第493回:モバイルWi-Fiルーター とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「モバイルWi-Fiルーター」は、バッテリーを内蔵し、携帯電話やWiMAXといった無線ネットワークを使ってブロードバンドインターネットに接続できる携帯型のルーターです。無線LAN(Wi-Fi)を経由して、携帯ゲーム機やタブレット端末などでどこでもインターネットに接続できるようになります。

 モバイルWi-Fiルーターでは、携帯電話網のような無線線通信サービスを使うため、SIMカードを装着することがあります。インターネット接続を使いたい無線LAN機器では、モバイルWi-FiルーターのSSIDなど、アクセスポイントを識別する情報を登録することになります。

 つまり、無線LANを使う機器からすると、モバイルWi-Fiルーターは、ADSLや光回線を使った固定回線に接続するWi-Fiアクセスポイントと全く同じように利用できるわけです。

どこでも無線LANを利用できるように

11月下旬発売予定のNECアクセステクニカ製「AtermWM3500R」

 この種の製品としては、イーモバイルやソフトバンクモバイルが販売している「PocketWiFi」をはじめとして、バッファロー製「ポータブルWi-Fi」、同型品のドコモ版「BF-01B」がありますし、UQ WiMAX対応の製品ではNECアクセステクニカ製AtermWM3500Rなど、さまざまな事業者、メーカーから販売されています。かつては、USB型の通信アダプターとWi-Fiルーターを接続して利用するような製品もありましたが。最近では、携帯電話網・WiMAX回線に接続する部分と、Wi-Fiルーター部分を一体化したタイプが主流です。

 これまで、ポータブルゲーム機やタブレット端末などの無線LAN搭載機器では、屋外や外出先でブロードバンドインターネット接続を利用しようとすると、公衆無線LANサービスを利用するのが主流でした。しかし、公衆無線LANは、空港、ホテル、駅コンコース、一部のファストフードなど限られた場所でしか利用できませんし、その利用できるエリアも、携帯電話など無線通信サービスに比べ、大きく限られています。

 モバイルWi-Fiルーターを利用することのメリットは、そのような場所を探さなくても、どこででも無線LAN搭載機器でブロードバンドインターネット接続を利用できることにあります。

 携帯電話網やWiMAXのサービスエリアは、公衆無線LANサービスよりも非常に広く、屋内でも小型基地局や中継局(レピーター)などで、非常に多くの場所で接続を利用することが可能です。なお事業者によっては、「モバイルルーター」、「ポータブルWi-Fiルーター」「モバイルWiMAXルーター」などと呼ばれている場合もあり、必ずしもその呼び方が統一されているわけではありません。

付加機能を持つ製品も

ドコモ「BF-01B」

 モバイルWi-Fiルーターは、携帯電話網あるいはWiMAX網を使ったインターネット接続をする、Wi-Fiアクセスポイントとなって無線LANで他の機器にインターネット接続を提供する、という機能は共通ですが、機種によって他にもさまざまな機能を搭載しており、それぞれの機種の特徴となっています。

 たとえば、機種によっては、アクセスポイントを識別するためのSSIDを複数個設定できる「マルチSSID」機能などはその一つです。手持ちにモバイルWi-Fiルーターが1台ある場合、携帯ゲーム機からアクセスポイントを検索すると、そのSSIDは「AP123456」と見せるようにしておきながら、別のタブレット端末からは「AP987654」と、別のSSIDを見せることにできるようです。「マルチSSID」機能を利用すると、対応できるWi-Fi接続の暗号化レベルが違う機械をそれぞれのレベルに合わせた接続で利用できることがメリットです。タブレット端末向けには、高度な暗号となる「WPA2-AES」を、携帯ゲーム機には「WEP」を使う、といったことができます。

 これはWEPのみ利用できる携帯ゲーム機が存在することから、モバイルノートパソコンのような、情報の秘匿性が求められるデバイスでは、解読されにくい「WPA2-AES」を、個人情報をあまり取り扱わず、他のユーザーとのゲームをプレイするために通信する携帯ゲーム機のようなものでは「WEP」を使う、といった形になります。

 あるいはドコモのモバイルWi-Fiルーター「BF-01B」、バッファロー製「ポータブルWi-Fi」のように接続先の回線として、携帯電話回線網のほか、公衆無線LANサービスに接続できる、というような製品もあります。これであれば、手動で切り替えることなく、シームレスに携帯電話網と公衆無線LANを利用できます。

 また「らくらく無線スタート」「AOSS」といった、クライアント機器の接続設定を簡単に行う手段も用意されたモバイルWi-Fiルーターも存在していますし、海外で利用することを前提にした国際ローミング対応モバイルWi-Fiルーター、あるいは海外向けモバイルWi-Fiルーターのレンタルサービスもあります。

 



(大和 哲)

2010/11/16 12:38