ケータイ用語の基礎知識
第685回:スマートソニックレシーバー とは
(2014/11/19 06:00)
スマートソニックレシーバーは、京セラが開発した技術で、携帯電話のディスプレイ部を振動させることで音声を伝えます。
このスマートソニックレシーバーを採用することで、受話レシーバー用の穴を開ける必要がなくなり、携帯電話をスマートな外見にデザインできるほか、たとえば、耳にイヤホンを挿した状態や、ヘルメットをかぶった状態でも、その上から携帯電話を押し当てても携帯電話の音声を聞き取ることができるといったメリットがあります。
スマートソニックレシーバーは、京セラ製の携帯電話・スマートフォンに採用されています。2012年発売の「URBANO PROGRESSO」「簡単ケータイ K012」で最初に採用されました。2014年現在、auスマートフォンの「TORQUE G01」やフィーチャーフォンの「MARVERA 2」、Y!Mobileの「DIGNO T」、ソフトバンクの「DIGNO R」など、多くの機種でこの機能が搭載されています。
携帯電話のディスプレイパネルは、アクリルパネルのものやガラスのものが存在しますが、そのどちらにもスマートソニックレシーバー対応機種が存在します。
圧電素子でディスプレイ全体を振動、騒音でも相手の声がはっきり聞こえる
スマートソニックレシーバーは、受話音声を振動に変換し、ディスプレイパネルを振動させる、つまり音と振動で声を伝える技術です。京セラのセラミック技術を応用した圧電素子が使われています。
圧電素子とは、電圧を力に変換する「圧電効果」を利用した素子で、簡単に言うと電圧をかけることで伸びたり縮んだりし、逆に振動や圧力といった力が加わると電圧を発生します。英語で圧電効果のことを「Piezoelectric」ということから、ピエゾ素子と呼ばれることもあります。圧電素子は、たとえばパネルスピーカーやプリンターのヘッドなど、さまざまな分野で応用されています。ちなみにスマートソニックレシーバーで使われる圧電素子はファインセラミックが使われており、磁石を使う従来のスピーカーと異なり、ネオジムなどのレアアースを使用しません。
他社製の携帯電話では、受話口と呼ばれる穴が携帯電話本体の耳に当てる部分にあり、ここにスピーカーが埋め込まれています。通話する際に、相手の声はこの受話口から伝わるので、耳がずれると相手の声が聞こえづらくなることがあります。一方、スマートソニックレシーバーの場合は、ディスプレイ部全体が振動するため、耳の当てる位置を気にすることなく通話できます。京セラではこれを「音声スイートスポットの範囲の広さ」と呼んでいます。
ちなみに、スマートソニックレシーバーは、圧電素子とディスプレイの面全体が振動することで音を出すため、一般的に使われる電磁式スピーカーと比べてて、音の指向性が非常に広く、ディスプレイ前面180度へほぼ均一に音を届けることができます。
また、スマートソニックレシーバーを採用した携帯電話は、周りの騒音に強い、という特徴があります。通話口があるタイプの携帯電話ですと、通話の際には電話の筐体の上部にある受話口に耳を当てることになるため、耳の上部と携帯電話の間に隙間ができ、そこから周りのノイズが聞こえてしまいます。
一方、スマートソニックレシーバーであれば、たとえばディスプレイの真ん中へ、耳を覆うようにに当てて使えます。これであればディスプレイと耳を密着させやすく、周りの騒音をさえぎることができます。結果として、相手の声がクリアに聞こえるわけです。
ただし、ディスプレイを振動させることで音と振動を作り出しているので、画面を保護するための保護フィルムなどを貼った場合、多少、音が聞こえづらくなることがありますので、その点は注意が必要でしょう。
なお、骨伝導スピーカーと異なり、スマートソニックレシーバーは、振動だけでなく、音と振動の両方で音を伝えるレシーバーですので、ディスプレイから音も出ています。そのためディスプレイから少し耳を離した状態でも音を聞き取れます。