【特別企画】

「老舗にして異色」の「OCN モバイル ONE」、担当者が語る優位性とは?

地力の通信品質と怒濤のサービス改定で攻勢。サービスのポイントや今後の展開は?

OCN モバイル ONEは、大手通信会社NTTコミュニケーションズが提供するMVNOサービスだ。

比較的初期からサービスをしている老舗MVNOで、MVNEとしてMVNO各社へのネットワーク提供も行ない、そしてMVNOとしてシェアトップという、かなり「手堅い」部類の事業者だが、その一方でOCN モバイル ONEならではの料金プランやネットワーク設計を持つという、業界の中では「異色」な面も持っている。また、ここ最近はアグレッシブなサービス向上も行っている。

今回はこのOCN モバイル ONEのサービスについて、NTTコミュニケーションズのネットワークサービス部の宮地祐樹氏に話を聞きつつ、実際にサービスを使いながら、その実力と背景にある技術について検証してみた。

MVNOでiPhone 7、という使用スタイルを検討している人も多そうな昨今。老舗MVNOであるOCN モバイル ONEの強みとは?

かなり使える「ターボ機能オフ」

NTTコミュニケーションズの宮地氏

OCN モバイル ONEはNTTドコモのネットワークを利用しているので、理論上の最大通信速度は、NTTドコモのネットワークと利用端末の対応状況によるが、最大262.6Mbpsとなっている。実際にそれだけの速度が出ることはほとんどないが、通信大手のNTTコミュニケーションズだけあって、回線の品質は高く、なかなか安定している。Web閲覧などをしても、突発的に通信が遅くなってストレスを感じることが少ないのはポイントだ。

渋谷駅近辺で13時半ごろ、SIMフリー端末の「MOTO Z Play」で計測したところ、速度は10〜20Mbpsくらいで安定していた

しかしOCN モバイル ONEの最大の特徴は、速度を制限してデータ通信量のカウントを停止する「ターボ機能オフ」の状態でも、けっこう実用的というところにある。

宮地氏は「OCN モバイル ONEの場合、ターボオフの200kbpsは実際に使用する際の利便性を考慮し、ある程度余裕を持った帯域設計になっています。radikoやSpotifyなど、音声ストリーミングにも活用いただけます」と説明する。実際に計測してみるとダウンロードは約250kbps、アップロードは約260kbpsで、何度か計測してみても200kbpsを下回ることはなかった。ほとんどの場面で200kbpsを超えることを期待できる性能だ。

余裕を持った帯域設計ということで、ターボ機能オフ時でも公称の200kbpsを上回る速度が出る

さらにターボ機能をオフにしているときは、通信の最初の150KBまでだけ速度制限を解除するという「バースト機能」が今年の9月から実装されている。LINEでメッセージを送受信するたびに、Twitterのタイムラインを更新するたびに、150KBだけ速度制限が解除される、というイメージだ。類似機能を実装しているサービスは多数あるものの75KBが一般的で、150KBなのは珍しいという。これは、「画像付きSNS利用や、ニュースアプリでの使用感を重視して150KBに設定した」とのことだ。150KBというと、ごく小さな容量に思えるかも知れないが、テキストデータでいえば7.5万文字(2バイト文字の場合)。画像についても、SNSのタイムラインに表示されるようなサムネイル画像も多くが100KB未満だろう。

Twitterのタイムラインを更新する際も、バースト機能のおかげでテキストは一瞬で受信できる。プロフィールアイコンなどはやや読み込みが遅延する場合もあるが、アプリ内のキャッシュもあるので意外に気にならない

LINEなどのメッセージングアプリの使用であれば、ターボ機能オフでも本当になんの問題も無い

Pokémon GOなどのスマホゲームも、プレイ中にやり取りするデータ量は少ないため、200kbpsでも遅いと感じることは少ない。各種無料通話アプリやRadikoなどのインターネットラジオ、Apple MusicやSpotifyなどの音楽ストリーミングサービスでも、安定して200kbpsが出るのでほぼ問題ない。

動画ストリーミングとなると、さすがに200kbpsではかなりツラいが、たとえばYouTubeだと200kbpsでも見られる低画質モードになるので、低画質ながらもそこそこ視聴できたりもする。ただしYouTubeの広告動画は低画質モードにならないので、キャッシュが多発してやや実用性は低くなる。

実際に使っていると、多くの場面でターボ機能オフでもストレスを感じないので、大容量データをダウンロードするときになって初めて、ターボ機能がオフになっていることに気がつくくらいだ。

話題の音楽ストリーミングサービス「Spotify」は標準音質で96kbps。ターボ機能オフでも余裕を持ってストリーミングできる

ターボ機能のオン/オフ切り替えはスマートフォンアプリから可能

ウィジェットからのオン/オフにも対応。必要なときだけターボ機能をオンにする、などの使い方が捗る

日次プランが特徴的な料金プラン

MVNOの料金というと、月間○GBで月○○円、といった料金プランが多いが、OCN モバイル ONEではそうした月次プランに加え、「1日110MBで月900円」と「1日170MBで月1380円」(いずれも税抜き、データ通信専用SIM・SMS非対応の料金)という1日単位でデータ量が決まっている日次プランも提供している。

110MB/日コース 900円
170MB/日コース 1380円
3GB/月コース 1100円
5GB/月コース 1450円
10GB/月コース 2300円
500kbpsコース
(15GB/月)
1800円

※価格はいずれも税抜き、
データ通信専用SIMカード(SMS非対応)の料金。

日次プランを採用する事業者は少ないが(というかOCN モバイル ONEだけだが)、よくよく考えてみると、日次プランは実利用シーンに即した使いやすい設計となっている。

普通の月次プランだと、使いすぎてパケットが足りなくなり、毎月末に速度制限がかかったり、速度制限を避けるためにデータ量の多めの料金プランを契約することになる。しかし日次のプランだと使いすぎても速度制限がかかるのは日付が変わるまでで、月初だろうと月末だろうと、日付が変わればデータ量はリセットされ、速度制限が解除される。この仕組み、ユーザーにとってはもちろん、事業者にとっても「用意した通信帯域が月末だけ余る」という状況を避けやすく、メリットの大きいものとなっている。

その点について宮地氏は、「月に数GBという業界のスタンダードにユーザーが慣れているので、日次プランは理解されにくいということがあります。実際に使ってもらうとコレ便利じゃんとなるのですが、使ってもらうまでハードルがあるようです」と説明する。なるほど、確かに月に数GBというプランに慣れているので、日次プランはピンと来にくい部分もあるが、使ってみると実利用シーンに当てはめやすいプランである。もちろん、月次プランでの容量繰り越し同様、日次プランも当日余った容量は翌日に繰り越し可能となっている。

OCN モバイル ONEユーザーの中では、1日110MBプランの利用者が一番多いとのこと

また、日次プランの場合、容量追加オプションは「500円で当日は使い放題」という形式となっている。たとえば月1回くらいの頻度で、出張中にパソコンで大容量通信をする、外出先でスポーツ中継を視聴するといったとき、スポットで購入するにはなかなか手頃な金額だ。ターボ機能オンで使い放題になるので、長時間のスポーツ中継をストリーミングで視聴する、といったことも可能である。

ちなみにOCN モバイル ONEの契約者は、無料で専用のWi-Fiスポットサービスを利用できるので、そちらで容量を節約する手もある。全国に約82,000箇所のWi-Fiスポットがあり、大容量アプリのダウンロードや、OSのアップデートなどで活用できるだろう。

MVNOの弱点を補う「電話かけ放題」オプション

大手キャリアは音声通話の「かけ放題」が標準サービスとなりつつあるが、MVNOはビジネスの構造上、完全なかけ放題サービスを提供できていない。しかしOCN モバイル ONEでは、今年8月に「OCNでんわ 5分かけ放題オプション」を先行リリースし、10月より通話料が半額になる「OCNでんわ」の提供を開始した。

提供開始の背景について宮地氏は、「この1年間でお客さまの層がだいぶ変わってきて、通話する人の割合が増えました。こうしたお客さまからの通話かけ放題機能が欲しいという要望にお応えしました。」と説明する。MVNOというと、かつてはリテラシーの高い層がタブレットやルーターのデータ用に契約するケースが多かったが、いまはメイン端末として使う層も増えて、通話のニーズも高まっているようだ。

「OCNでんわ」はいわゆるプレフィックス型のサービスで、電話をかけるときに事業者指定の6桁番号を頭に付与することで、通話料金が安くなるという仕組みになっている。自動的にプレフィックス発信となる「OCNでんわアプリ」も提供されている(Android/iOS)。料金は10円/30秒(税別)と、通常料金の半分となる。OCN モバイル ONEの音声通話付き回線からならば、申し込み不要・月額料金不要で利用可能だ。通話品質は普通の電話と変わらない。

さらに「OCNでんわ 5分かけ放題オプション」は、月850円のオプションサービスで、5分までの通話が課金されなくなる。

2017年1月31日までは月額850円のままで、5分かけ放題から10分かけ放題に拡大するキャンペーンを実施中

安心の端末補償サービス「あんしん補償」

OCN モバイル ONEでは、使っているスマホの故障時、最大5万円までの修理・交換代金を補償する、「あんしん補償」というサービスを今年10月から提供している。これが大手キャリアが提供する端末補償サービスに負けない、非常に使いやすいサービスとなっている。

しまった!と思ってからでは遅いこんな事態に対処するための補償サービスも提供

料金は月額500円(税別)で、通常使用範囲内での自然故障と、事故による破損や水没による故障の両方が補償される。大手キャリアとだいたい同じ価格だが、ユニークなのは加入条件だ。この「あんしん補償」はOCN モバイル ONEで買った端末以外でも、加入することが可能となっている。さらに、加入はいつでも、任意のタイミングで可能、という柔軟さだ(さすがに故障してから加入することはできないが)。

この仕組みについて宮地氏は、「MVNOの場合、必ずしも端末とSIMが一緒に買われるとは限りません。量販店で買ったり、中古を買ったり、もしくは以前使っていたスマートフォンを再利用することもあります。さまざまな調達ルートがありますが、一般的な端末保証サービスでは新品セット購入以外は対応できないケースが多く、ここがひとつのハードルになっていると考えました」と説明する。

MVNOでは端末はユーザーが自前で用意するケースも多い。そうしたユーザーに「安心」を提供するため、ユーザーが自前で用意した端末も補償サービスの対象としているのだ。サービスを悪用される恐れもあるが、その点について宮地氏は、「利用条件として、音声SIM契約中であること、利用回数は1年に2回まで、ご申告いただいた日からさかのぼって90日以内に当該スマートフォンでの接続ログがあること等定めているので、その点は大丈夫だと考えています。」と説明する。

ユーザーが自前で用意した端末で、いつでも補償サービスに入れるのは、非常にありがたいポイントである。

信頼性の高さとサービスの充実の両輪が魅力

OCN モバイル ONEというと大手通信会社NTTコミュニケーションズが提供するだけに、「手堅く信頼性の高いサービス」というイメージがある。しかしよく見てみると、日次プランなど他MVNOにはないユニークなサービスも提供していて、それらが大きな魅力となっている。

サービス向上の次なる一手についても、様々なアイディアがあるようだ。OCN モバイル ONEの今後に期待が高まる

もちろん、大手だからといって地位に甘んじることなく、継続してサービス改善も行っている。バースト転送機能やOCNでんわ、あんしん補償といったサービスはいずれも8月以降に導入されており、今後もネットワーク面では、通信時の体感速度向上を目的とした機能を検討しているなど、ユーザの使い勝手を意識した改善を計画しているという。

また、年末に向けて各種キャンペーンなどを展開予定で、新興他社にも決して引けを取らない構えだ。

老舗ならではの手堅さや信頼性に加え、日次プランや150KBのバースト機能など、独自の特徴を持つOCN モバイル ONE。実際に使ってみるとなかなか魅力的な特徴なので、格安スマホへの加入を検討中という人は是非とも候補にいれてみてほしい。