レビュー

GoogleのCEOが訪れた提灯屋さんでGoogleアシスタントの翻訳モードを試してみた

――ピチャイ氏訪問時の様子も聞く

 11月中旬、グーグル本社のCEOであるスンダー・ピチャイ氏が日本を訪れた。そのとき、ピチャイ氏が足を運んだのは、渋谷へ移転した日本法人の東京オフィス、そして東京・初台にある吉田商店だ。

吉田商店

 今回、その吉田商店を訪れて、ピチャイCEO訪問時の様子をうかがうとともに、現在開発中のGoogleアシスタントの翻訳モードを試してみた。

Google Nest Hub

創業150年の吉田商店、渋谷区から打診を受け……

 明治25年に創業した吉田商店は、渋谷区唯一の提灯屋。当初は現在の場所より幡ヶ谷寄りの場所に店を構えたが、その後、道路拡張で移転。現在の場所になって50年ほど経つ。和紙、あるいはビニールの提灯に、手書きで屋号やロゴなどを描き、オリジナルの提灯を制作するとのことで年間で3000~4000個の提灯を手がける。

店内には数多くの提灯がずらり

 そんな吉田商店へ、1カ月ほど前、渋谷区の商工課から連絡があった。聞けば「日本法人のオフィスが渋谷へ移転することもあって、グーグル幹部が区長とともに、渋谷の伝統ある店を訪れたいと考えている。協力してもらえないか」という話だった。

 これまでも渋谷区の広報に掲載するため取材協力を依頼されたり、テレビ番組の撮影で場を提供して芸能人が提灯を作ったりすることはあったが、回数自体は多くなかったそう。

 幹部訪問に備え、グーグルのための提灯の制作を進めたが、それ以外は特別な準備はしなかったという吉田商店。当日を迎えると、やってきたのはグーグルトップのスンダー・ピチャイCEOだった。

ピチャイCEOとの会話

 30分程度の滞在の中で、ピチャイCEOとは、吉田商店が創業127年になることや、1つの提灯を作るまでどれくらいかかるのかといった話をしたと吉田さん。

 ピチャイCEOは、提灯制作の作業を見たり、完成品の提灯を目にして「Beautiful」と感嘆した様子だったそう。

 このほか、スマートディスプレイ「Google Nest Hub」の今後の展開として「充電式を考えている」といったコメントもあったという。

ピチャイ氏来店時の記念写真

海外からのお客さんと翻訳モードで

 店舗自体は、初台駅から徒歩10分、高速道路のある大きな通りに面し、周囲は住宅街という環境。しかし最近では近隣にシェアハウスや民泊施設が増えたこともあって、吉田商店を訪れる訪日外国人が増えていた。

訪日外国人からオーダーを受けて作成した「照り焼きバーガー」と書かれた提灯。ちなみにピチャイ氏が来店したときに、たまたま店に来た訪日外国人の注文だという

 たまに提灯を購入していく人はいたが、基本的には、日本語と身振り手振りで応対してきた。そんな日本語だけの応対になっていたことに吉田さんは「困っていたことは確か。もっと話せればと思っていたことはある」と語る。

 吉田商店には、今回のピチャイCEO訪問にあわせ、スマートディスプレイの「Google Nest Hub」が設置。試験的にビジネス向けとして開発中の「翻訳モード」が利用できる形になった。

 ピチャイCEOの訪問から、取材日(11月27日)まで、2~3回、翻訳モードを活用したとのこと。その中には、フランス語を話す人がおり、提灯を購入していった。その過程で、「Google Nest Hub」を使い、お礼の言葉や、提灯の受け渡し日を翻訳してもらった。

 吉田さんは「早く話すとうまく翻訳してもらえない場面もあったが、あるとないとでは、心の余裕が大きく違う」と率直な感想を語る。

まず翻訳言語を選ぶ
ガイダンスに従って話し始める
翻訳内容
対面して話す

 今回、「翻訳して」と呼び掛けてから実際に使ってみたところ、「こんにちは」などの日常的な挨拶や、「これは○円です」といった会話をスムーズに翻訳され、少し無言が続くと、翻訳モードは終了するという流れを体験できた。

 ただ、翻訳されるまではちょっと間がある印象。29言語に対応しているとのことだが、店頭ではスマートディスプレイのほうがわかりやすく、より良いマイクを活用できると思える一方で、精度が高まれば、スマートフォンでも体験したくなる。

29の言語をサポート
間が空くと自動的に停止する

 グーグルでは2020年にも一般公開する予定とのことで、現在はビジネス活用に興味があるユーザーからの問い合わせフォームを用意している。同社がスポンサーを務める東京オリンピック・パラリンピックの期間を中心に、活躍する場面が増えていきそうだ。