山根康宏の「言っチャイナよ」

Xiaomiが新製品2機種発表、ボタンレススマホや女子スマホが登場

 世界シェアで着々と順位を上げる中国のスマートフォンメーカー。本誌「みんなのケータイ」でもおなじみの香港在住のモバイル・ジャーナリスト山根康宏氏が最新の中国スマホ事情を解説します。2015年1月は、今世界で最も勢いのあるXiaomiが2つの新製品を発表。また世界初のボタンレススマートフォンや、女性に特化したスマートフォンなどが登場しました。

Xiaomi、新型低価格スマホ「紅米2」は女性をターゲット

 Xiaomi(北京小米科技有限責任公司)は中国で売れ行き上位を走る低価格スマートフォン「RedMi(紅米)」を1年半ぶりにモデルチェンジ。ディスプレイサイズは4.7インチのままに、本体をパステルカラーとした「RedMi2」(紅米2)の販売を開始した。価格が安いことだけではなく、ピンクなどカラフルな本体色を追加。同社のWebページでは女性が使っているシーンをふんだんに掲載するなど、ターゲットは10代後半から20代の女性を強く意識している。800万画素カメラやLTEの対応など基本スペックはほとんど変わっていない。

 チップセットはSnapdragon 410(1.2GHz、クアッドコア)を搭載。ディスプレイは4.7インチHD(1280×720ピクセル)。通信方式はTD-LTE/FDD-LTE/TD-SCDMA/W-CDMA/GSMに対応。TD-SCDMA非対応版(中国聯通向け)と、TD-SCDMAの代わりにCDMA2000対応(中国電信向け)のモデルも用意。カメラは800万とインカメラ200万画素を搭載。本体カラーはホワイト、ブラック、ピンク、イエロー、ミントグリーンの5色。価格は699元(約1万3320円)。

RedMi2

Xiaomiの1月2機種目はフラッグシップのノートサイズ端末

 Xiaomiは1月にもう1機種の「Mi Note」を発表した。5.7インチディスプレイに高速CPUを搭載、Mi Noteはメモリ容量もアップしたフラッグシップモデル。フロント側のディスプレイは側面側が曲面形状で手に持ちやすく、前後共にゴリラガラス3で覆い強度も増している。専用のDAC(デジタル-アナログ変換回路)を搭載し音楽再生にも優れている。メインカメラは最大32秒間の長時間露光も可能、三脚などに固定しての夜景撮影にも適している。

 スペックはSnapdragon810(2.5GHz、クアッドコア)搭載、5.7インチフルHD(1920×1080ピクセル)ディスプレイ、メモリはRAM 3GB、ROM 16GBまたは64GB。カメラはメインが1300万画素、フロントに500万画素。通信方式はTD-LTE、FDD-LTE、W-CDMA、TD-SCDMA、GSM対応。価格は16GB版が2299元(約4万3840円)、64GB版が2799元(約5万3380円)。同社のフラッグシップモデルはこれまで1999元(16GB)だったが、2000元を超えたのは本モデルが初となる。なお、発表会で同社CEOの雷軍(レイ・ジュン)氏はiPhone 6 Plusとの比較を多用。ライバルは同じ画面サイズのGALAXY Note 4ではなく、より高価格なiPhone 6 Plusとしている。

Mi Note

OPPOからAV強化のデザインファブレット「U3」登場

 OPPO(広東欧珀移動通信有限公司)は5.9インチの大画面にオーディオとカメラを強化したファブレット「OPPO U3」を発表した。大画面を有効活用できるように画面内のアプリ表示は上下に2分割し、2つのアプリを同時表示できる。カメラは前後が1300万画素と500万画素でフロント側にもフラッシュを搭載しセルフィーも美しく撮影できる。また、旭化成エレクトロニクスの音源チップを搭載し高音質な音楽再生も可能である。

 本体背面はひし形のパターンを交互に並べた独特のデザインで、天然素材のような美しい仕上がりとなっている。また自社開発した独自の急速充電にも対応、30分でバッテリーを75%まで充電できる。チップセットはMTKのMT6752(1.7GHz、オクタコア)を搭載。ディスプレイは5.9インチフルHD(1920×1080ピクセル)、RAM 2GB、ROM 16GB。通信方式はTD-LTEの4バンド、B38/B39/B40/B41に対応、TD-SCDMAとGSMにも対応する。本体サイズはサイズは156.8×81×8mmと5.9インチモデルだけあり、やや大きめ。価格は3499元(約6万6720円)。

OPPO U3

世界初のボタンを一切廃止した新世代オペレーションスマホ「7x」をMantaが発表

 Manta(上海華豚科技有限公司)は電源ボタンやボリュームボタンなどの物理的なボタンを無くし、指先だけで操作が可能な新しいUIを採用したスマートフォン「7x」を発表した。普通のスマートフォンなら側面や背面にある操作ボタンは一切なく、上部にSIMトレイ、下部に独自の41ピンの「Duckbill」コネクタを備える(microUSBとの変換アダプター付属)。本体サイズは151.3×76×9.8mmで若干厚みがあるが、これは側面全体にセンサーを配置しているからだと思われる。側面の上下に張られたセンサーが常に握っている手のひらや指先を感知しており、たとえば着信があれば親指のそばにポップアップで発信者の電話帳がカード型で開き、タッチして着信できる。ボリュームの上下は画面下部のソフトキーのホームボタンの左右を指先でスワイプすればよい。電源のON/OFFは本体右側面上側のセンサーをタッチで行う。

 チップセットはSnapdragon 801(2.5GHz、クアッドコア)、5.5インチフルHDディスプレイ(1920×1080ピクセル)、RAM 2GB、ROM 32GB。カメラは背面とフロントどちらも1300万画素を搭載。なお、OSは非ボタンUIに対応したAndroid OS 4.4改変の自社開発OS「MO7 OS」を採用。通信方式はTD-LTE、FDD-LTE、W-CDMA、GSMに対応。バッテリーは4200mAhの大容量のものを搭載する。価格は4080元(約7万7720円)。なおバッテリー容量を小型化し厚みを抑えた「7L」も追って発売予定。

7x

TCLからピンクカラーの女性向けスマホ

 TCL(惠州TCL移動通信有限公司)は20代前後の女性をターゲットとしたスマートフォン「i718M」の販売を開始した。本体はピンクとホワイトの2色展開。背面はカメラの周りをダイヤモンドカットした宝石状のパーツで覆い高級感を出している。このTCLによると宝石は15個、1.75mmサイズで57面カットされ、3000度以上の高温処理された硬度8のものだという。そして、電池カバーも三角の細かい凹凸を並べた美しいデザイン。表面はベビースキン仕上げで肌触りは柔らかい。またフロントカメラの画素数は800万と高く、セルフィー好きな女性のために美顔モードを備える。なお、ピンボケして撮影に失敗した写真も、後からピントを動かしてピントのあった写真に仕上げられる。

 スペックはチップセットにMT6752M(1.5GHz、オクタコア)を搭載。5.5インチHDディスプレイ(1280×720ピクセル)、メインカメラは1300万画素、フロントカメラは800万画素。カメラ。通信方式はTD-LTE、TD-SCDMA、GSM対応。Andorid OS 4.4上に独自UIを搭載、テーマカラーはピンクなどこちらも女性を意識したカラーのものが揃っている。価格は1799元(約3万4280円)。

i718M

Coolpadの低価格シリーズからハイスペックモデル登場

 Coolpad(宇龍通信)は1000元を切る低価格スマートフォンラインナップの「Dazen(大神)」シリーズにハイスペックモデルの「Dazen X7」を追加すると発表した。5.2インチ有機ELフルHDディスプレイや金属フレーム、背面ガラス仕上げなど性能だけではなく外見も高級感のあるDazenシリーズのフラッグシップと呼べる仕上がり。99元(約1880円)を支払えばディスプレイ破損時の無償交換など保険サービスも受けられる。本体カラーはベーシックなホワイト、ブラック、シャンペンゴールドに加え、ピンクも追加。金属ボディーのピンクは他社にはないラインナップだ。

 中国3キャリア向けにチップセットと対応通信方式で3モデルが存在する。Snapdragon 801(2.3GHz、クアッドコア)またはMT6595M(2.0GHz、オクタコア)を搭載。カメラはメインが1300万画素、フロントが800万画素。RAMは2GBまたは3GB。OSはAndroid OS 4.4改変のCoolUI 6.0を搭載。通信方式は3モデルごとにTD-LTE、FDD-LTE、W-CDMA、TD-SCDMA、CDMA2000、GSMのうちのいずれかを採用。価格は全通信モデル対応の3GB版が1799元(約3万4280円)。CDMA2000非対応の2GB版が1699元(約3万2300円)。

Dazen X7

QingChengの「V1」はIP68対応の防水防塵スマホ「V1」発売

 QingCheng(上海青橙実業有限公司)はオレンジカラーが目を惹く防水防塵対応スマートフォン「V1」を発表した。ステンレス系素材のフレームで本体の強度を高め、ディスプレイには1.1mm厚のゴリラガラス3を採用。防水防塵機能はIP68相当で水深1.5mの水中でも30分の利用に耐えられる。またディスプレイは液晶ではなく有機ELを採用したことで超低温での利用時も表示が乱れないという。なお剛性の高い箱型の輸送ケースも別売される。

 位置測定はGPS、GLONASS、北斗など複数のシステムに対応し世界中どこでも正確な位置を把握できる。カメラは1600万画素と高画質なものを搭載、光学手振れ補正にも対応する。スペックはチップセットがMT6752(1.7GHz、オクタコア)。ディスプレイは5インチHD(1280×720ピクセル)。メインカメラは1600万画素、フロントカメラは500万画素。通信方式はTD-LTE、FDD-LTE、TD-SCDMA、W-CDMA、GSMの5モード対応。OSはAndroid 4.4を改変したMyUI 3.0を搭載。サイズは149.5×78.5×12.9mm、重量は229g。価格は3999元(約7万6250円)。

V1

ついに登場! 1万円のLTEスマホ「小宇宙S1」

 中国各メーカーのスマートフォンは低価格化が進み、今や1000元(約1万9000円)を切る製品でも高性能な製品が増えている。そんな中で、日本円でも1万円を切るLTE対応のスマートフォンがXYZ Shouji(小宇宙、深セン市深盈泰科技有限公司)から発売された。それが「小宇宙S1」である。価格は499元(約9510円)で、もちろんSIMフリー。LTEはTD-LTEのみ対応でFDD-LTEには対応しないものの、4Gスマートフォンでこの価格は驚異的だ。

 低価格品ゆえスペックも低いと考えがちだが、ディスプレイは5インチで解像度はHD(1280×720ピクセル)、カメラは1300万画素+500万画素。ディスプレイの上に手をかざすだけで画面表示スクロールができるなど、低価格製品には十分すぎる性能を持つ。TD-LTE、TD-SCDMA、GSMに対応。OSはAndroid改変の、アリババが開発したAliyun OS 2.9を搭載する。

小宇宙S1

今月のメーカーピックアップ「Coolpad」

Coolpad

 Coolpad(通称:宇龍通信、宇龍計算機通信科技(深セン)有限公司)は中国でも老舗のスマートフォン専業メーカー。創業は1993年と古く、最初はポケベルなどを手掛けていた。2003年には中国国内メーカーとして最初のカラー液晶携帯電話「Coolpad688」を開発。当時流行のモトローラのフリップ式タッチパネル端末を模した形状で、ビジネス層をターゲットにした高機能端末だった。2004年には世界初のGSMデュアルSIM対応携帯電話を発売。これもSIMカードを複数併用するビジネス向け端末で、同社の携帯電話は一般コンシューマー層ではなくビジネス層向けの製品に特化していく。大画面ディスプレイの搭載や黒を基調とした高級感ある仕上げなど、他の国内メーカーとは異なる路線は同社のイメージを特別な存在に育て上げていく。タッチパネル搭載携帯電話向けの独自OSも開発、他社が台湾メディアテック製のフィーチャーフォンプラットフォームを採用に動いていく中でも独自技術の開発に注力。Coolpadの名は「高級・高機能・ビジネス向け」という、中国国内でも唯一無二のブランドとして広く知られるようになっていった。

 その後はWindows Mobile搭載のスマートフォンもいち早く手がけ、「中国スマートフォンメーカーの顔」としての地位を着々と築く。2010年には最初のAndroidスマートフォン「Coolpad N930」を発売。海外メーカーには無いGSMとCDMA2000のデュアルSIM対応製品でもあった。2011年には世界初のW-CDMAデュアル待受対応の「W770」を発売。なお2015年の現時点でも2枚のSIM両方でW-CDMAを同時利用できるのは大手メーカーを含めこのW770のみだ。その後中国3キャリアがスマートフォンシフトを進める中、Coolpadの製品は各キャリアがこぞって採用を進めていった。2011年からは1000元台の低価格スマートフォンも積極的に投入。2013年に販売した「Coolpad 7295」は低価格ながらも5インチの大画面、500万画素の高画質カメラを搭載し同年のベストセラーモデルにもなった。気が付けばCoolpadは中国国内のスマートフォン販売数でトップのサムスンに次ぐ2番手を、常にLenovoと争うまでのトップメーカーになっていったのだ。

 だが、Coolpadの地位をじわじわと脅かす新興メーカーが現れた。言わずと知れたXiaomi(北京小米科技有限責任公司)である。Xiaomiのハイエンドモデル「Mi」シリーズは当初は一部のマニア層だけが飛びつく商品だったが急激にファンを増やし、2013年7月には1000元を切る低価格モデル「RedMi」(紅米)を発表。Coolpadも1000元を切る製品をいくつか出していたが、主力モデルは1000元台半ばの製品だった。ところが性能が同等で価格が約半分のRedMiに大きく客を奪われてしまう。

 この「RedMiショック」に危機感を覚えた同社が取った戦略は、全く新しいブランドの立ち上げだった。それが「Dazen(大神)シリーズ」である。2014年1月に発表された「Dazen F1」は、RedMiより大きい5インチディスプレイを搭載しながら1000元を切る低価格で大人気となる。またXiaomiにはない7インチタブレットも投入。1000元以下のスマートフォンをラインナップを一気に揃え、Dazenは本家のCoolpadブランドを超える人気と知名度を持つブランドとなった。

 そして2014年1月からはこのDazenシリーズをCoolpadのメインストリームとすることにし、1月には今回紹介するハイエンドの「Dazen X7」も発表。今後中国国内向けはキャリアとの一部協業モデルを除き、Dazenブランドの製品を強化していく。一方海外向けには東南アジアに低価格機を、欧米には少数ながらもLTEスマートフォンを輸出している。海外ではまだCoolpadとDazenのどちらのブランドも認知度が低いことから、今後どのような戦略で販路を広げていくか気になるところ。低価格品のラインナップが多いことから、海外展開を本格的に行えばXiaomiにとっても無視できない存在になっていくだろう。

山根康宏

 香港在住。中国をはじめ世界中のモバイル関連イベントを毎月のように取材し、海外の最新情報を各メディアで発信している。渡航先で買い集めた携帯電話は1000台以上、プリペイドSIMカードは500枚以上というコレクターでもある。