「N-08Aマイセレクトモデル」の生産現場に潜入


NEC埼玉

 パネルのデザインやイルミネーションのパターンをカスタマイズできるオーダーメード端末「N-08Aマイセレクトモデル」(以下、マイセレクトモデル)。すでに商品企画担当者のインタビュー記事は掲載しているが、実際の生産現場はどうなっているのか。同端末を製造するNEC埼玉(埼玉日本電気)への潜入レポートをお届けする。

 NEC埼玉では、端末の生産工程を前工程(基板への部品実装など)と後工程(組み立て)に分けている。工程の全体像については、過去に掲載した別記事を参照していただきたい。前工程はほとんどすべての作業を機械が行う一方、後工程では人間が主役となる。今回のマイセレクトモデルでは、後工程に大きな工夫が見られる。

 マイセレクトモデルと通常モデルで異なるのは、(1)パネルデザイン、(2)イルミネーションパターン、(3)画面デザインの3つだ。このうち(3)については、前工程の段階でメモリへのデータの書き込みが行われる。その後、通常モデルと同じように前工程を通り、基板以外の外装パーツなどとともに後工程へと送られる。後工程も大半は通常モデルと同じ内容だが、後半にマイセレクトモデル向けの(1)と(2)のカスタマイズ工程が入ってくる。

N-08Aを構成するパーツパネルデザインとイルミネーションパターンが通常モデルと異なる
マイセレクトモデルの生産ライン

 NEC埼玉 第一製造部 生産課長の藤岡秀雄氏によれば、生産現場で大きな課題となったのは、ユーザーからのオーダーに対して間違いなく正確に、しかも効率的に端末を組み立てることだったという。パネルデザインは2色×3パターン、イルミネーションはアルファベット26文字とハートなどのマーク5種類の31パターンあるので、計186通りの組み合わせが想定される。これを間違わないようにする必要があった。

 まず同社では、ユーザーのオーダーをダイレクトに生産現場に伝えられるように工夫した。購入希望者はドコモオンラインショップの入力フォームで自分の気に入ったデザインを選択する。そのオーダーパターンが適切な形式に変換された後、ダイレクトに工場の生産現場に伝えられる。間に人間を介在させないことでミスを無くす作戦だ。

 次に、伝えられた情報を元に、正しくパーツを選んでいくためのシステムを新たに開発、現場に導入した。マイセレクトモデルでは、パネルとイルミネーションパターンの2つの部品がオーダーメードの対象となっている。生産現場では、すべてのオーダーがシリアル番号を記録したバーコードで管理されており、どのオーダーにどのパーツが使われるのか、棚が光ってパーツをピックアップする作業員に伝えるように工夫されている。さらに、ディスプレイ上でその時組んでいる端末のパターンが確認できるようになっている。

 こうしてピックアップされた2つのパーツが次の作業員の手によって組み付けられ、それと同時に端末の固有IDが書き込まれる。そして、パッケージングされ、これがドコモ経由でユーザーの手元に届けられる。

バーコードを読み取ると、オーダーごとに使用するパーツが分かる使用するイルミネーションパターンの棚が光る
使用するパネルの棚も同じように光るイルミネーションパターンは作業員の手で一つ一つ丁寧に装着される
その上にパネルが組み付けられるこのタイミングで端末固有IDが書き込まれる

 ちなみに、パッケージングについても箱のデザインだけではない小さな気遣いが見られる。通常モデルの場合、店頭での販売が前提となるため、店員が箱を開けることになる。そのため、電池のフタを開けた状態で端末のシリアル番号などが分かるよう、背面が上部に来るように梱包される。一方、マイセレクトモデルの場合、そのままユーザーの手元に届けられるため、箱を開けた時に喜んでもらえるように、パネル面が上部に来るように梱包される。

マイセレクトモデルは梱包の仕方も特殊この日生産されていたのは8月23日にドコモに納入される予定の端末。その数日後にはユーザーの手元に届く
NEC埼玉の藤岡秀雄氏(左)と金井秀文氏

 そんな風にオーダーメードに応える生産システムだが、同社では半年かけてこれを構築したという。携帯端末開発部主任の金井秀文氏によれば、N-08Aについては、端末の企画段階からNEC本社の商品企画担当とNEC埼玉の間で相談しながら開発が進められた。どこまでカスタマイズのオーダーに応えられるのか、その落としどころを見つける作業に時間がかかったという。

 一見すると地味なカスタマイズのようにも思えるが、その裏には大変な努力と苦労がある。運よくマイセレクトモデルを購入できたユーザーは、そんなところも周囲に自慢できるかもしれない。




(湯野 康隆)

2009/8/18 12:13