特集:5Gでつながる未来

5Gで物流業の“ファーストワンマイル”を効率化、WCPと日本通運が実証実験

 Wireless City Planning(WCP)と日本通運は、5Gを活用した「スマート物流」の実証実験を実施している。総務省の5G総合実証実験の一環として、労働力不足などの課題を抱える物流業の効率化を図る。

 荷物の輸送過程は大まかに分けると集荷・拠点間輸送・配送の3段階に分けられ、今回の取り組みでは集荷段階、ラストワンマイルならぬ“ファーストワンマイル”の業務に着目。高齢化やベテランドライバーのリタイアによる働き手不足に加えて、小ロット化による積載率の低下などの課題もあり、省力化、効率化につながる複数の試験が実施された。

積載状況をLiDARで可視化、無駄なく積み込むためのデータとして活用

 国土交通省の調査によれば、営業用トラックの積載率(積める量に対する実際の積載量の割合)は41%まで低下しているという。ドライバーや車両に限りがある中で効率良く輸送するためには積載率の向上も重要となり、共同集配を推進するほか、高性能な蓄冷材の登場によって技術的には可能となりつつある常温品と冷凍品の混載も検討されている。

LiDAR
リアルタイムに積載率が表示される
「おでかけ5G」のアンテナ部分

 今回の実験では、まずは積載率を把握するため、荷台の後部にLiDARを設置。レーザー光の反射で積載物の位置を確認でき、奥から順に積み上げられていることを前提に積載量を可視化できる。重量センサーと組み合わせて容積・重量の両方で積載状況を把握する。

 LiDARで取得したデータのリアルタイム伝送には5Gの大容量通信を活用し、MECサーバーで解析するエッジコンピューティングを実践。実験環境では、ソフトバンクの可搬型5G基地局「おでかけ5G」を利用する。

 データの活用例としては、リアルタイムに解析されたデータをドライバーや管理者向けのシステムと同期。新たに集荷が必要な荷物が発生した際、付近を走行するトラックの中から積載率に余裕のある車両を自動でマッチングして集荷ルートを再構成できる。

 自動マッチングシステムの実験では、このようなイレギュラー集荷対応にかかる事務員やドライバーの工数を75%削減できたという。いわゆるオンデマンド配車の仕組みで、今後の実用化に向けてはMONETとも連携していく。

加速度センサーで「荷物の積み込み」を自動判断

 同様に業務効率化を図る取り組みとして、「荷物の積み込み」を自動で記録する実験も実施。従来は、トラックに荷物を積み込む際、バーコードの読み取りや積み込みリストへの記入という形で記録していた。荷物に加速度センサーを取り付けることで、積み込まれたタイミングを自動で判断する。

 単純に加速度データで大きな動きを検出するだけでは、台車に荷物を載せて移動する際などトラックへの積み込み以外で誤判定されてしまう可能性があるが、周波数解析によって積載時の動きを見分ける。

 実験ではスマートフォンと5G CPE、外部バッテリーを組み合わせた大掛かりな機器構成となっているが、将来的にはラベルのように荷物に貼り付けられる低コストな専用デバイスの利用を想定する。