ケータイ用語の基礎知識

第822回:青少年ネット利用環境整備協議会とは

 今回紹介する青少年ネット利用環境整備協議会は、コミュニティサイトやアプリ運営を行う企業が中心となって2017年8月に発足した団体です。

 コミュニティサイト・アプリでの子供の犯罪被害を防ぐことや、子供が安心かつ安全にコミュニティサイト・アプリが利用できるよう、環境の向上を目指しています。

 協議会には、グリー、サイバーエージェント、DeNA、フェイスブック ジャパン、ミクシィ、LINEの6社が幹事会社となって、警察庁も協力しています。イグニス、ココネ、ナナメウエ、モイ、ユードー、ITI、studio C、Social Town、Maleoといった企業も参加しています。

 今後は幹事会社・参加会社が主体となり、有識者・警察庁の協力を得て「参加各社の情報共有」「調査研究」「勉強会の開催」「広報啓発」などが行われる予定です。

2008年の法改正で犯罪の舞台が変わる

 2008年、「出会い系サイト規制法」が改正されました。このとき、出会い系サイトでの年齢確認方法が厳格化され、それに伴い出会い系サイトに起因する被害児童(ここでは18歳未満の子供を指します)数は減りました。警察庁による調査では、現在では、被害児童数は改正されたころと比べ、1/10以下となっています。

 しかし、逆に、一般のSNSやコミュニティサイトでの被害児童数は、2008年の792件から2016年の1736件と、倍以上増えてしまっています。特に児童買春および児童ポルノの被害児童は4倍以上に激増しました。児童買春などのきっかけとなる主なサイトやアプリが、いわゆる出会い系サイトから、一般のSNS、コミュニティサイトへ移行したと言える状況でしょう。

 SNSやコミュニティサイトは現在、多くの人に使われています。LINEやTwitter、Facebookといった総合コミュニティサイトは半ば社会基盤に近いものになってきたと言えるでしょう。こうしたサービスが一般に普及し、社会の縮図と言える形となっていけば、中には悪意を持つ人も増えていきます。たとえば人を騙したり、金品を盗んだりする。あるいは性的犯罪を目的にするというケースです。その一方で利用者の中には子供も多く含まれます。子供にとっても安心かつ安全にコミュニティサイトやアプリを利用できる環境作りが急がれる状況です。

業界の自主対策で犯罪は減らせるか

 協議会参加企業の顔ぶれを見ると、スマートフォンやパソコンを使ったコミュニティサービスのジャンルとしては、LINE、Facebookといった“総合交流系”、ひま部などのチャット、ツイキャスのような動画投稿・配信系、QRコードなどIDを交換し面識のないものと交流する「ひまトーーーク」、ランダムに他のユーザーと会話できる「斉藤さん」など、主立ったコミュニケーションサービス、アプリがカバーされています。

 その一方で、2017年9月現在、大手サービスの「Twitter」など、ユーザーの多いサービスであっても、加入していない企業もあります。今後、どう参加企業を増やし、具体的な活動をしていくのか、協議会の課題でしょう。本稿掲載時点では、協議会の公式サイトすら用意されていません。

 基本的には参加企業が主体となって、課題の研究や、対策を提供していくとされています。出会い系サイトが法整備によって規制され犯罪数が減りましたが、民間のリードでどこまで対策が進められるのか、今後注目されそうです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)