エフセキュア、Android向けセキュリティアプリを発売
エフセキュアは、Android向けセキュリティアプリ「エフセキュア モバイル セキュリティ」を発売した。利用料は1端末あたり年額3500円で、2年利用できるライセンスでは5250円。
11日15時から、同社サイトで販売が開始されているが、紛失・盗難対策のアプリは無料で利用できる。
■製品概要
概要 |
アプリ起動直後の画面。下部のアイコンを左右にスクロールして機能を選択 |
「エフセキュア モバイル セキュリティ」は、Android端末で利用できるセキュリティアプリ。対応バージョンはAndroid 2.X。Androidマーケットでは配布されず、同社サイトや販売代理店でダウンロード販売される。量販店での販売は予定されていない。また通信事業者などにもOEM提供される。同社では、2月に同製品を発表、4月中旬にも発売する予定としていたが、東日本大震災を受けて、5月中旬に発売を延期していた。
主な機能は「ウイルスとスパイウェアからの保護」「ペアレンタルコントロール/ブラウザの保護」「盗難対策」「自動更新」となる。法人向けには、パソコンのブラウザから端末を一括管理できるポータルサービスが提供されるほか、Androidの通知機能でメッセージを送信できる「メッセージングエージェント」も用意される。
ウイルスとスパイウェア対策については、アプリのインストール時、端末起動やパソコンへ接続した際でのSDカードへのアクセス時にリアルタイムでスキャンするほか、手動でスキャンすることもできる。エフセキュアでは、常時スキャンは行わないことから、端末のパフォーマンスには影響しないとしている。マニュアルスキャンの場合は、スキャン対象外のフォルダを指定したりできる。なお、メールは、APIが公開されていないことからスキャンできない。メール添付で拡大するウイルス/スパイウェアもないとのことで、今後の状況にあわせて対応する。
中村氏 |
盗難・紛失対策としては、SMSでコマンドを送信することで、ロック、データ消去(ワイプ)、現在地確認、アラーム音の鳴動などが可能となっている。ユニークな機能として、端末盗難時に別のSIMカードが装着されれば、あらかじめ指定した先にSMSが送信される機能や、デバイスの盗難・紛失時に警告音を鳴らす機能、第三者が「モバイル セキュリティ」をアンインストールしたり終了させたりできないようにする「アンチイグジット(Anti-Exit)」機能が用意されている。この盗難・紛失対策機能は、単体の無料アプリとしても提供される。ただし、無料版ではアラーム機能や「モバイル セキュリティ」のアンインストール/終了を防止するアンチイグジット機能は利用できない。遠隔操作関連の機能では、Android 2.1以前は、APIが公開されていないため、メールやアドレス帳、写真、ブックマーク、SDカード内のデータを削除する形となるが、Android 2.2以降はAPI開示によって工場出荷状態にすることができる。
製品概要を説明した、同社テクニカルサービスマネージャの中村多希氏は、SMSでの遠隔操作は日本のユーザーには馴染みがないとして、キャリアメールで操作できるよう検討する方針を示した。
盗難・紛失対策 | ペアレンタルコントロール |
「ペアレンタルコントロール」および「ブラウザの保護」は、ブラウザ起動時に、専用アプリがアクセス先をチェックすることで、フィッシングサイトや、青少年向けではないサイトへのアクセスを防ぐ。エフセキュアが保有するURLリストおよびカテゴリーが適用され、より安心できる環境下でWebブラウジングが利用できる。仕組み上、標準ブラウザ以外での動作も検証されているが、現時点では「Galapagos Browser(ガラパゴスブラウザ)」は非対応とのこと。
このほか、ウイルス定義ファイルの自動更新機能も用意され、1日1回、サーバーにアクセスして更新するようになっている。
今年後半には、自動バックアップ用のオンラインストレージも提供される。アドレス帳やメール、写真、動画、カレンダーなどをバックアップできる予定とのこと。提供時期や価格など詳細は未定だが、年内の提供を目指す。
今後、バックアップ機能も | ブラウザ保護機能で危険なサイトへのアクセスをブロックしたところ |
設定画面 | ペアレンタルコントロールの設定 |
■法人向け機能
法人向け機能は、ペアレンタルコントロールをのぞき、ほぼ同等となるほか、法人でのAndroid端末導入・運用を支援する機能として、パソコンのブラウザから利用できる専用サイト(管理ポータル)が用意される。
同サイトから、各端末の遠隔ロック/ワイプ/リセットができるほか、「エフセキュア モバイル セキュリティ」や定義ファイルのバージョンが確認できる。今後は、遠隔でのアラーム起動なども行えるようにする。管理ポータルのローカライズは6月中に行われる予定。この機能は法人向けサービスだが、同社では今後、個人向けの提供も検討する。
パソコンから操作できる「管理ポータル」 | 導入企業の中でも、部門・部署単位で管理ポリシーを設定できる |
端末に導入しやすいよう、専用サイトからアプリダウンロードのURLやアクティベーションキーをSMSで送信できる。送信されたアクティベーションキーは、XMLファイルがSDカードに格納される。そのXMLファイルが自動検知され、スムーズにインストールが完了するという。
メッセージングエージェント |
このほか、メッセージングエージェントと呼ばれる機能では、Androidの通知機能でメッセージを一括送信できる。非常時に、会社からスタッフへ一斉に連絡する場合などでの利用が想定されている。
導入企業などが自社ブランドで提供したい場合、アプリ上のロゴマークやアプリ名称を変更することもできる。
法人向けの価格は、導入規模によって異なるが、1年間のライセンスで、1台~24台という事例であれば1台あたり3150円となり、もし10台に導入した場合は3万1500円かかることになる。
■今後の戦略
エフセキュアの桜田氏 |
同社では5月11日、製品説明および今後の戦略を紹介する記者説明会を開催した。日本法人代表の桜田仁隆氏は、今回の製品がモバイルに特化したものと位置付けるとともに、Androidはオープンなプラットフォームであることから、「攻撃者にとっても狙いやすい。携帯電話も、従来より“広い世界”に出てきて、その分楽しめるが、脅威も増える」と説明。攻撃の目的が、愉快犯よりも金銭目的が多くなってきているとして、ウイルスの数はパソコンほどではないが、かなりの勢いで増加していると指摘した同氏は、アプリ自身がウイルスというケースのほか、ブラウザを介した脅威への懸念を改めて示した。
販売戦略については、自社サイトでの販売のほか、通信事業者からの提供を挙げる。またハードウェアにプリセットされる形での提供も想定されている。これは携帯電話にかぎらず、ナビ端末やゲーム機など、さまざまな製品を想定している。このほか、120社の販売店経由での提供も行われる。その後は、携帯以外のデバイスでの組込なども拡充し、その一方で法人向けも注力する。こうした取り組みで2012年中には、Android向けセキュリティソリューション市場において、シェア上位3位を目指す。桜田氏は「コンシューマー向けのシェアは1割、法人向けは5割程度と見ている」と述べた。他社製品との差別化要因としては、電力消費量などでアドバンテージがあるとした。
同社の販売戦略 | 2012年にトップ3を目指す |
八木沼氏 |
続けて登壇したテクノロジー&サービス部技術部長の八木沼与志勝氏から、スマートフォンをとりまくリスクが紹介された。具体的なウイルスとして、Androidマーケットで配布されているゲームそっくりに改造し、Androidマーケット以外のサイトで配布されていたGEINIMI(ゲイニミ、ジェイニミとも)が紹介された。このGEINIMIは、情報処理推進機構(IPA)からも今年1月、注意を呼び掛けられているが、インストールすると、Android 2.2以前に存在する脆弱性を突いて、root権限を奪取する。このほか、八木沼氏はブラウザにも脆弱性があるとして、Webブラウジングでも注意すべきと指摘。さらに、青少年ユーザーの利用では、有害サイトへのアクセスを制限する必要があるとした。
ブラウザの脆弱性について | マルウェアのリスクは増大中だが、当面は紛失・盗難への対策も重要と指摘 |
2011/5/11 16:33