レビュー

ディスプレイが伸びて縮む! ローラブルスマホ「OPPO X 2021」を触ってみた

 シンプルな板状が主流のスマートフォンに、近年、2画面や折りたたみ(フォルダブル)といった新しい機構が登場してきた。

 普段はコンパクトに持ち運び、用途に応じて広い画面でさまざまなアプリを使いこなせるようにする――そんなニーズに応える形として、さらに「ローラブル」という仕組みが登場しつつある。

 2020年11月にコンセプトモデルとして、ローラブル、つまり巻取り型のディスプレイを採用した「OPPO X 2021」が発表された。今回、国内ではわずか1台という「OPPO X 2021」に触れる機会に恵まれたので、写真と動画でご紹介しよう。

OPPO X 2021の仕組み

 OPPO X 2021は、縮んだ状態では6.7インチ(1175×2592ピクセル)、ディスプレイを広げると7.4インチ(1785×2592ピクセル)になるデバイス。スマートフォンでもあり、タブレットのようにも使えるもの。現時点で商用化の予定はなく、あくまでもコンセプトモデルだ。

 メインカメラのほかに、光で被写体との距離などを測定できるTOFカメラを2つ備えており、高品質な屋内でのARコンテンツを楽しめるなど、将来的なAR/VRの利用にも対応できるようにした。

 伸縮回数は10万回、耐えられるとのことで、1日50回の伸縮を平均的な利用とした場合であれば5.5年、利用できる見通し。ヘビーに使う場合でも2~3年使えるという。

 側面の電源ボタンは、指紋認証センサーであると同時に、ディスプレイを伸縮させるスイッチでもある。ただ1回押しただけで伸縮するわけではなく、いくつかの操作手段が用意されている。ただ、一番確実なのは、2回連続で電源ボタンをプッシュする、という操作だという。

内部構造

 伸縮時にはモーターで有機ELディスプレイが伸びたり縮んだりして、画面の広さが徐々に変化していく。その表示内容も広さにあわせて変化する。

 モータードライバーは2基、内蔵されており、一定の出力を保ちながら、均等に力を分散させてディスプレイの大きさを変えていく。耐久性もあり、たとえば広がった状態で、力を加えてもディスプレイは小さくならず、壊れることもない。落下耐久テストは本社側で実施中という。

 巻取り型、ということで、端末の左側に幅6.8mmという中心軸が組み込まれている。このサイズは、端末の薄さ、耐久性を踏まえて採用された。

 巻き取れるディスプレイを支えるボディ内は「2-in-1 プレート」と、ダイナミックフレームと呼ばれるパーツが特徴となる。

 このうち2-in-1 プレートは、櫛の歯を組み合わせるような仕組みで、背面を支えつつ、同時に伸縮の可動を実現。2つのプレートがそれぞれ櫛の歯のような形状で、コンパクトな状態ではガッチリと2つのプレートが組み合い、広がるときには、櫛の歯がスライドして離れる、といったかたちだ。

 有機ELディスプレイの表面は、薄さ0.1mmの「ワープトラックラミネート」で覆われている。内側には、エッチング加工で筋が刻まれている。ラミネートで強度を保ち、保護しつつ、筋を刻んで柔軟性を生み出した。

 「ローラブル」を実現するため、OPPOでは12件の特許を新たに取得。「OPPO X 2021」全体では122件の特許を保有することになったという。

ColorOSも進化

 ディスプレイの広さが変化する仕組みに合わせ、ユーザーインターフェイスの「ColorOS」も進化。たとえば広がった状態で設定メニューにアクセスすると、左側には通常のメニュー、右側にその下の階層の設定内容が表示される。

 アプリを2つ同時に使う分割表示も、一般的なスマートフォンでは上下での分割だが「OPPOX 2021」では左右に並べて操作できるという。

 このほか、広い画面にあわせて、高い没入感で映像コンテンツを楽しんだり、電子書籍や漫画なども楽しんだりできる。写真を撮ったあと、加工する際も広い画面であればより細かく補正することもできる、とOPPOではアピールする。

 本稿序盤で触れた通り、グローバルを含め商品化の予定はない。しかし同社では、ローラブルスマホは「無限大の可能性」があること、「最先端技術が感動をもたらす」こと、最適化したアプリによる多彩な操作性を実現することという、新たなユーザー体験を味わえると説明。同社の技術力を示し、未来を切り拓くデバイスとして位置づけている。

 今回、ごく短い時間ながら、「OPPO X 2021」に触れたところ、伸び縮みするディスプレイのあまりにスムーズな動きに見惚れてしまった。白い背景を表示しながら動くと、画面越しにフレームの動く様も透けて見えるが、実利用時には画面の背後にあるフレームの存在は気にならないように思う。

 あるときはスマホ、あるときはタブレット、と使いこなせるデバイスとしては、厚みも一般的なスマートフォンに近く、持ち運びの手間を感じさせないところがいい。

 商品化の予定はないとのことだが、ぜひ近い将来、より多くの人の手に触れられるようになって欲しい一台だ。もちろんその際には、価格や、装着できるケースがどうなるか、といった実用に向けた新たな悩みも出てくるだろうが、未来が手のひらにやってくるその興奮は、なかなか味わえない体験でもある。これからの展開に引き続き注目していきたい。