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IIJが音声通話対応SIMカード「みおふぉん」提供の背景を解説

通話対応で1台目需要も視野、IIJならではのパケット品質管理

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は、「IIJmio 高速モバイル/Dサービス」を拡充し、音声通話に対応したSIMカード「みおふぉん」を3月13日より提供する。7日には記者向けに発表会が開催され、インターネットイニシアティブ サービス戦略部 サービス企画1課長の青山直継氏が新サービスの説明を行った。後半にはインターネットイニシアティブ ネットワークサービス部 モバイルサービス課 担当課長の佐々木太志氏が登壇し、技術的な解説も行った。サービスの詳細は別記事で掲載している。

音声通話に対応したSIMカード「みおふぉん」を搭載した「Nexus 5」

トラフィックの利用者間ギャップをクーポンで是正、トータルでも安価に

 青山氏は、昨今のMVNOによる競争が活発化していることに触れて、「価格勝負をしているわけではなく、価格と品質のバランスをいかにとっていくかを重視している」と切り出し、価格の要素は重要としつつも、安さを追求するだけのサービスにはしないという方針を示した。

インターネットイニシアティブ サービス戦略部 サービス企画1課長の青山直継氏

 新たに提供される「みおふぉん」については、既存のデータ通信サービスに追加の月額1000円で音声通話を追加したものと紹介し、「(30秒20円の)通話料をみると割高と感じるかもしれないが、基本料金を抑えているので、割安になる」と説明。パケット通信にかかる料金を大幅に抑えられていることで、トータルの安さを実現しているとした。

 キャリアが提供するサービスと比較して、パケット通信が安くなる部分については、通信容量のクーポンを要因に挙げる。

 総務省が公開したデータなどをもとに、ヘビーユーザーとなる上位の1割のユーザーが、全体の7割のトラフィックを占有している実情を示した上で、「(トラフィックを)使っている人の設備負担を、使っていない人が負担しているような形。このような利用者間の負担のギャップを是正すれば、安くできる」と解説し、使いたい人が相応のコストも負担するクーポンの仕組みで「コストを抑えて、品質を保って提供している」と説明した。

音声対応でライトユーザーの“1台目需要”にも対応

 キャリアの回線による音声通話サービスを提供する背景については、既存ユーザーを含めて、通話サービスをいつ開始するのかとの問い合わせも多く、根強いニーズがあったことを明らかにした。青山氏は、MNPの利用が一般的になり、慣れ親しんだ電話番号を使い続けいたいという意向や、必ずつながる安心感も求められているとした上で、「データ通信専用では、ITリテラシーの高いユーザーの2台目需要が中心で、30~40代のユーザーが中心だった。しかし、音声通話対応なら1台目のスマホの需要が取り込める。ライトユーザーにもユーザー層を拡大できる」とサービス提供の背景を説明。「使い勝手やプロモーションでも、だれでも使えるような環境にしていきたい」と、ライトユーザー向けの施策を拡充していく方針も明らかにしている。

 青山氏はまた、「おそらく競合になるだろう2社」として、日本通信とSo-netの対応するサービスと「みおふぉん」を比較し、IIJのサービスではデータ通信部分が大きな差別化要素になっている様子を示した。

クーポン利用時の通信規制は無し、3秒バーストで体感速度を向上

 インターネットイニシアティブ ネットワークサービス部 モバイルサービス課 担当課長の佐々木太志氏からは、MVNOの基本的な仕組みや技術的な側面から同社の強みが解説された。佐々木氏はIIJの公式Twitterアカウントの“中の人”としても活躍しており、登壇すると「さっそく(Twitter上でも)反応をいただいている。ホットな話題になっていると肌で感じている」と挨拶した。

インターネットイニシアティブ ネットワークサービス部 モバイルサービス課 担当課長の佐々木太志氏

 MVNOとキャリアとの接続の関係を、ユーザー→キャリア→MVNO→インターネットと図示した上で、MVNOが快適に利用できる要素として、特に、キャリア―MVNO間と、MVNO―インターネット間が快適に接続できていることの2つが重要とする。

 IIJはMVNOを開始して6年が経過しており、キャリアとMVNOとの間の帯域について、トラフィックの監視技術や、迅速なトラフィック増強の技術を投入している。

 MVNOとインターネットとの間の通信については、日本最大規模を誇るというITバックボーンネットワークを運用する同社の強みが活かされている部分で、アメリカやロンドン、シンガポールにも拠点を拡充することで「きれいなトポロジーで接続されている」と自信を見せる。

 こうした比較的規模の大きい取り組みのほかにも、クーポンスイッチアプリ「みおぽん」では、通常は一般ユーザーに開放されないPCRFサーバーを開放し、ユーザーが即座に通信速度を制御できる仕組みを提供。「月間7GBなどの大きな容量を提供することは難しいが、大事なときのために容量をリザーブできる」と利便性の高さをアピール。

 通信可能な容量をクーポンで提供するという仕組みについては、クーポンの利用をオンにした際は、通信速度が規制されない点にも言及。「IIJにとって、クーポンは従量制であると考えている。従量制なら規制は適用されず、通信を使う権利がある」と同社の考えを示した。

 佐々木氏はさらに、クーポンを使わない200kbpsの通信速度の環境でも、3秒間は帯域制限をしない「バースト転送」を実施していることにも触れ、「クーポンを使わなくても意外と使える」という高評価につながっているとした。

 佐々木氏はバースト転送を実施する考え方について、「低速な通信を厳密に適用しても、設備の有効利用にはならない。転送に時間がかかると占有時間が増え、速度を制限する効果は打ち消されてしまう。低速で使ってもらうこと自体は、コスト削減にはならない」と実情も語り、バースト転送で設備を有効利用し、低コスト化と体感速度の向上を両立させている様子を明らかにした。

契約者数は累計で14~15万件、本人確認は制度改正も要望

 質疑応答の時間には、「LINE電話」などと比較した際の優位点が聞かれた。青山氏は、従来の形の電話番号を利用する需要は少なくないとした上で、「品質が許容されるのであれば、IP電話でもいいだろう」と理解を示す。一方、佐々木氏は「LINE電話は緊急通報には対応しない。2台持ちのひとつに入れることはあるだろう」とし、これらのサービスは着信に関係がないといった点も差として挙げている。

 「IIJmio」サービスでの累計契約者数は14~15万件とのことで、純増数は2013年12月ごろまでは毎月1万件ぐらいのペースだったという。競合他社がさまざまなサービスを展開していることから、2013年12月以降の純増ペースは「若干鈍っている」とのこと。音声通話サービスの導入で契約者数は30%増を見込んでいる。

 音声通話に対応したことで本人確認がより厳重になり、対面販売でない同社「みおふぉん」では、SIMカードを入手するまでに7~10日と、時間がかかるようになった。佐々木氏は「携帯電話不正利用防止法に準拠する形で、非対面販売のガイドラインを順守した形。ユーザーにとって敷居が高くなっているが、制度改正や販売店との話もすすめていく」と、解決できるように取り組んでいく姿勢を示している。

 利用開始から12カ月間は「音声通話機能の解除調停金」が設定されたことについては、佐々木氏は「MNPに対応するにあたって、提供せざるをえない。キャリアのMNPのキャッシュバック施策は問題視しており、やむを得ない措置」というスタンス。その金額設定については「社内で深い議論を繰り返し、結果としてこの水準になった。ユーザーの契約・解約の自由を侵さない、妥当な水準」との見解を示している。

太田 亮三