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Amazon「Audible」ビジネス戦略を聞く、継続的な成長は生活スタイルの変化だけでなく聴き放題制導入も

Audibleカントリーマネージャーの逢阪 志麻氏とAudibleコンテンツシニアディレクターの宮川ともみ氏

 Amazonのオーディオ配信サービス「Audible」は、世界180カ国で数100万人に47の言語で楽しまれているという。総聴取時間は、2022年で40億時間で、前年同期比13%増加しており、生活スタイルの変化も相まって、順調に成長している。しかし、成長のカギは、生活スタイルの変化だけでなくAudibleの戦略にもあった。

 今回は、Audibleの担当者から、Audibleのビジネス戦略などを聞いた。

聴き放題制以降で利用が急拡大

Audibleカントリーマネージャーの逢阪 志麻氏

 Audibleカントリーマネージャーの逢阪 志麻氏は、Audibleの料金体系について説明。Audibleでは、2022年1月に会員体系が変更され、月額1500円の聴き放題制に移行した。これまでは、月額1500円で毎月1コイン付与され、そのコインで作品を購入する形だったが、1月以降は月額1500円でほとんどのタイトルがいつでも聞けるようになった。

 さらに、ストリーミング再生以外にも、オフライン再生や再生速度の変更、クリッピングなどもできるようになり、ユーザー満足度向上に繋げる取り組みを実施。

 加えて、メディアへの露出機会増加や村上春樹作品の導入、Audibleが初出となる作品が発行されるなど出版社とのコラボレーション、声優や俳優による朗読などで強化してきたという。

 これらの取り組みにより、全体の聴取時間の増加だけでなく、1人あたりが1カ月の間に新しく触れるタイトル数も、これまでの1冊から4冊」に増加した。

 コイン制では、ビジネス書や自己啓発などが中心だったが、聴き放題移行後は、文学やノンフィクション作品が中心となった。これまではビジネスマンを中心だったユーザー層が、聴き放題制により、女性や子育て中の夫婦、学生、シニア層などユーザー層が広がったという。

 これらを踏まえ、戦略的にコンテンツを拡大し、ベストセラー作品の獲得やオリジナルコンテンツの拡充、出版社やクリエイターとのコラボレーションを実施していく。

 これらの取り組みについて、逢阪氏は成長のサイクルとなっていることを説明。「コンテンツの拡充」から「ユーザー満足度向上」、「利用時間の増加」という成長のサイクルを今後も継続することで、Audible全体の成長へと繋げていく構えを見せた。

 日本での会員数について氏は、実数を明らかにしなかったものの聴き放題制への移行で67%の成長ができたと説明。オーディオエンターテイメント全体の人気が上がってきているとし、コンテンツやマーケティングへの投資を今後も続けていく方針を示した。

さまざまな企業とのコラボレーション

 成長サイクルの肝となるコンテンツ拡充について、Audibleコンテンツシニアディレクターの宮川ともみ氏は、村上春樹など著名な作家の作品や、芸能人やアスリートなどが出演するポッドキャストなどの番組を紹介した。

 宮川氏は、日本の作家が執筆した作品を日本展開することについても、意欲を示し、今回のコンテンツラインアップでは米国作品の翻訳だが、日本のクリエイター作品を海外展開することもやっていきたいと説明。

 また、「日本の作家は海外でも人気があるので、クリエイターのオーディオファーストの作品を楽しみに待っている。人気がある企画だと捉えている」とコメントした。

 ラジオ局とコラボレーションしたコンテンツについて、宮川氏は「ラジオでは尺が決まっていたりする場合が多いが、Audibleではフルで配信することができる。ラジオで聴けなかったところがポッドキャストで配信されるなど、自由な空間でまだまだ楽しいところが出てきている」との考えを示した。