ソフトバンク、2009年度第3四半期決算は最高益を更新


 ソフトバンクは、2009年度第3四半期連結決算を発表した。第3四半期累計(2009年4月~12月)の連結売上高は前年同期比3.2%増の2兆453億円、営業利益は33.4%増の3663億円、経常利益は61.1%増の2811億円、当期純利益は63.0%増の948億円、フリーキャッシュフローは2359億円増加の2835億円となった。

 第3四半期累計ベースで、営業利益、経常利益、最終利益ともに過去最高益を更新。営業利益については、5期連続で最高益を更新。営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローも過去最高を更新したという。

 同社の孫正義社長は、「第3四半期累計で、9つの過去最高を記録した」として、連結業績での営業利益、経常利益、EBITDAなどのほか、主要事業の営業利益として、移動体通信事業、固定事業、ヤフーなどで過去最高を達成したことを示した。また、営業利益はすべてのセグメントで増益となった。

 また、特別損失として、2G携帯電話設備として243億円、3G携帯電話設備において通信機器の一部のメーカー集約に伴う設備の除去などにより225億円を計上した。

 純有利子負債の削減については、前年同期に比べて約3700億円削減し、1兆6782億円となったことを示したほか、ソフトバンクモバイルの借入残高は9867億円になったという。これについて孫氏は、「ボーダフォンの買収で2兆円の借金をしたが、それが1兆円を切る水準となった」と語った。


連結業績概要業績3社比較売上高
EBITDAEBITDA推移営業利益
営業利益推移KDDIとの営業利益比較経常利益
当期純利益1当期純利益2営業キャッシュフロー
フリーキャッシュフロー9つ過去最高という純有利子負債
借入残高営業利益予想

 第3四半期累計における移動体通信事業の売上高は、前年同期比9.9%増の1兆2642億5400万円、営業利益は59.4%増の2151億1200万円となった。

 携帯電話契約数の順調な増加、3G携帯電話契約数の増加やデータ通信の利用の拡大などにより、データARPUが増加したことで通信料収入が増加したほか、新規契約および買い替え(機種変更)件数の増加により、携帯電話端末の出荷台数が増加したという。

 第3四半期連結累計期間の純増契約数は103万4300件。第3四半期(2009年10~12月)のARPUは前年同期比110円増の4200円。データARPUは270円増の2060円となり、初めて2000円を突破した。基本使用料+音声ARPUは、150円減の2150円。

 基本使用料+音声ARPUの減少は、「月月割」の割引の平均額が減少するなどのプラス要因があったものの、通話利用減少などのマイナス要因がそれを上回ったことによるものとした。

 純増契約数は暦年で2年連続で第1位。ARPUは初めて前年同期比を超えたという。孫氏は「ARPUは減少するというトレンドはいよいよ底打ちし、反転した」と位置づけた。

 2009年12月末の累計契約数は2166万7200件。そのうち3G携帯電話契約数は2088万5400件。累計契約数シェアは前年同四半期末から0.7ポイント上昇して19.6%となった。孫氏は「女性の契約が増加しており、さらに広がるための臨海点を迎えたのではないか」などと説明。

 解約率は1.16%となり、前年同期比0.25ポイント上昇。これは、割賦販売方式で購入した携帯電話端末の代金支払いが完了した顧客が増加し、その顧客の一部で解約が発生したことによるものだという。直前四半期からは、0.08ポイント低下しているとしている。

 また、買替率は1.53%となり、前年同期からは0.14ポイント、直前四半期から0.28ポイント低下した。主に、2G携帯電話サービスから3G携帯電話サービスへの移行が減少したことによるものとした。


設備投資フリーキャッシュフロー1兆円目標は変更なし純有利子負債の削減目標は変更なし
純増数累計契約数契約数の内訳。3月は純減と予想
通信料収入の内訳CM好感度ランキング1契約者あたりの現金収入
ARPUARPUの「増減額」を3社比較データARPU
固定事業

 さらに孫氏は、2010年3月末で、2Gのサービスを終了することで、30~40万台の解約が見込まれるとしたが、「第4四半期という意味では、マイナス分を吸収して純増を維持したい。また収益の観点では、2Gのサービスの終了によって経営の効率がよくなり、新年度においては、むしろ増益要因になる」と述べた。

決算会見の場でiPhoneを使ってUstream

 孫氏は、決算会見でiPhoneの好調ぶりに改めて触れ、「ソフトバンクがiPhoneを発売した際には、日本ではiPhoneは売れないと断言する人がいた。おサイフケータイではない、大きすぎる、電池が持たないなどといった理由から、日本のユーザーには馴染まないと言われた。それを言った人は、それが間違いであったことを認めてほしい。2009年に最も売れた携帯電話は、2位を大きく引き離して、ダントツでiPhoneとなった。iPhoneは、現在も右肩上がりで伸びており、1月も大きな伸びを見せた。伸び率は数100%となっており、世界で一番成長しているのが、日本のiPhoneである。iPhoneは時代のトレンドの中軸である」と語った。

 また、「iPhoneでのTwitter利用者は500万人を超えており、UstreamでもiPhoneを活用する人が増えている。iPhoneじゃなきゃいけないという人がこれからも増えてくる」などとし、会見の席上で、iPhoneを使って、Ustreamで配信する様子を、自らデモストレーションして見せた。

 なお、ソフトバンクは、2009年2月から2010年1月まで、iPhoneの購入にかかる実質負担額を引き下げ、またパケット定額サービスの定額料の上限を引き下げる「iPhone for everybody キャンペーン」を実施。これが、iPhoneの販売の好調を下支えしたともいえる。

 また、2009年6月に発売した通信機能付きデジタルフォトフレーム「PhotoVision SoftBank HW001」の販売も順調だったという。

 そのほか、孫氏は、「Twitterをはじめてから、多くの人から電波が届かない範囲があるという声をたくさんいただいた。この事実を正面から受け止め、最優先課題として、私が陣頭指揮を取って、改善に努めている。2010年度は、設備投資計画を積み増しし、3千数百億円程度を見込んでいる。金額的な点だけでなく、新たな手法も取り入れていくも盛り込んでいる」などとした。

 約1年を経過したS-1バトルについては、3月中旬に日本テレビ系列でゴールデンタイムに生放送を行い、この番組の放送にあわせて、Twitterでも配信も行う計画であることを示したほか、S-1バトルをきっかけとして、吉本グループの筆頭株主の位置になることなどの経営的に連携などについても触れた。

 なお、移動体通信事業以外のセグメント別の業績は、次の通り。

 ブロードバンド・インフラ事業の売上高は前年比12.9%減の1553億円、営業利益は7.7%増の394億円。固定通信事業は、売上高が前年比3.7%減の2586億円、営業利益は26.5%増の143億円。インターネット・カルチャー事業の売上高は前年比5.3%増の1998億円、営業利益は7.0%増の985億円。eコマース事業は、売上高が前年比9.4%減の1745億円、営業利益が0.3%減の37億円。その他事業の売上高は7.7%減の614億円、営業損失は13億円の赤字となった。

 同社では、2010年度の連結営業利益予想を5000億円とすることを発表した。2009年度の営業利益見通しの4200億円に比べて19%の増加となる。また、2011年度に目標としている1兆円のフリーキャッシュフロー、2014年度の実質無借金経営の目標には変更が無いとした。

 孫氏は、決算会見の冒頭、「今日の発表はうれしくて仕方がない」と発言し、「決算の内容もいいが、決算発表の内容を、Twitterでも、Ustreamでもライブ配信することがうれしい。世界でも初めてのことかもしれない」などと説明。さらに、「Web2.0時代の新聞がTwitterだとすれば、Web2.0時代の放送局がUstream。誰もがリアルタイムで、双方向で情報を発信できるようになる」として、中国のOPI(オーク・パシフィック・インタラクティブ)、世界最大のソーシャルアプリケーションプロバイダーであるRockYou、そして、Ustreamに戦略的投資を行っていることを説明した。

 そのほか、ソフトバンクが33%を出資するアリババグループホールディングや、35%を出資するOPIといった企業を通じた、中国におけるインターネットビジネスについても説明。「アジアのインターネット人口は2015年には世界の半分を占める。つまり、アジアを制するものが、世界を制する。そして、ビジョンは、モバイルを制するものはインターネットを制する。ソフトバンクグループは中国市場で6億人を突破するユーザーがいる。トヨタ、ソニー、パナソニック、資生堂が中国に6億人のユーザーを持っているだろうか。ソフトバンクは、モバイルインターネットの世界に実現に向けて、投資をし、アジアインターネットナンバーワンの企業を目指す」とした。

 なお、先頃発表されたアップルのiPadに関しては、「すばらしい商品であるということ以外は、コメントをする立場にない」としたほか、ウィルコムへの出資についても「ノーコメント」とした。フェムトセルについては、「順調に粛々と進めている」などとした。

 さらに、Androidについては、「着実に勢力を拡大していくだろう。機能も評価している」とする一方で、「携帯電話には、新しい機能はいらないというニーズもある。高機能モデルと、まったく機能がないモデルとの中間的なところにある、インテリジェントを持たない製品が、今後はガラパゴス化していくのではないか」などと語った。

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【お詫びと訂正】
 初出時、第3四半期累計における移動体通信事業の売上高、営業利益について、それぞれ前年同期比4.2%減の1兆5628億円、1.8%減の1713億円と記載しておりましたが、正しくは前年同期比9.9%増の1兆2642億5400万円、59.4%増の2151億1200万円でした。お詫びして訂正いたします。

 

(大河原 克行)

2010/2/2 19:06