ケータイ用語の基礎知識

第686回:GR certified とは

高画質デジカメ「GR」の名を冠した認証プログラム

 「GR certified」(ジーアール サーティファイド)は、リコーイメージング社による、モバイル機器向けの画質認証プログラムです。

 リコーと言えば、コピー機などのイメージが強いかもしれませんが、PENTAXブランドのデジタルカメラやパノラマデジカメ「THETA」といった、カメラでも強みを発揮し、根強い人気のあるメーカーです。そのリコーが手がける「GRシリーズ」は、単焦点型のハイエンド高画質コンパクトカメラの製品シリーズです。フィルムカメラの時代から長年に渡って高い評価を得てきました。そのデジタルカメラ版であるGRデジタルシリーズ最新モデルの「RICOH GR」は、2014年現在も販売されています。

 そして今回紹介する「GR certified」というプログラムは、“GRシリーズに似た志向を持つ、高画質なカメラ機能を備えるモバイル機器”であることを認めるものです。このプログラムの認証を行うリコーイメージングでは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器のカメラ機能で写真を楽しむユーザーに対し、より高画質・高品質な写真を体験できるようにすることで、写真の素晴らしさ、カメラへの関心を高めることを目指しています。

 プログラムの第1号として、NTTドコモのシャープ製スマートフォン「AQUOS ZETA SH-01G」「Disney Mobile on docomo SH-02G」が2014年11月に発売されました。これらの機種では、特に単焦点カメラでよく撮影されるスナップ写真などで、レンズの高性能さを引き出した自然な画像を撮影することが可能になっています。都会の街角のような、直線や平面の被写体が多い写真では、中心~周辺まで、均質でまっすぐに写ることでもその性能がわかるでしょう。また、スマートフォンのディスプレイ上だけでなく、パソコンなどのディスプレイで引き伸ばしたり、特に等倍表示にしたときにもきれいに表示することが可能な絵作りがなされています。

デジカメと同等ではないものの、クラス最高のカメラ機能を示す

 「GR certified」は、「GR Quality Regulation for Mobile」という基準をクリアしたカメラを搭載する、モバイル機器に与えられます。

 このレギュレーション(基準)は、コンパクトデジタルカメラ「GR」シリーズと同レベルの画質を保証するものではありませんが、モバイル機器の場合は、モバイル機器というカテゴリーで最高クラスの画質であることが基準となります。ただし、デジタルカメラの基準ではなく、あくまでもモバイル機器に搭載されたカメラの基準です。

 GR Certified対象機器については、歴代の「GR」シリーズ開発メンバーが中心となって、スマートフォンメーカーなどの企業に対して、カメラ開発をコンサルティングでアシストします。その内容は、カメラモジュールの光学特性、画質特性、製造特性などについての評価です。レンズや画像エンジンなどはあくまでもカメラモジュールメーカーが設計、製造し、特性に関してGRシリーズ開発メンバーがハードルを設け、てクリアしているかどうか審査します。いわばリコーイメージングはモバイル機器のレンズ、センサーや画像エンジンの「監修」を担当すると言えるでしょう。

認証第1号の「AQUOS ZETA SH-01G」

 ちなみに光学特性としては、レンズの収差やMTF、ゴースト、フレアなどの性能を確認します。“収差”とは、レンズを通して被写体を見たときの色づきやボケやゆがみのことです。また、MTFとは光学伝達関数を意味する“Modulation Transfer Function”の略で、これが良いと「コントラストがよくヌケの良いレンズ」ということになります。また、強い光源にレンズを向けた時に光が白っぽくなる現象である“フレア”や、レンズ面や鏡胴で光が不要に反射して像が多重になる現象のことを“ゴースト”と呼んでいます。これらは、クリアな画像を撮影するには不要な要素です。

 GR certifiedをクリアしたモバイル機器では、レンズに関して言えば、一定以上の基準で、レンズの中心から周辺まで高いコントラストと解像度を持ち、デジタル画像補正が必要ない程度のレンズを搭載していることになります。一般にスマートフォンのカメラでは、レンズのため、周辺が多少歪むことがあってもデジタル補正によって修正ができますので、レンズにはこだわらず、撮影したデータをデジタル処理で補正するものもあります。しかしそれでは、コントラストが落ちるという問題が発生します。GR certifiedを達成するには、まずレンズの品質の良さが要求されることになります。

 画質特性としては、カメラで撮影された画像の鮮鋭度、ノイズ処理などがチェックされます。モバイル機器にありがちな「光学系のコストダウン、小型化による性能ダウンを画像処理で補う」ということをするのではなく、レンズの性能のよさを生かし、自然な処理を重視した鮮鋭度の高い画像処理であることをポイントとしています。

 そして、開発が完了した対象機器に対しての最終チェックが実施され、設定基準を満たす製品を「GR certified」認証機器として、「GR certified」のロゴが添付されます。

 先述の通り、コンパクトデジカメと同等の画質というわけではありませんが、モバイル機器というカテゴリーの中では最高の品質であるというお墨付きがデジタルカメラメーカーによってなされた製品ということで、スマートフォンやタブレットのカメラに画質を期待したい場合には、この「GR Certified」マークは1つの目安になることでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)