第587回:O2O とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「O2O」(オーツーオー)とは、オンライン、つまりインターネット上のユーザーの活動を、オフライン、つまりネットショップではなく実店舗への購買活動に結び付けようとする取り組みのことです。「Online to Offline」の略称として、2010年ごろからよく使われるようになってきました。

 オンラインの活動、つまり自社のWebサイト、あるいはTwitterやFacebookといったソーシャルサービスを活用してユーザーを獲得し、実店舗へ集客するといった活動が多いのですが、ユーザーを取り込むパターン、あるいは実店舗でユーザーに何をさせるのか、非常にさまざまなやり方が日々生まれているジャンルでもあります。

 ユーザーとの結びつきをオンラインで構築することのメリットとしては、実店舗の集客数のうち、「どの程度の人数が、何をきっかけに、あるいはどこからやってきたか」を測定しやすくなることが挙げられます。ネットとリアルの連携の仕組みをより綿密に仕込んでおけば、それだけその効果を測定しやすくなります。また、逆にオンラインで集客したユーザーのうち、実際に何割が来店して購入したのか、分析することも可能になります。

 従来型のフィーチャーフォンでも、「O2O」にあたる利用促進の取り組みを実現することは可能ですが、「O2O」という言葉が注目されるようになってきた背景には、スマートフォンの登場が大きなファクターとなったと言えるでしょう。

 スマートフォンの持つGPSなどの位置情報、加速度センサー、NFCやFeliCaといった近距離無線通信規格、それにアプリケーションを自由に作成し、インストールできるといった機能を活用すれば、ネットからリアルへ、ユーザーの関心を高めたり、実際に送客したり、といったことが、より効率的に行えるようになるからです。

ネットと、交通、店舗の利用状況を紐付けて利用も

 たとえば本誌のニュースを見てみると、「ジャンボ機「747」の“鼻”を使ったNFCポスター、沖縄でO2O実験」といった記事が掲載されています。これは、7月~9月まで行われていたO2Oの実証実験を紹介する記事です。この取り組みでは、ヤフー、大日本印刷(DNP)、日本航空の(JAL)の3社が、沖縄の観光情報や特典を提供するスマートフォンアプリ「JAL沖縄」の提供を開始し、あわせて那覇空港にNFCリーダーライター搭載のポスターを設置しておき、かざすと「JALokinawa」アプリをダウンロードできる環境を整えていました。この取り組みは、「O2O」の一環とされています。

今夏、那覇空港に設置されたNFC対応ポスター。ジャンボジェットの先端部分が用いられ、子供の好奇心をくすぐり、スマホアプリをダウンロードさせて、実店舗を案内する仕組み

 また10月に掲載されたニュース「阪急阪神とNTT、スマホと連動する“O2O”サービス」では、鉄道事業者や通信事業者らが協力して、大阪と兵庫にある商業施設での共同実験を紹介しています。この実験にあわせてスタートした新サービス「SMART STACIA」は、スマートフォンや携帯電話向けに、商業施設のキャンペーン情報やクーポン、ポイントサービスを提供する会員制サービスです。ネットを通じてユーザーに情報を提供し、店舗へ誘導する「O2O」の1つとして提供されます。実験を通じて、ユーザーが利用した鉄道の乗降情報、商業施設での購買情報、スマートフォンアプリでのチェックイン、NFC端末へのタッチ情報、スマートフォンアプリの利用履歴など、それぞれが紐付けたビッグデータとして分析し、ユーザー1人1人に向けた情報提供が行われます。

 こうした取り組みから見えてくるように、現在、O2Oの考え方に基づく、さまざまな企業のサービスは実験的に用いられています。実際の商用サービスとして定着しているところはまだ少ないのですが、実験の結果を受けて、今後、徐々に定着すると期待されています。




(大和 哲)

2012/11/6 12:06