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オートフォーカス眼鏡「ViXion01S」のクラウドファンディングがスタート、今度は眼鏡型で乱視やスマホアプリに対応

 ViXionは26日、自動でピントを合わせるアイウェア「ViXion01S」を発表した。また、クラウドファンディングでの支援受付を開始した。価格は超早割価格で5万9800円。

 2023年に発表された「ViXion01」の次世代機種として、デザインの刷新や約40%の軽量化、スマートフォンアプリとの連携など、性能、機能改善が図られながらも、先代機種よりも安価な価格設定となっている。

機能強化された「ViXion01S」

 「ViXion01S」は、ユーザーの視力にあわせて、自動でピントを調整する“オートフォーカスアイウェア”。装着してユーザーがスイッチでピントを一度あわせてしまえば、以後距離に合わせて自動でレンズが調整される。たとえば、近くの物を見ているときに、遠くの風景や看板を見ようとすると、センサーで測定した距離にあわせてレンズが調整され、瞬時にオートフォーカスされる。

人間の目と同様の仕組みで、焦点をあわせる

 先代モデル「ViXion01」と比較すると、先述の通りより市中の眼鏡に近いデザインとなり普段使いしやすくなったほか、約40%の軽量化、距離センサーの性能が向上されている。また、操作時にブザー音が鳴りフィードバックされたり、スマートフォンアプリが新たに開発されたりしている。本体には、加速度センサーやジャイロセンサーが新たに搭載され、今後スマートフォンアプリとの連携した機能などが検討されている。

「ViXion01S」(左)と「ViXion01」(右)

 また、アウターレンズフレームが付属し、偏光レンズなどでサングラスとしての機能を持たせたり、対応する眼鏡店などで好みのレンズを入れたりできる。これまでは、乱視があるユーザーではオートフォーカスの機能が体験しずらかったが、乱視用レンズを入れることで、これらのユーザーにも利用しやすくなる。

先代よりもスリムな印象のデザイン
アウターレンズフレームは脱着式
レンズ部分は可動式、ユーザーの瞳の正面に来るよう調整する
ピントは、本体のスイッチで合わせる。左右それぞれにスイッチが用意されており、まず右側のスイッチで左目と右目のピントを合わせる。もし、左目のピントが合わないようであれば、左側のスイッチで調整する。左目と右目の視力が同じユーザーが多いため、このような操作感になったとのこと

 なお、レンズ経については、従来と同様の約6mm経のものが搭載されている。レンズ経の拡大については「非常に重要なポイント」とし、拡大すべく開発を進めているものの、実現には1年半程度の期間を見込んでいる。レンズを大きくすると、安定性が低下し、ユーザーが酔ったような感覚になってしまうため、柔軟性やユーザー体験などを総合的に考慮しバランスの取れたレンズ開発が進められている。

目に関わる社会問題

ViXion 代表取締役社長の南部誠一郎氏

 ViXion 代表取締役社長の南部誠一郎氏は、同社の目指す未来として「テクノロジーで人生の選択肢を拡げる」を掲げる。社会問題の解決手段として医療は貢献してきたが、医療だけで解決できない部分をテクノロジーで解決していきたい思いがあると語る。

 “目の視力”に関する社会問題として、南部氏は「超近視時代」が到来すると指摘。南部氏によると、2050年に地球の人口が100億人といわれているなか、その50億人が近視になり、そのなかでも10億人弱が“強近視”になるとされている。強近視は、遠くのものが見づらいだけでなく失明となる病気を抱えるリスクが増加するデータもあるといい、今後予想されている高齢化やライフスタイルの変化で、この予想よりもさらに増加する可能性がある。

 また、“子供の近視”も問題に挙げられている。日本では、若年層の近視が増加してきており、小学生のうち3人に1人が裸眼視力1.0未満で、タブレットによる学習機会の増加やリモート授業など、若年層の視力低下が進む傾向にある。

 南部氏は「世界の中でも日本人やアジア人は遺伝的な要因で目が悪くなりやすい」とし、視力障害で年間約4000億ドルを超える経済損失がもたらされていると説明する。

オートフォーカスアイウェア開発までの経緯

 ViXionは、光学機器メーカーのHOYAから独立して設立された。HOYA時代から“目の問題”を解決すべく取り組んでおり、最初は指定難病になっている「網膜色素変性病」などに起因する夜盲症や視野狭窄の症状があるユーザーに向けて暗所視支援眼鏡「MW10 HiKARI」を開発した。南部氏は「暗いところが見えにくいだけでなく、徐々に視力が失われやがて失明してしまう可能性がある病で、遺伝性の疾病で直せる手段がない」と説明し、支援眼鏡では、暗所で明るく、より広い視野を提供するデバイスで「月明かり程度の世界を昼間のように明るくできる」とコメントする。

 開発を主導する取締役CINOの内海俊晴氏は、MW10 HiKARIの開発当初は光学設計の立場にいたとし「電子の眼鏡で困ったユーザーを助けられるのではないか」と考え、電子回路に携わるスタッフを巻き込んで新しい電子眼鏡を開発したと説明。その後、全国の100人近い障害を抱えるユーザーからヒアリングしていくなか、強近視で困っているユーザーを見かけたという。

取締役CINOの内海俊晴氏

 「全国の盲学校や視覚障害者の団体に赴くと、強度の弱視のユーザーが、単眼強を使いながら勉強している姿を見て、視力に困っているユーザーが非常に多いことがわかった」(内海氏)と、視力に関するデバイスの構想が描かれた。

 「ViXion01」の仕様策定の際も内海氏はこの経緯から「強度の弱視でも利用できるよう、焦点距離の範囲を広くする」ことを“外せない仕様”として定めたと語る。

デザイン刷新の裏側

「ViXion01S」(左)と「ViXion01」(右)

 先述の通り、「ViXion01」から「ViXion01S」では、デザインが大きく変更された。南部氏は「個人的には気に入っていたデザインだったが、“よほどのデザイン”と思われる方が多く、お叱りに近い声もあった」とし、自身も「ViXion01」のクラウドファンディングで集まった4億2500万円は予想を上回るものだったとコメントする。

 当初は、どのようなユーザーに受けられるかがよくわかっておらず、製品自体も未完成の状態でクラウドファンディングを始めたため、“クラウドファンディングの大成功”は喜ばしいことでもある一方、焦りもあったと南部氏は話す。一方で、「デザイン的にハードルを設けることで、『次回はこういう風にして欲しい』とフィードバックをもらえた」と指摘。フィードバックの最たるものが「人前でかけられるデザインにして欲しい、眼鏡型にしてほしい」という声だったと良い、今回の「ViXion01S」では、ユーザーの声に寄り添う形でデザインが刷新された。

クラウドファンディングは11月21日まで

 クラウドファンディングは、「Kibidango」と「GREEN FUNDING」で実施されている。期間は11月21日まで。

 価格は、先着200台限定の超早期割引価格が5万9800円、200台限定の早期割引価格が6万2800円、特別価格が6万4800円、2台セット割引価格が11万9600円、3台セット割引価格が17万9400円。

取締役CINOの内海俊晴氏と代表取締役社長の南部誠一郎氏