AQUOS PHONE THE HYBRID 007SH 法林 岳之編

 昨年の「俺のケータイ of the Year」の冒頭では、『2010年のケータイ市場は、近年まれに見る動きの激しい一年だった』と書いたが、あれから一年が経ち、その書き出しは単なる序章に過ぎなかったと言えるほど、2011年のケータイ市場は激変した。それは改めて説明するまでもなく、スマートフォンへのシフトチェンジだ。

 2010年のケータイ市場はスマートフォンに注目が集まり、年末商戦に日本仕様を取り込んだモデルが登場するというフェーズだったが、まだスマートフォンはモデル数から見ても少数派でしかなかった。しかし、今年を振り返ってみると、話題にのぼる端末はすべてがスマートフォン、もしくはタブレット端末であり、各社のラインアップもほとんどがスマートフォンで構成され、フィーチャーフォンは従来環境を必要とする一部のユーザーのためのモデルという位置付けになりつつある。

 とはいうものの、現実的なところに目を向けてみると、現在、国内の携帯電話が約1億2000万契約であるのに対し、スマートフォンの出荷数は今年度中に2000万台を突破するという状況にある。実際に利用されているスマートフォンのユーザー数も2000万前後と言われており、まだまだフィーチャーフォンを使っている人が圧倒的に多い。

 そんな中、今年の端末を振り返り、個人的に印象に残ったものをピックアップしてみると、NTTドコモではNECカシオの「MEDIAS N-04C」、ソニー・エリクソンの「Xperia acro SO-02C」、サムスンの「GALAXY S II SC-02C」、シャープの「AQUOS PHONE SH-01D」、LGエレクトロニクスの「Optimus LTE L-01D」が挙げられる。GALAXY S IIは昨年のGALAXY Sに続く強さが発揮されたが、それ以上にグローバルモデルの「Xperia arc」をベースに、きっちりと日本仕様を搭載してきたXperia acroは、非常にインパクトのある存在だったと言えるだろう。年末商戦でも日本のユーザーを知り尽くしているシャープが開発したAQUOS PHONE SH-01Dが販売ランキングでトップを快走するなど、日本のユーザーにいかにフィットしたモデルを作れるかが明確に見えてきた印象だ。

 auもスマートフォンのラインアップを増やしてきたが、印象に残ったのはNECカシオの「G'zOne IS11CA」、ソニー・エリクソンの「Xperia acro IS11S」、iidaブランドの「INFOBAR A01」あたりだろうか。INFOBARがスマートフォンで復活したのはうれしいが、Xperia acroはNTTドコモと同じであり、G'zOne IS11CAは話題性やユーザーの期待が大きかったものの、今ひとつ内容が伴わなかったというのが残念だ。+WiMAX対応端末はパフォーマンスが優れているものの、電池の持ちなどを考えると、まだ発展途上中の感は否めない。auについては昨年までと変わって、ややラインアップに偏りが目立つようになってしまった印象だ。

 ソフトバンクではシャープの「AQUOS PHONE 006SH」「AQUOS PHONE 102SH」、アップルの「iPhone 4S」が挙げられるが、正直なところ、iPhoneとシャープ製端末以外ではまったくインパクトを残せていないというのが実情だ。これらの内、シャープ製端末には個性的なモデルがあるが、iPhoneはauでも扱われるようになったことを考慮すると、今後はシャープに続くメーカーをどうやってハンドリングしていくかがカギを握ることになりそうだ。

 これらの状況を鑑みて、最終的に筆者が「俺のケータイ of the Year」として、選んだのがソフトバンクのシャープ製端末「AQUOS PHONE THE HYBRID 007SH」だ。改めて説明するまでもないが、二軸回転式のフィーチャーフォンの形状を採用しながら、内部的にはAndroidスマートフォンとして仕上げられたハイブリッドなスマートフォンだ。スマートフォンと言うと、板状(スレート状)のボディばかりを思い浮かべてしまうが、本来、スマートフォンはオープンなプラットフォームを採用し、ユーザーが自由にアプリを追加したり、インターネット上のサービスと連携しやすいことなどがメリットであるはずで、形状にスマートフォンとしての決まりがあるわけではない。筆者は早くから「折りたたみのスマートフォンがあってもいい」と考えてきたが、AQUOS PHONE THE HYBRID 007SHはまさにそれをいち早く具現化してくれたエポックメイクかつ重要な一台と言えるだろう。

 iPhone上陸以降、スマートフォンとフィーチャーフォンの違いやそれぞれのメリットとデメリットについて、さまざまな議論が交わされてきたが、実際のところ、ユーザーが求めているのはプラットフォームでもなければ、タッチパネルでもバージョンでも形状でもなく、その端末でどんなことがいかに快適にできるかが重要であるはずだ。固定観念に縛られることなく、自由な発想で作られ、スマートフォンの新しい可能性を拡げた「AQUOS PHONE THE HYBRID 007SH」に、2011年の「俺のケータイ of the Year」を贈りたい。

 

2011/12/27/ 17:30