1台2000万円、人間国宝によるVERTUの新作「シグネチャー 吉祥」


写真左から、フランク・ヌォーボー氏、室瀬和美氏、ペリー・オースティング氏

 VERTUは25日、都内でVERTU「シグネチャー 吉祥」コレクション プレスカンファレンスを開催した。人間国宝である漆芸家 室瀬和美氏が、春夏秋冬をイメージしてデザインした特別限定コレクション「吉祥コレクション」4台を報道陣に公開。室瀬氏を交えたトークセッションも開催され、開発経緯などが語られたほか、制作過程などがビデオで紹介された。

人間国宝の手による蒔絵が施された高級端末

 「VERTU シグネチャー吉祥」は、作れる職人は世界に6名しかいないという同社の高級ケータイ「シグネチャー」をベースに、パネルに室瀬氏の手により、緻密な蒔絵と螺鈿を施したもの。銀座にあるVERTU直営フラッグシップストアの開店1周年を記念して制作された。

 ラインナップは、春の桜をイメージした「醍醐」、夏の光りを大胆に表現した「錦光」、秋を代表する菊をモチーフにし、長寿への願いが込められた「菊水」、縁起のよい南天の実をモチーフにした「南天」の4台。いずれも世界に1台ずつしか存在しない。


醍醐錦光
菊水南天


 構想に1年、制作に1年が費やされており、VERTUの高級感あふれるデザインと、室瀬氏の創り上げる伝統的な和の世界を融合し、見る角度によって色や光りが美しく繊細に変化する、宝石さながらの仕上がりになっている。なお、「吉祥」は「めでたい兆し」「よい前兆」を意味するという。

 VERTU プレジデントのペリー・オースティング氏は、「いかに近代技術と芸術を融合するかに挑戦してきた。技術を活用しながら、新たな美を生み出すというところが室瀬氏の世界。情熱、感情、細かいディテールにまでこだわった職人気質を表現する、それがまさに室瀬氏とVERTUが一緒になって目指したもの」と説明した。

 日本の伝統文化に対する敬意があるというオースティング氏は、「芸術や工芸、歴史、現代に対して、全てに対して敬意を持っている方、できることなら、環境、芸術、文化を大事にし、世界に対して敬意を持って接することのできる方、個人的に美を楽しまれる方に使っていただけると嬉しい」と述べた。

最新の技術と、伝統的なクラフトマンシップの融合を目指した

 室瀬氏と、VERTU プリンシパルデザイナーのフランク・ヌォーボー氏によるトークセッションで、ヌォーボー氏は「最新の技術と伝統的なクラフトマンシップというものを融合させて、その中で最も良い、最高の技術と芸術を表すような、触ったとき最も素晴らしい感触を目指した」とそのコンセプトを説明。「シグネチャーの一番最初のデザイナーとして、室瀬氏がシグネチャーを、さらにすばらしく美しい作品に作り上げてくださったことに非常に感謝をしている」とお礼を述べた。

 当初、室瀬氏は「携帯電話に形容するという話を伺ったとき、日本で携帯電話を使うイメージから、果たして蒔絵と合うのか? と疑問を持っていた」という。しかし、実際にシグネチャーのデザインを見て、「これなら蒔絵をつけて、通信手段+美の世界を表現できるのではないかと感じた」と言い、VERTUの工場に2度足を運び、現場の職人やスタッフに会い、彼らの価値観を聞いてやる決心をしたとその経緯を説明した。

 苦労した点について「立体的なところにデザインする難しさがあった。またこれはあくまでも使うための機械なので、それを壊してはいけない。デザインした人、ボディを作った人のすべてが生きる表現をしなくてはいけない点が一番苦労した」と語った。

 「かねてから、お椀など、普段自分が扱っているものとは違う、その時代の最先端の仕事、素材にも蒔絵が表現できるのだ、ということをやりたかった。作り手との価値観が合えば、また新たなコラボレーションはあり得る」と今後の制作にも意欲を見せた。

価格はサービス込みで1台2000万円

 「VERTU シグネチャー吉祥」は、26日より世界に先駆け日本で先行販売が開始される。販売価格はサービスを含め、1台2000万円。Vertu銀座フラッグシップストアや、日本橋の三越で展示・販売され、先着順で購入できる。

 購入者には「VERTU Club VIPメンバーシップ」が提供され、24時間、365日利用可能なコンシェルジュサービス「VERTUパーソナルコンシェルジュ」を始めとした、国内無制限VERTU通話・通信サービス、VERTU Fortressなどのサービスが1年間利用可能となっている。



 



(すずまり)

2010/3/25 20:36