第522回:周波数再編 とは
現在、いろいろな周波数帯を使う機械が存在します。電波の使われ方は、歴史的な経緯から、細切れに混在している状態の帯域がいくつもあります。しかし、システムが古くなってあまり使われなくなった周波数帯や、逆にデジタル化や広大域化によってさらに多く広く周波数帯を使いたいという状態のシステムもあります。後者の代表例は携帯電話でしょう。
諸外国でも、電波を利用するさまざまな機器がありますので、海外との混信が起きやすくなることがあります。また、日本独自の電波の使い方をすると、国際規格と整合性がなくなり、海外で日本製品が使いにくくなったり、あるいは逆に日本で海外製品が使いにくくなったりするといったケースもあります。携帯電話では、CDMA方式で同じような周波数を使っていながら、上り通信用の周波数と下り通信用の周波数が、日本と諸外国では逆になっている部分があり、同じCDMA方式ながら、海外から持ち込んだ製品は使えないことがあります。
今回紹介する「周波数再編」とは、私たちが使っている電波の周波数を変更することを意味する用語です。いわば周波数の「区画整理」とようなものです。
周波数再編を行うことで、昔から使っている機器の中には、再編後、電波が使えなくなるものが出てくる一方で、新しく、より便利なシステムが利用しやすくなります。電波という限られたリソース(資源)を有効に活用できることにも繋がります。
■総務省が周波数割当
「電波をどの周波数でどの種類の機械が使ってよいか」は、総務省が割り当てを行っています。
日々、周波数に関する告示が行われていますが、携帯電話の普及などを受けて、周波数割当を抜本的に見直して、「大胆な区画変更」が必要であると考えられるようになりました。
このため、総務省は、この方針を検討させた情報通信審議会の答申を受けて、2003年10月10日に「周波数の再編方針の公表」で周波数の再編方針の基本的な考え方を示した案を公表しました。周波数の再編に向け、2004年以降、「周波数再編アクションプラン」が策定され、、毎年見直しがされています。ただし、この「周波数再編アクションプラン」も政治の意向を受ける可能性もあります。たとえば、昨年4月には原口総務大臣(当時)が、閣議後の記者会見で、周波数再編の方針について触れたことがあります。こうした流れもあり、今後、周波数再編は、さらに大きな動きがある可能性もあります。
■携帯電話への影響
ところで、この周波数再編は、携帯電話へ影響することもあります。近い将来において、大きなインパクトがあるのは、800MHz帯の再編です。この周波数帯域は、NTTドコモのムーバ(PDC方式)、auのCDMA2000方式の一部などで使われています。
この800MHz帯については、周波数の有効利用などを目的として、2003年10月に総務省が公表した「周波数の再編方針」に従い、2012年7月24日までにNTTドコモとKDDIは対応しなければなりません。たとえば、NTTドコモでは、800MHz帯で、PDC方式のサービス「mova」や「ぷりコール」、パケット通信サービスの「DoPa」などを提供しています。しかし周波数再編の対象となったことで、これらのサービスの新規申し込み受付は2008年11月30日を以ってすでに終了し、現在は利用できる機器であっても、2012年3月31日に終了し、使えなくなることになっています。
またau(KDDI)の携帯電話の一部にも影響があります。auでは、同じ800MHz帯でも、“旧800MHz帯”“新800MHz帯”と呼ばれる2つの周波数帯が割り当てられていましたが、このうち“旧800MHz帯”が再編対象となり、この帯域を使う携帯電話は、再編後、利用できなくなります。そこで、auでは、今後使えなくなる機器を公表しています。
2011/7/5 12:24