第492回：WiMAX2 とは

　「WiMAX2」は、モバイルでのデータ通信用に使われている規格「モバイルWiMAX」の次世代規格です。

　LTEの次世代規格であるLTE-Advancedと並んで、国際電気通信連合（ITU）によって第4世代移動体通信（4G）の規格として選定された方式の1つでもあります。また「WirelessMAN-Advanced」と呼ばれることもあります。

　日本国内では、UQコミュニケーションズがモバイルWiMAXを用いたサービスを提供しています。同社は展示会や記者発表などを通じて、「WiMAX2」を利用した技術の早期確立と、実用化に向けた実証実験を推進しており、実際に展示会でのトライアル装置を使った動態デモの実施や、フィールドでの実証実験も既に開始されています。

　商用サービス提供は、2012年ごろを目指しています。

■下り最大330Mpbsに高速化、高速移動にも対応

　現在サービス提供されているモバイルWiMAXは、IEEEの規格としては802.16e-2005をベースとしたものですが、WiMAX2はこれを高度化したIEEE802.16mに含まれるモバイル通信用の規格です。

　用途としては、現在のモバイルWiMAXとほぼ同様で、家庭などに置いてあるパソコンに加え、モバイルノートパソコンやスマートフォン、モバイルWi-Fiルーター（ルーター経由でのWi-Fi対応携帯ゲーム機やミュージックプレーヤーなど）から、高速なインターネット接続をするための回線と想定されています。日本では登場していませんが、米国ではモバイルWiMAXのサービスを提供するSprint NextelからWiMAX対応のAndroidスマートフォン「HTC EVO 4G」が販売されています。

　WiMAX2の最も大きな特徴は、従来より高速化した通信スピード、そして高速移動への対応です。

　まず高速化に関してですが、WiMAX2では、4G（4th Generation、第4世代）世代の移動体通信として、規格上、静止時最大1Gbpsを目指したものとなっています。

　通信速度についてはセル（1基地局がカバーするエリア）辺りのスループットをこれまでの2倍以上とし、また、これまでより広い帯域の電波を利用することで高速化されています。これまでのモバイルWiMAXでは、帯域は10MHz幅でしか使われていませんでしたが、WiMAX2では10、20、40MHzの帯域幅で利用できます。

　さらにMIMO（Multi Input Multi Output）と呼ばれる、アンテナを複数本使うことで高速化する技術も用います。モバイルWiMAXでは2×2 MIMOが標準的な仕様となる一方、WiMAX2では4×4 MIMOか8×8 MIMOが標準的な仕様とされています。ただし、実際には端末に8本のアンテナを入れるスペースを確保するのは、現状では難しく、4×4 MIMOが主流になるといわれています。

　これらにより、実際のサービスでの通信速度は大きく向上することが見込まれており、たとえば、現在、下り最大40Mbps、上り10Mbpsで利用できるUQの場合、WiMAX2になると8倍以上のパフォーマンスが実現でき、下り最大330Mbps、上り最大112Mbpsでの通信が可能であるとしています。2010年10月に開催された展示会「CEATEC JAPAN 2010」では、動態デモにおいて330Mbpsを超える通信を達成したことが紹介されていました。

　もう1つの特徴は、高速移動への対応です。移動中の通信に関しては、モバイルWiMAXではこれまで、最適な性能を保証できる移動速度は時速0～15km、多少性能は落ちるものの通信できる速度は時速120kmまでとされています。一方、WiMAX2では、時速350kmまでは「接続保持速度」、つまり性能は劣化しても接続が保たれる速度とされました。従来の3倍近くまで性能が向上することになりますが、基地局の電波が届いていれば、新幹線に乗っているときでも利用できると期待されます。

　互換性に関して、WiMAX2はモバイルWiMAXとの互換性を考慮し、これを含んだ規格となっていることも特徴の1つです。そのため、将来的に登場するであろうWiMAX2対応端末は、10MHz帯域のみを使い、従来のモバイルWiMAXの基地局との通信も可能になっています。