ニュース

グーグルのAIが研究のボトルネックを解消、計算・仮説・文献を支援する「Gemini for Science」

 グーグルは、開発者向け会議「Google I/O 2026」で、科学探求の規模と精度を拡大するために設計されたモデルとツールの新しいコレクション「Gemini for Science」を発表した。計算科学や仮説生成を支援する複数の実験的ツールで構成され、研究者の作業ボトルネックを解消することで、最も影響力のある問題の特定と解決への集中を後押しする。

 同社は10年以上にわたり、AIと科学分野に投資を続けてきた。過去3年間だけでも、「Science」や「Nature」といった権威ある学術誌に40件の査読付き論文を発表し、6つの科学分野にまたがる顕著な成果で4つの主要な賞を獲得している。

 Google Researchのプリンシパルプロダクトマネージャーを務めるリジー・ドーフマン(Lizzie Dorfman)氏は、「コンピューターサイエンスがこれほど急速に進歩し、その成果を世界規模の課題に迅速に応用できる時代はかつてなかった」と語る。現在を「研究の黄金時代」と位置づけ、AIの力を科学者の手に委ねることで、ブレイクスルーをさらに加速させる狙いをもつ。

3つの実験的ツール

 今回発表したコレクションには、「Gemini DeepThink」や「Gemini DeepResearch」などのモデルに加え、Google Labsで提供される3つの新たな実験的ツールが含まれる。

計算科学的発見ツール「Computational Discovery」

 「AlphaEvolve」と「ERA(Empirical Research Assistance)」を基盤とし、数千のコードバリエーションを並行してスコアリングすることで、新たなモデリングアプローチを高速でテストする。データ分析と実験の実行に必要な特殊なコンピューターコードの記述という、科学において最も時間のかかる作業の一つを加速するよう設計されている。

 実際の成果として、シングルセルRNAシーケンスデータのバッチ統合において、専門家が開発した既存の最高手法を上回る40の新しい手法を発見した。最高スコアのソリューションは既存の最良手法から全体で14%の改善を達成したという。また、米疾病予防管理センター(CDC)の感染症予測コンペティションでも、高い精度の予測結果を出した。

仮説生成ツール「Hypothesis Generation」

 科学的手法をシミュレートするエージェントシステム「Co-Scientist」を活用し、複雑な科学問題に対して斬新な仮説を反復的に生成、議論、評価する。

 Google DeepMindのユンハン・シュ(Yunhan Xu)氏は、マルチエージェントによる「アイデアトーナメント」を用いて、仮説の生成、評価、順位付けを行うと説明。スタンフォード大学など100以上の機関と協力し、肝線維症の新たな標的発見などで成果を上げている。さらに、インペリアル・カレッジ・ロンドンでの研究では、科学者が解決に10年を要した「スーパーバグが抗生物質への免疫を広げるメカニズム」に関する画期的な発見を、わずか2日間で再現することに成功した。

文献インサイトツール「Literature Insights」

 「NotebookLM」を基盤として科学文献を検索し、並列での比較分析ができるように結果を構造化する。膨大なデータから研究者が知見を統合し、研究のギャップを特定するプロセスを容易にする。研究成果をレポートやスライド資料、インフォグラフィックなどにまとめることも可能とした。

今後の展開

 エージェントプラットフォーム「Google Antigravity」をプログラム可能な研究環境へと変える「Science Skills」も発表した。ライフサイエンス向けに特化し、「UniProt」や「AlphaFold」といったデータベースと連携する30以上のモジュラースキルを提供する。