レビュー

サムスン「Galaxy Z Fold3 5G」グローバル版レビュー

 サムスンの折りたたみ式スマートフォン「Galaxy Z Fold3 5G」の日本発売が発表された。海外ではすでに一部の国で販売が始まっており、9月中には世界各国でリリースになる予定だ。

 今回、9月8日に香港で発売になったGalaxy Z Fold3 5Gを購入したのでレビューをお届けしよう。

外観

 「Galaxy Z Fold3 5G」は、2020年に発売された「Galaxy Z Fold2 5G」の後継機となる。

 本体を閉じたときの大きさは(縦)158.2×(横)67.1mm、厚みはヒンジ側が16mm、エッジ側(閉じたディスプレイの両端が重なる側)が14.4mmとなる。

 前モデルの「Galaxy Z Fold2 5G」は(縦)159.2×(横)68mm、厚みはヒンジ側が16.8mm、エッジ側が13.8mmだった。

 つまり「Galaxy Z Fold3 5G」は縦が1mm、横は0.9mm小さくなった。また厚みはエッジ側が0.6mm厚くなったものの、ヒンジ側は0.8mm狭くなっている。

 背面はマット仕上げで指紋の跡が残りにくい。なお購入した製品のカラーは、ファントムグリーンである。

 本体重量は271gで、「Galaxy Z Fold2 5G」の282gより、11g軽量化された。閉じた状態で外側となるカバーディスプレイは、6.4インチで大きさは変わらないものの、解像度は「Galaxy Z Fold3 5G」が832×2268、「Galaxy Z Fold2 5G」の816×2260より高解像度となった。なおアスペクト比は24.5:9となる。

 ヒンジ部分には「Samsung」のロゴが入り、Galaxyブランドを推す日本モデルが「Galaxy」ロゴを入れている点との大きな差異となっている。

 本体カラーは、日本発売予定の「ファントムグリーン」「ファントムブラック」に加え、「ファントムシルバー」の3色展開となる。

 本体背面や側面、そしてヒンジ部分がそれぞれの色でカラーリングされている。なお「Galaxy Z Fold2 5G」ではヒンジ部分を「別カラーのパーツ」に交換するサービスが一部国で提供されていたが、「Galaxy Z Fold3 5G」はIPX8の防水に対応し、ヒンジ内部にもパッキンなどが装着されたこともあってか、同サービスは提供されなくなった。

 ディスプレイを閉じるエッジ側を見ると、ディスプレイ左側にはSIMカードトレイを備える。香港発売モデルは「eSIM」非対応、ナノSIM×2枚のDSDS/DSDV仕様だ。またディスプレイ右側には音量ボタンと指紋認証センサーを兼ねた電源ボタンを搭載する。

 本体上部はコネクタ類は無く、本体下部にUSB Type-C端子を備える。

 上部・下部からみると閉じた状態でディスプレイに隙間が見えるが、この隙間の幅は「Galaxy Z Fold2 5G」より狭くなっている。断面形状は「Galaxy Z Fold2 5G」が「くさび」に近い形であったが、「Galaxy Z Fold3 5G」は「直方体」に近くなり、より持ちやすくなっている。

メインディスプレイ

 ディスプレイを開くと、7.6インチのメインディスプレイが現れる。解像度は1768×2208で変わらない。

 メインディスプレイにはカメラが内蔵されているが、ディスプレイ埋め込み型のカメラ(UDC、アンダーディスプレイカメラ)を搭載している。カメラ部分はディスプレイ密度が低いため、表示によってはやや目立つものの、パンチホールカメラなどに比べれば気にならないだろうか。なおこのカメラについては後ほど紹介する。

 開いた状態の本体サイズは(縦)158.2×(横)128.1×(厚)6.4mmで、「Galaxy Z Fold2 5G」の(縦)159.2×(横)128.2×(厚)6.9mmより小さくなった。特により薄くなったことと、軽量化されたことで、「Galaxy Z Fold3 5G」は手に持ってみると数値以上の薄さを感じられる。

 ディスプレイの曲がるヒンジ部分には、1本の「筋」が見える。光のあて具合によっては目立つものの、ブラウザや動画を表示している分にはあまり気にならないと感じた。

 メインディスプレイは、最大3つのウィンドウ分割表示が可能だ。

 画面の端には、アプリのショートカットを配置できる「エッジパネル」を側面からスワイプすることで表示できる。

 1つのアプリケーションを使用中に、エッジパネルから別のアプリのアイコンをゆっくりとディスプレイ上にドラッグすることで、ウィンドウ2つ、あるいはウィンドウ3つの表示も簡単に行える。なお、この機能は「Galaxy Z Fold2 5G」から提供されているものだ。

 「Galaxy Z Fold3 5G」では、そのエッジパネルを、ディスプレイの右端または左端に固定することができる新機能が加わった。

 Windows OSの「タスクバー」のように、良く使うアプリを常に表示することができる。固定にするとアプリケーションが利用できるエリアはエッジパネル部分以外となる。

ペン入力

 さて、「Galaxy Z Fold3 5G」最大の進化点は、折りたたみディスプレイスマートフォンとして初のスタイラスに対応したことである。

 サムスンはこれまで「Galaxy Note」シリーズを中心に、専用スタイラス「S Pen」を提供してきたが、「Galaxy Z Fold3 5G」ではそれら従来品は使用できない。ペン先の素材を変えた新しい「S Pen」が2種類発売になった。

 標準タイプとなる「S Pen Fold Edition」と、Bluetoothを内蔵しアプリコントロールにも対応しよりサイズを大きくした「S Pen Pro」の2種類だ。

 試しに、「Galaxy Note20 Ultra 5G」のS Penを、「Galaxy Z Fold3 5G」のメインディスプレイに近づけると、「Galaxy Fold用に設計されたSペンのみを使用してください」との警告が出る。誤操作対策が行われており、これまでGalaxy Noteシリーズを使っていたユーザーは、注意する必要がある。

 「Galaxy Z Fold3 5G」のメインディスプレイは、表面が薄型ガラスで覆われ、さらにその上に保護フィルムを貼った状態で出荷される。「S Pen Fold Edition」を使って文字を書いてみると、書き味は良く、Galaxy Noteシリーズを使っているような感覚で手書きが利用できる。

 またメインディスプレイのヒンジ部分も文字が曲がったり線の太さが変わることなく書くことが可能で、折りたたみディスプレイを使っていることを意識せずペンが利用できる。

 ペン入力に対応したことで、新しい使い方も可能になる。

 「Galaxy Z Fold3 5G」は「Galaxy Z Fold2 5G」同様に、ディスプレイを「L」字型に折り曲げて、机の上に置くなどして使うことも可能だ。この折り曲げたディスプレイの上半分と下半分それぞれに別のアプリを表示したり、1つのアプリを「メイン表示」「コントローラ」の用に表示できる「Flex Mode」を搭載している。

 上側にビデオ会議や動画を表示し、下側にメモアプリを起動して会議のメモや重要な内容をペンで手書きで記録する、といったことができるのだ。

 なお、ディスプレイが折りたためるという特性を生かして、カバーディスプレイに表示したアプリを本体を開いてそのままメインディスプレイに表示したり、その逆を行うこともできる。

 デフォルトではこの機能はOFFなので、両方のディスプレイで表示したいアプリがあれば設定画面から動作をONにする必要がある。

 「S Pen Fold Edition」や「S Pen Pro」が使えるのは、メインディスプレイだけで、カバーディスプレイは非対応だ。メインディスプレイで、手書き可能なアプリを使っている時に本体を閉じた場合、カバーディスプレイで引き続き手書きしたい場合は、指先を使う必要がある。

カメラ

 メインカメラは、12MP(超広角12mm)、12MP(広角26mm)、12MP(望遠52mm、デジタル10倍対応)の3眼構成で、これは「Galaxy Z Fold2 5G」と変わっておらず、最近のスマートフォンのカメラとしてはごく一般的な性能だ。

 モードは「シングルテイク」「ポートレート」「写真」「動画」「その他」の5つで、「その他」の中には「プロ(写真)」「プロ動画」「ナイト」など高度なモードがある。

 撮影時に「Flex Mode」が使えるのも、「Galaxy Z Fold3 5G」の特徴だ。L字にしてカメラを起動すると、上半分がプレビュー画面、下半分がシャッターボタンやモード切替のメニューエリアとなる。

 一方、本体を開いたメインディスプレイでカメラを切り替えるとアンダーディスプレイカメラが起動し、自撮りモードとなる。この際にアンダーディスプレイカメラ部分のディスプレイが、黒い丸表示となり、カメラの位置を教えてくれる。

 「Galaxy Z Fold3 5G」、はディスプレイサイズが広いために、自撮り時にどこを見ていいかわからなくなるため、このような機能が搭載されている。

 ここからは「Galaxy Z Fold3 5G」を使った作例をご紹介する。

カメラ倍率の差
超広角
等倍
2倍
10倍
ポートレートモードのボケ
ボケOFF
ボケON
アンダーディスプレイカメラ
アンダーディスプレイカメラで屋外撮影
アンダーディスプレイカメラ屋外で逆光気味
香港の街中撮影
最短撮影距離の約4cmまで寄って撮影
食事モードでアボカドを撮影
ナイトモード撮影(3秒)

まとめ

 「Galaxy Z Fold3 5G」は、「Snapdragon 888」を搭載したハイスペックなスマートフォンであるだけではなく、これまでの折りたたみスマートフォンの弱点だった「ディスプレイ表面の弱さ」を改良し、しかもペン入力に対応。IPX8の防水にも対応した。本体の質感も高く、折りたたみ式スマートフォンがようやく完成形になった製品と感じられる。

 海外での価格は20万円前後、日本では20万円を超える高い価格設定がされているが、その価格に見合うだけの性能と品質、そして「畳んで使えるスマートフォン」という楽しさを十二分に味わえるだろう。