気になるスマホ連携機器
カシオのプロジェクター「XJ-M155」
スマートフォンからのプレゼンに対応したカシオXJ-M155 |
今までパソコンでやっていたことが、スマートフォンやタブレットでもできるようになってきた。特に、電子書籍や資料などを見るなら、パソコンよりも手軽だ。
プロジェクターを使ったプレゼンも、資料の表示の一種だ。カシオのプロジェクターでは多くの機種で、スマートフォンやタブレットに入ったプレゼン資料を映せる機能を持っている。単にリモコンになるのでなく、アニメーション効果を含むPowerPointで作ったプレゼンテーションを表示できるのが特徴だ。スマートフォンやタブレットとしては、Android(3.x含む)のほか、iPhone・iPadや、Windows Mobile 6.xに対応している。
この機能に対応したカシオXJ-M155を試す機会を得たので、使用感をレポートする。
■PCなしでスマートフォンからプロジェクターで映す
スマートフォンとプロジェクターの間は無線LANで接続するようになっている。プロジェクターが無線LANのアクセスポイントとなって、そこにスマートフォンで直接接続する形だ。スマートフォン用のプレゼンツールには、台湾AWIND社のソフト「MobiShow」を使う。
PowerPointのプレゼン資料をMobiShowのPtG形式に変換するには、同社のプロジェクターに付属の独自ソフトウェアを使う。同社のプロジェクターでは以前から、プレゼン資料の入ったUSBメモリーをプロジェクターに挿してPCレスで表示する機能に対応している。そのための変換ソフトをベースにして、PowerPointをアニメーション効果も含めてPtGに変換する機能を実現しているわけだ。
同社のプロジェクターには、大きく分けて、スリムモデル、スタンダードモデル、ハイグレードモデル、短焦点モデルがある。このうち、スリムモデル以外でUSB端子を持った現行機種が、MobiShowからのプレゼンに対応している。推定小売価格は、スタンダードモデルで12万4800円から、ハイグレードモデルが22万8000円から。
今回試用したXJ-M155はスタンダードモデルのXGA機の上位機種に当たる。明るさ3,000ルーメンで、USB端子やRJ-45イーサネット端子などを備える。推定小売価格は15万9800円。
そのほか、カシオのプロジェクターでは全機種でレーザーとLEDのハイブリッド光源を採用している。これにより光源が2万時間と長寿命で、電源をオフするときのクールダウンも不要になっている。
背面。映像や音声の端子のほか、RJ-45イーサネット端子やUSB端子なども備える | 上面。入力切り替えやメニューなどを操作するボタンが並ぶ。もちろんリモコンも付属する |
なお、同様にスマートフォンからプレゼンできるプロジェクターには、リコーのTAMAGO Presenter対応モデル(iPhone・iPad対応、PDFを表示)や、パナソニックのWireless Projector対応モデル(iPhone・iPad対応、PDFやJPEGを表示)などがあるが、それぞれ想定している利用形態が異なる。
■PowerPointを専用形式に変換する
ではさっそく、スマートフォンからプレゼンをしてみよう。
まず、スマートフォンにMobiShowをインストールする。MobiShowのアプリはAndroid Marketから無償でダウンロードできる。
プロジェクター側では、USB端子に同梱の無線LANアダプタを挿し、メニュー画面で接続方法として「MobiShow接続」を選ぶ。「MobiShow接続」には3種類あり、無線のESSIDやチャンネル、IPアドレスなどが異なる。
MobiShowをAndroidマーケットからインストールする。画面はXperia arc |
同梱の無線LANアダプタをプロジェクターのUSB端子に挿す | 接続方法として「MobiShow接続」を選ぶ |
PowerPointのプレゼン資料をMobiShowのPtG形式に変換するには、変換ソフトのEZ Converter FAをPCにインストールする。同梱のCD-ROMをPCのドライブに挿入し、インストールメニューからEZ-Converter FAのインストールを選ぶと、数手順でインストールが完了する。PCのOSは、Windows 7/Vista(32bit/64bit)と、Windows XP SP3に対応している。
EZ-Converter FAを起動すると、小さなウィンドウが表示される。このウィンドウの「PPT」と書かれた領域にPowerPointのファイルをドラッグ&ドロップすると、ダイアログが表示される。ここでファイル形式として「PTG」を選んで、変換を実行する。
変換にあたっては、画面モードが一時的に変更され、PowerPointが起動して、実際の表示画面を自動的にキャプチャーされていくので、注意が必要だ。正常に終了すると、拡張子.ptgのファイルが元ファイルと同じフォルダに作られている。このファイルを、Android端末ならUSB接続やmicroSD経由、インターネット経由などで、iPhoneやiPadならiTunes経由で、スマートフォンに送る。
CD-ROMから起動したインストールメニューから「EZ-Converter FA」をインストールする |
EZ-Converter FAを起動すると小さなウィンドウが表示される。この上にPowerPointのファイルをドラッグ&ドロップし、出力ファイルの種類を選ぶと、コンバートが実行される |
変換のときには実際にPowerPointが起動され、画面が自動的に撮影される形で進む | |
■手元でスライドを確認しながら操作できる
準備ができたら、実際にプロジェクターで映してみよう。まず、スマートフォンからプロジェクターに無線LANで接続する。プロジェクターでMobiShow接続を選んでいると、接続方法のガイドと接続先情報がプロジェクターの画面に表示されているので、それを見てスマートフォンの無線LANを設定してやればいい。
無線LANで接続したら、MobiShowを起動すると、接続先候補が表示される。ここでプロジェクター名をタップすると、MobiShowのトップ画面になる。
トップ画面でPhoto(静止画表示)かPtG(PtG形式のプレゼンファイルの表示)かを選び、表示するファイルを指定すると、プロジェクターでそのデータが投影される。スマートフォンのほうの画面には、コントロール画面が表示される。ここから、進んだり戻ったりといった操作ができる。
スマートフォンからのプレゼンでは、スライド内にアイテムが追加されるなどのアニメーション効果もほぼ再現される。また、Android版では画面の上部に各スライドのサムネールが表示される。サムネールはスワイプしてスクロールし、タップして選んだスライドに移ることもできる。
操作がボタンで選べることや、スライド表示のほうを変えずにスマートフォンだけでサムネールから選べることなど、手軽なだけでなくPCより自由度も高く操作できるのもメリットだ。
MobiShow接続を選ぶと、無線LANの接続方法のガイドと接続先情報がプロジェクターで表示される |
無線LANのアクセスポイントとしてプロジェクターを選び、パスワードを入力して接続する |
MobiShowを起動し、改めて接続先としてプロジェクターを選ぶ |
静止画とプレゼン資料のどちらを表示するか選ぶ | PtGファイルを選ぶ |
プレゼンが映る。進む・戻るなどの操作ができるほか、Android版では上部にサムネールが表示されてスライドを選べる |
静止画も同じように映し操作できる |
■プレゼンしながら歩き回れる
アップルのステーブ・ジョブズ氏に代表されるように、聴衆をひきつけるプレゼンをする人は、壇上の中央に立って聴衆と対面し、歩き回ったりボディアクションを加えたりしながら話す。こうしたスタイルには、スマートフォンから操作できる機能が有効だ。
そこまで大規模でなくても、たとえばセミナーにおいて、講師が前でしゃべるだけではなく、受講生の間を歩いて話しかけたりしながら説明すると、話が一方的にならずに済む。このような場合にもスマートフォンから操作できると便利だ。
また、PCを持ち運ばずにすませるという用途もある。飛び込み営業先などでは難しいが、たとえば同じ会社の別のところにある事務所で会議をするときなど、このプロジェクターが設置されていることがわかっていれば、PCを持ち運ばなくてもスマートフォンで資料を映して説明ができる。
ただ、操作がもっと簡単になる余地があると感じた。たとえば、スマートフォンで無線LANを設定するときに、プロジェクターが表示したQRコードを読むだけ、などのように一発で設定できるしくみがあると手軽だ。PCからスマートフォンにファイルをコピーするときにも、手助けになるツールがあってもいいだろう。
この製品は、PCのPowerPointと同等のプレゼンをスマートフォンだけでできるところがいちばんのメリットだ。対応スマートフォンも、iPhoneだけではなくAndroidでも使えるのがうれしい。これからスマートフォンがより普及していく中で、このようにPCなしでスマートフォンから使えるプロジェクターなど周辺機器が各社から発売され、競う中から使い勝手などもより向上していくことを期待したい。
2011/9/27 12:00