ケータイ用語の基礎知識

第815回:Smart Device Link とは

 「Smart Device Link(SDL)」とは、カーナビやカーオーディオといった自動車用の機器(車載機器)とスマートフォンを連携するために用意された仕様です。

 SDL対応の車載機器と、SDL対応アプリをインストールしたスマートフォンをリンクさせると、たとえば、スマートフォンを操作せずとも車載機器からコントロールすることができます。アップルのCarPlayやグーグルのAndroid Autoと比べ、発想は近いものと言えるかも知れません。

 運転中に必要な情報を、アプリ側が表示することもできます。このときも、スマートフォン単体での表示と違って、ドライブ中に必要なもののみ、かつ運転中でも見やすいレイアウトを表示することができます。運転中のスマートフォンの操作は安全のため禁止され、触っても反応しません。

オープンソースで公開、協業する企業も

 SDLは、オープンソースのソフトウェアとしてSDK(ソフトウェア開発キット)とライブラリ一式が、公開されています。車載機はその仕様が公開されていませんので、作れるのはメーカーのみとなりますが、スマートフォン側のアプリは誰でも仕様に沿ったアプリを作成できます。

 2017年6月には、トヨタとLINEが、SDLにLINEのAIプラットフォーム「Clova」を活用した協業の可能性を検討すべく、基本合意に達したことが報道されています。LINEではスマートスピーカー「WAVE」を発売する計画で、「Clova」によって音声でのスピーカー自身やリンクした機器の制御を行えるようにする予定ですが、スマートフォン経由で「Clova」から、同じようにSDLをコントロールできるようになるのかもしれません。

 SDLの仕様は非営利団体「スマートデバイスリンク コンソーシアム」が管理しています。この団体は、米国のFordと日本のトヨタ自動車が設立したもので、現在、富士重工業、マツダ、スズキ、PSAグループ、Elektrobit、Luxoft、Xevoといったサプライヤーが参画しています。

 また、携帯電話事業者では、KDDIがこのコンソーシアムに参画しています。

 SDKはスマートフォン用だけでなく、車載機用のものもあり、QNX、Microsoft、Android、Linuxといった様々な車載機で使われているOSに対応しています。

 このため、車載機用がSDLに対応し、スマートフォン用も同じく対応していれば、お互いに異なったOSを搭載していても、スマートフォンから車載機をコントロールしたり、逆に車載機がスマートフォンの機能を使ったりといったことが可能です。

実用化も間近、米国では既に搭載車も

 KDDIでは、2017年6月、中国・上海で開催された展示会「Mobile World Congress Shanghai 2017」において、スマートフォンから車載機器パネルへの表示の転送、操作といったデモを行っていました。

 2017年7月現在、SDL搭載のカーナビなどは発売されていませんが、近い将来に登場すると期待されています。

 SDLは、もともと米国の自動車メーカーであるフォードにおいて「既存のスマートフォンと車両を接続できるソリューション」として開発が開始されました。

 米国では2011年モデルの「Ford Fiesta」のオプション「Sync AppLink」として商用化されており、現在では「Focus」や「Mustang」といった車種でも利用できます。現在、AndroidとBlackBerryに対応しており、対応アプリもいくつかリリースされています。たとえば、AppLink対応のAmazon Musicなどもあり、これを利用すると、クラウド上のAmazon Musicライブラリやスマートフォン内に保存してある音楽データを、カーオーディオ上で再生することができます。米Amazonでは、音楽CDを購入すると自動でクラウド上に購入曲の音楽ファイルを保存してくれる「Amazon AutoRip」というようなサービスもあるので、自分で買った音楽の多くを、このAppLinkを使って自動車の中で聴くことができるわけです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)