第453回:ダイナミックフォト とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


カメラだけで作れる、被写体が動く合成写真

 「ダイナミックフォト」(Dynamic Photo)は、動く合成写真を手軽に作成できる機能です。カシオ計算機のデジタルカメラ「EXILIM」シリーズに搭載されており、パソコンなどを使わずに作成できます。

 映像編集技術の1つに、「キーイング」と呼ばれる技術があります。これは画像・映像の一部を抜き出すというもので、デジタルカメラ上で連続撮影した写真に対して行い、他の写真に合成する機能が「ダイナミックフォト」です。

 ダイナミックフォト対応の「EXILIM」では、20枚の連写画像の中から動く被写体をカメラが自動で切り抜いて、背景となる他の写真と合成できます。背景は、被写体の写った場所とは、全く別の写真を使うことができるので、実際には訪れていない場所や、実際には入り込めないイラストなどと被写体を合成した写真を作ることが可能です。なお、被写体は、連続撮影だけでなく、1枚画像でもできるので、動きがない、単純な合成写真を作成することも可能です。

 作成した合成画像は、EXILIM上でそのまま再生できるほか、AVケーブル経由で、テレビと接続し、大画面上で動く写真を表示させて楽しむこともできます。あるいは、専用Webサイトへ送信することで、PCやデジタルフォトフレームで再生できるほか、携帯電話で再生可能な動画形式に変換することなども可能です。

auの「CA003」はダイナミックフォトを搭載する

 また、携帯電話で閲覧したい場合、カシオ計算機が無料で提供しているパソコン向けソフト「Dynamic Photo Manager」で動画に変換することもできます。このソフトでは、「ダイナミックフォト」機能で撮影したデータを動画に変換するほか、携帯電話で見られるようにQRコードを表示することも可能です。あるいは、カシオのWebサイト「ダイナミックフォト広場」では、ユーザーが撮影したダイナミックフォトを投稿でき、広く世間に公開することも可能になっています。

 ダイナミックフォトは、デジタルカメラだけではなく、カシオ製EXILIMケータイ「CA003」でも、利用が可能になっています。ただし、携帯電話の場合、連写写真は10枚撮影です。「CA003」の場合、ダイナミックフォトで作成した画像は、デコレーションメールのパーツとして利用することも可能で、デジタルカメラとは違った活用ができるでしょう。

被写体撮影はシンプルな背景で

 ダイナミックフォトの特徴は、被写体を撮る際に、カメラが自動的に背景と被写体を切り分けてくれることでしょう。これは、EXILIMが搭載している画像処理エンジン「EXILIMエンジン」(携帯電話の場合はEXILIMエンジン for Mobile)により実現しています。

 この機能は、撮影された画像の中から特徴的な部分、つまり急激に色や明るさが変わっている部分から被写体の輪郭を抽出することで、画像中の被写体部分を判断し、ここから被写体の部分のみ画像から切り抜くという処理を、画像処理エンジンが行うことで実現しています。

 そのため、被写体を上手に切り抜くには、撮影する際に、


  • 目印のない平坦な壁

  • 背景にモノなどを置かずに

  • 背景とは、被写体が違う色の服を着る


などをしておく必要があります。逆に背景と同じ色の服を着るなどして、画像処理エンジンに輪郭を判断させないように撮影すると、“首から上だけ”を被写体にすることもできるでしょう。また、被写体を写す際、近くに壁があって影ができてしまうと、そこも被写体の一部として写ります。このあたりは、いわゆるクロマキー撮影(ブルーの背景などを使って、その色だけ画像から落とす合成写真や動画の撮影手法)などと同様の感覚だと思えばいいでしょう。

 それ以外の注意点としては、ダイナミックフォトの被写体を写すときには、カメラをなるべく動かさないようにして、ぶれた写真にならないように気をつけなくてはならないということがあげられます。これはクロマキー撮影のように「色」を抜くのではないためです。

 ダイナミックフォトでは、カメラが画像中の特徴点を捉えて画像の一部を切り抜くアルゴリズムを使っているため、ぶれて輪郭のわからない写真からは被写体を切り取れないのです。画像を解析して被写体を見つける技術は、EXILIMの特徴である「さがしてフォーカス」機能でも利用されています。これは、写真を撮影するときにピントを合わせなければならない位置をカメラが自分で探し出してくれる機能で、顔認識でのピント調整と違って、人物の顔以外の被写体にカメラを向けても、自動的に枠の大きさや数も変えて適切な場所にオートフォーカスを行ってくれるのです。

 



(大和 哲)

2010/2/2 12:09