないくらいです。ワンチップにコンピュータに必要な回路を詰め込むことで、実装や検査の簡略化によるコストダウンを見込めるため、特に大量生産によってコストを下げられるような量産品には、ほぼ入っていると考えてもいいでしょう。