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NTT Com、ローカル5Gエリア内外の切替をSIMカードで自動化

 NTTコミュニケーションズはローカル5G網と公衆5G網を自動で切り替えるSIMアプレット技術を開発し、実証実験により有用性の検証に成功した。

ドコモビジネスブランドで提供されている「プライベート5G」の特徴

 ローカル5Gは、自社専用の5G基地局を設置し、専用のSIMを挿した端末のみが接続できるようにした5Gネットワークのこと。基地局に不特定多数が接続せず、ネットワークも自由に構成できるので、ネットワークの速度や遅延といった性能を安定させられる。コンシューマー向けの技術ではなく、工場などの事業所で利用される、事業者向けの技術だ。

ローカル5Gはエリアを出入りする際、法制度上の制約が大きい

 ローカル5Gは法制度化されていて、運用には免許交付を必要とし、免許交付されたエリアでしか通信できない。ガイドライン上では、端末をローカル5Gエリアから持ち出す際にはローカル5G通信を停止する必要があり、エリア外でも端末を使うときは、SIMカードを手動で切り替えるなどの必要があった。

 たとえばデュアルアクティブ対応のデュアルSIM端末でも、ローカル5GのSIMがアクティブだと通信してしまうので、そこを手動でオフにするか、SIMカードの交換が必要になる。人間が使う端末なら手作業も可能だが、無人で運用するIoT機器となると難しい。

ローカル4Gエリアに入っても、つないで良いローカル5Gかを判定する必要がある

 また、あるローカル5GのSIMを挿した端末が別のローカル5Gエリアに入ったときも問題となる。端末は接続できるローカル5Gエリアかどうかを認証するためにローカル5Gの電波で通信してしまうが、この通信も免許交付されたエリア外なので違法という扱いになる。

 端末に「接続して良いローカル5Gエリア内だけ特定のSIMを有効にする」といった機能を実装することも可能だが、端末ごとに機能を実装する手間がかかるし、IoT機器などではさらに実装が困難だ。

SIMカードのアプレット機能を利用しやすくしている

 そこでNTTコミュニケーションズでは、独自技術の「アプレット領域分割技術」を活用し、通信の切り替え機能をSIM上に実装している。

 SIMカードにはもともとCPUが搭載されていて、簡単なアプリ(アプレット)を動かすことができる。通常、アプレット機能もSIM提供者(キャリア)が鍵を管理しているので、あまり利用されていないが、NTTコミュニケーションズのアプレット領域分割技術は、ネットワーク接続に必要な通信プロファイル領域とアプレットを動作させるアプレット領域を分離し、別の鍵とすることで、アプレット機能を利用しやすくしている。

 このSIMカード上の通信プロファイル領域にはローカル5Gのためのプロファイルと公衆ネットワーク用のプロファイルの両方を書き込み、アプレット領域にはエリア判定機能とプロファイル切替機能を実装している。

技術概要

 この自動切り替え機能は、NTTコミュニケーションズはすでに「Active Multi-access SIM」として実用化済みで、今回の技術はそれをローカル5Gに応用した形となる。

実施された実証実験の概要

 NTTコミュニケーションズではこのSIMカードの実証実験を、NTT東日本の検証環境、NTT中央研修センタ内の屋外環境で実施している。敷地内のローカル5Gエリア内外を行き来して、ローカル5Gと公衆ネットワークが自動で切り替わることを確認しているという。

今後の展開

 NTTコミュニケーションズはこの技術について、評価検証などを通して実用化を検討していく。商用化の方向性としては、NTTコミュニケーションズ自身が提供するローカル5Gサービスのオプションとして採用するパターンとNTTコミュニケーションズがほかのローカル5G事業者にSIMを提供するパターンが想定されている。