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「最高のコミュニケーションを」、ドコモ加藤社長が語ったこと
(2014/5/14 19:24)
14日、NTTドコモが2014年夏モデル発表会を開催した。4月に通話定額およびデータシェアという新料金プランを発表したことに続く今回、新機種のほか、周辺機器、新サービス、そして音声通話の新技術「VoLTE」を紹介した代表取締役社長の加藤薫氏は「最高のコミュニケーションを皆様に」と説明。スマートライフのパートナーという目標を掲げる同社では今回、周辺機器や新サービスの拡大で多様なユーザーニーズをすくいあげ、さらにコミュニケーションツールとしての魅力を訴求していく方針を示した。
今回の新機種について、加藤氏は「VoLTEへの対応」「急速充電/節電機能」「docomo selectの提供」が特徴的な取り組みと語る。それぞれの詳細は別記事を参照いただきたい。
リカちゃん電話も高音質に「VoLTE」
目玉のサービスとしてアピールされたのが、国内キャリア初の導入となる「VoLTE」(Voice over LTE)だ。これは、音声をLTEのデータ通信で伝送する、という仕組み。音声をパケット通信でやり取りするサービスは、IP電話やLINEの通話機能などが存在するが、キャリアが提供するVoLTEは一定の帯域をきちんと確保するため、混雑する繁華街などで通話するときにも音の途切れがない。また、品質も従来より向上する(※詳細記事)。
その音質をアピールするデモンストレーションの1つとして、「リカちゃん電話」で従来の通話品質と、VoLTEでの品質の違いを紹介。「もしもし、わたしリカよ。わたしの声、綺麗に聞こえるかしら」というセリフが会場に流れると、報道陣が驚きでざわめく場面も。加藤社長は「やっぱりVoLTEのリカちゃんのほうが素敵だなと思う」と笑顔で紹介した。
技術的に見ると、より幅広い音(周波数)をサポートするほか、通信用電波の利用効率がこれまでの3Gによる通信に比べて3倍、向上するとのこと。その分、通話に必要な電波を節約し、混み合う通信の緩和に繋がることが期待されているが、具体的にどの程度、データ通信品質が向上するか、「たとえば2GHz帯で5MHz幅が4つある中で、そのうち1つが音声通話から通信へまわせるということを考えている。具体的な数値はまとめていない。定性的な話と思って欲しい」(加藤氏)としている。
今後のVoLTE対応機種の販売目標に関連する質問には「具体的な数は言えない。ただ新料金プランがスタートし、それにあわせて通話品質が見直され、VoLTEが注目されれば」と語る。新料金プランについては、iPhone発売時と同じくらい肯定的な意見が寄せられたという。
2014年度中に225Mbps、夏モデルは対応せず
VoLTEや各種サービスを支える土台は、ドコモが誇るネットワーク設備がある、として今後も増強する方針が示された。
基地局については、2013年度末時点で5万5300局、このうち100Mbpsの速度に対応するものは3500局だったが、2014年度末の目標は9万5300局(100Mbps以上対応は4万局)と大幅な拡充を図る。この規模は、FOMA(3G)のネットワークに匹敵するものという。
また決算会見に続き、今回も「225Mbpsのサービスを2014年度中にスタートする」と加藤氏は案内。これは複数の周波数帯をまとめて使う技術「キャリアアグリゲーション(CA)」によって実現するもの。LTEのカテゴリー6に対応した機種で利用できるとのことだが、今回の夏モデルはチップセットの関係上、225Mbpsのサービスは非対応となっている。
au WALLETを受けて
KDDIがプリペイド型の電子マネーで、auのポイントが貯まる「au WALLET」をスタートする。これを受けて、ドコモとして金融サービスにどう取り組むのか問われると、加藤氏は「決済サービスは一定の規模になっている。全体を見るとプリペイドをどうするのか、ドコモポイントの広がりを見せてもいいのかという指摘がある。今、検討中です」とコメントした。
NTTが発表した「光通信の卸」について
13日、NTTが光回線サービスを他社に卸売りする「光コラボレーションモデル」を発表した(※関連記事)。第2四半期にNTT東西から詳細が発表され、第3四半期にスタートする。
このサービスをドコモとして活用するのか、加藤社長は「前向き、かつ、具体的に検討したい」と意欲的な姿勢を表明。モバイル通信がLTE-Advancedでさらに高速化することで、固定通信との違いは、ユーザーにとって見えづらくなる状況にあり、「全体的にICT環境を提供すれば喜んでもらえるのではないか。それがフレームワークであり、サービスについては知恵を出していきたい」と説明。
仮にNTTの光通信とのセット割を導入した場合、どの程度の効果が出るのか、と囲み取材で問われた加藤氏は、「セット割というのは?」と一瞬とぼけたものの、「(NTTの)光サービスのコラボレーションモデルを使った場合ということだろうが、これから検討していくところ。まだコンセプトが示された段階。我々が要求するものもあるだろう。いろんな業種からいろいろ要望が出るだろうが、私どもも考えますし、動向も注視する。(他社も同じモデルを利用できるという問いに)競争力とは別の話として、ユーザーからすると、ICTのブロードバンド環境はモバイルも固定も関係ない時代になってきている。多様なサービスを利用するという観点で、ポテンシャルが高いと思っている」と述べた。
フィーチャーフォン、柔軟に
今回のラインアップには、2機種のフィーチャーフォンが含まれている。ここ最近は1年に一度の投入としていたが、冬春モデルに続いて夏モデルでも用意した理由は何か。加藤氏は以下のようにコメントした。
「柔軟に対応しようと思っている。いろんな場面で要望をいただく。少なくとも1年に一度で、マイナーチェンジを含めて適宜、出していきたい。スマートフォン市場の鈍化という指摘を受けたものではなく、まだフィーチャーフォンがいいという方はおられると思う。タブレットだけではなくスマートフォンもWeb端末として使う方もいるだろう。新料金プランはそのあたり(の利用スタイル)にも工夫したつもり」
2013年度後半から調査会社がスマートフォンの鈍化を指摘していることに対しては「実際そういうところがあったと思う」としつつも新料金プランによって、ユーザーが複数のデバイスを活用しやすくなり、需要の掘り起こしに繋げたいとした。
他のプラットフォーム、案内するものはなし
AndroidとiPhoneを揃える一方、Windows PhoneやTizenについて、加藤氏は「検討は続けているが、今、申し上げることはない」とあっさりしたコメント。
ソフトバンクの孫正義社長が新機種発表会を当面見送る方針を示したことに対しては「発表会に値するものを、精進しながら提供し続けたい」と述べて、今後も継続する方針とした。
新経営体制
ドコモでは発表会前日の13日、組織変更や新たな経営体制を発表している。株主総会を経て7月から新体制に変わる。
加藤社長は「副社長人事だけではなく全体的に人事は大きく動いたと思っている。7月に大きく組織を変える。グループ会社の再編もある。トータルでお客さまのサポート、事業の推進を行っていきたい。事業は継続していくもので、技術やノウハウを継承していくために今回の形になったということ」とした。